小学校の「お楽しみ会」を充実させる指導アイデア集
小学生が大好きなお楽しみ会。そこでの学びを充実させるためには、事前の「自治的な計画」、当日の「楽しい演出」、事後の「主体的・対話的な振り返り」が必要です。演出術を中心とした各ステップの指導について、おなじみ鈴木優太先生が提案します。
執筆/宮城県公立小学校教諭・鈴木優太
すずき・ゆうた●1985年宮城県生まれ。縁太(えんた)会を主宰する。WEBマガジン『リフレクションLab』を配信スタート! https://www.reflectionlabjapan.com/
目次
(1)子どもたちが願いを形にする「計画術」
私の学級では、お楽しみ会を次のような手順で計画していきます。
①「自治範囲外」のルールを先出しする
②「最終日以外の3校時or5校時」に行う
③「何をやるか」すぐに決めて、「どのようにやるか」を時間をかけて話し合う
④「プロジェクトリーダー」と教師が一緒につくった「原案」を基に話し合う
⑤「何を・いつまでに・誰が」を役割分担する
まず、決まっていること(自治範囲外)と子どもたちが決めてよいこと(自治範囲)のバランスを調整し、お楽しみ会の2~4週間前には子どもたちに示します。年間計画やアンケートを基に、何をやるかはさらりと決めてしまいます。
「何を」(What)は「折り合い」をつけることが難しい議題です。「ドッジボール」と「出し物大会」では「対立」してしまい、「勝った」「負けた」という残念な話し合いに陥りがちだからです。
「どのように」(How)は「折り合い」をつけるための議題です。「協働」し「納得」するという学級会の本質に結びつきます。
例えば、こんな議題です。
『出し物大会をどのように盛り上げるかを決める』
本特集のテーマそのままです(笑)。そうです、教師だけが頑張るのではなく、子どもたちが意見を出し合い、自身の手で実現していけることこそが、お楽しみ会の醍醐味です。これまで担任した子どもたちが話し合って決めた「どのように」(How)を紹介します。
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(2)華やかに盛り上げる「演出術」
1 オルガンスピーカー
「音声プラグ」で音楽再生機器(CDデッキ・タブレット・スマホ・PC ・マイク…)を接続するとオルガンが「巨大スピーカー」になります(入力端子のないモデルは対応しません)。BGMやカラオケを良質な大音量で楽しむことができます。大型テレビとの接続も可能です。
2 デジタル版プログラム
「デジタル版プログラム」をプレゼンソフト(PowerPoint、Keynote、ロイロノートなど) で作成し、大型テレビやプロジェクタに映し出します。「アニメーション」なども設定できて華やかです。黒板や模造紙に手書きする「アナログ版プログラム」との併用もgood。
3 ハリボテマイク
「ハリボテマイク」(故障した物や100円ショップで購入した物)を持って司会をします。 季節ならではのサンタの帽子などの簡単なコスプレも非日常感を盛り上げます。
4 スーパーいいね
「いいね」と「スーパーいいね」のどちらかの札を、審査員役(5人)が上げるようにします。出し物大会のドキドキワクワク感が増すこと請け合いです。審査員役はローテーションして、一人1回以上やるようにします。音楽室から「小太鼓」を借りて、ドラムロールも入れるとさらに本格的になります。
5 こうかんビンゴ
事前にアタリを決めておき、例えば、「七の段の答えの数の玉」が出ると、「こうかーん!」と唱和して、近くの人とビンゴカードを「強制交換」(笑)します。交換した友達のおかげでビンゴになったり、リーチだった自分のカードでビンゴになる友達が出たりして、ドラマチックなビンゴになります。
6 学級通貨で会社バザー
「振り返りお給料日」で会社(係)活動の停滞期を打破できます。お給料は2種類です。「言葉のお給料」はあげ放題です。赤い付箋に「ほめほめ」、青い付箋に「前向きなアドバイス」を事前に書いて連絡帳などに貼っておき、お給料日に各会社のお給料シートに貼ります。
「学級通貨」は、自分が所属している以外の会社のお給料袋に、各自がこれまでの取組を評価しつつ、指定枚数を配分します。使い道は教師からは特に指定しません。お金の形をしているため、「使ってみたい!」という声が必ず上がるから不思議です。その結果、学級通貨を使った活動を始める会社が誕生します。
「学級通貨を使ったお楽しみ会をやりたい!」と発展して取り組んだのが、「会社バザー」です。会社で作った物や出し物などを「学級通貨」を介してやりとりします。新学習指導要領の学級活動の内容(3)「一人一人のキャリア形成と自己実現」に合致する活動です。
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7 季節はずれのブルーシートおばけ屋敷
「季節はずれのおばけ屋敷」を安全&エコに行う技です。PE平テープを上窓の柱と反対側の柱に結びつけてピンと張ります。この上に、ブルーシートをかけると迷路のようなコースがつくれます(前日までにPE平テープを張っておくと、当日はブルーシートをかけるだけです)。黒いゴミ袋で窓をふさぐと、暗闇の世界になります。全て再利用できるのでゴミも出ません。
8 けいどろアルティメット
【アイテム】
- 「けい棒」…鉄棒補助パッド
- 「けいボール」…ソフトバレーボール
- 「けいビー」…ドッヂビー(柔らかいフリスビー)
- 「けいビブス」…タッチされるとビブスを重ね着し、その回はけいチームに入ります
【遊び方】
- けいチームは捕まえる際、タッチ以外に、上のアイテムを一人一つ使えます
- 捕まったら、3か所ある「ろうやゾーン」で待機します。仲間のタッチで復活します
- どろチームは、校庭にちりばめられた三つの『お宝』カラーコーンを持って、「ろうやゾーン」まで行くと、『英雄』になれます
- 終了時に「ろうやゾーン」にいた人数が最も少なかったチームに拍手を贈ります
9 フュージョンドッジボール
「オモシロドッジボール」のルールとルールを掛け合わせたオリジナルルールの「フュージョン(融合)ドッジボール」をつくります。
例『ピザドッジ×アイドルドッジ』『相棒ドッジ×復活ドッジ×利き手ドッジ』など(下表参照)。
10 超かんたんスライドムービー
「スライドショー」ボタンを押すと、フォルダ内の写真が自動的に「スライドムービー」になる便利な機能がPCやタブレット、デジカメにはあります。大型テレビやプロジェクタで投影し、素敵な「音楽」と組み合わせて上映します。
再生速度を一枚3秒にすると、100枚で5分です。4月からのダイジェストムービーも各月10枚ずつ写真を選ぶだけ。難しい動画編集作業は皆無です。
お楽しみ会中に撮影していた写真を、会のラスト5分間を使ってみんなで観ることも簡単にできます(結婚式のエンドロールみたいなイメージです♪)。振り返りが促され、忘れられないお楽しみ会になること間違いなしです。
(3)本音が表現できる「振り返り術」
・「挙手メーター」で見える化する
・「かしこまらない紙」に描いて貼り出す
・「円座」で聴き合う
・「動画」を観る
・「次」をすぐに企画する
「全員、片手を前に伸ばします。〇はそのまま水平です。◎は上に上げ、▲は下げます」。手の上がり具合で目標の達成具合を振り返るのが「挙手メーター」です。プロジェクトリーダーや教師が問いかけ、全員一斉に振り返りを見合うことができます。わずか数秒間でできるのです。
また、心が動く豊かな体験をした直後(次の時間や帰る前)に「書く」ことで、振り返りの感度が磨かれます。あえて「かしこまらない紙」(白い紙やプリントの裏紙など)に書くのもお薦めです。作文用紙や振り返りシートには出てこないかしこまらない言葉や絵に、いきいきとした実感が滲み出ます。
「今日のお楽しみ会の満足度をハートの大きさで表現します。良かったこと、次回に生かしたいことも言葉や絵で描きましょう。5分間です」「個人フォルダ」(下画像参照)に自分で入れて掲示します。授業時間以外にも見合うことができ、対話や交流が自然発生します。
次にみんなで「輪」になって振り返りを聴き合います。全員が中心から等しい距離の「円座」は、「全員が対等な立場にあること」を象徴したものです。そのほか、写真や動画をみんなでただ観ることも振り返りになります。
では、「振り返り」をするのは何のためでしょうか?「次」を「よりよく」するためです。計画→本番→振り返り→計画→本番…と振り返り、前回よりも今回、今回よりも次回と「振り返り」を生かす「次」があることが大切です。早速、冬休み明けの「新しい1年がんばろう会」に向けて企画を開始しましょう。
ということで、お楽しみ会は「最終日以外」に設定するのです。トラブルも「次」の成長のチャンスだと、落ち着いて見守れるようになります。
・「何を」(What)「どのように」(How)を明確にして、計画の話合いを進める。
・デジタル機器や小道具を駆使して、お楽しみ会を盛り上げる演出を工夫する。
・振り返りをしっかりと行うために、最終日以外に実施するのがよい。
イラスト/バーヴ岩下
『教育技術 小一小二』2019年12月号より