「気持ちを分かってあげるスキル」をロールプレイで練習【ソーシャルスキル早わかり7】
対人関係をスムーズにするための知識と具体的な技術=「人づきあいのコツ」を学ぶソーシャルスキル学習について解説するシリーズの第7回。今回は、相手の「気持ちをわかってあげる」スキルについての学びです。
執筆/荒木秀一
目次
ソーシャルスキル学習とは?
ソーシャルスキルとは、対人関係をスムーズにするための知識と具体的な技術=「人づきあいのコツ」です。
かつては家庭や地域社会での集団の遊びなどの中で自然と身についたソーシャルスキルですが、現代では少子化や地域の教育力の低下といったさまざまな要因によって身につけることが難しくなりました。そこで近年では、集団生活を基本とする学校での学級単位のソーシャルスキル教育の重要性が強調されています。
ソーシャルスキル学習は、「インストラクション」「モデリング」「リハーサル」「フィードバック」「定着化」の5段階で展開されます。詳しくは下記のリンクからご確認ください。
ソーシャルスキル早わかり(1)基礎知識その1
ソーシャルスキル早わかり(2)基礎知識その2
気持ちを分かってあげるスキル
相手の気持ちを知って、相手の立場になり、気持ちを分かち合うことは、健全な人間関係を築くうえでとても重要です。あたたかい言葉かけと同じように、友達の気持ちを想像して適切なアプローチができれば人間関係はうまくいき、結果として自信が生まれて自己効力感も高まるはずです。
授業の基本的な進め方
- 子どもの作文を紹介し、「気持ちをわかってあげるスキル」に対して意欲づける
- 問題場面をロールプレイで提示し、モデリングと話し合いでポイントを整理する
- 表情を読み取る練習とロールプレイ▶個人、グループ、全体で
- 学習のふり返り▶ふり返りカードを書く
授業の実際
①つかむ インストラクション
とても悲しかったりうれしかったりしたとき(かわいがっていた犬が死んでとても悲しかったとき、友達とケンカして落ちこんでいたとき、初めて25 メートル泳げてとてもうれしかったときなど)に、友達が話を聞いてくれたり、一緒に喜んだり悲しんでくれたという作文や日記を読みあげて、意欲づけをはかります。教師の体験談でもいいでしょう。
授業の約束を確認します。
②気づく モデリング
ロールプレイの二つの劇を見て、自分の意見を発表させます。どのスキル学習でもそうですが、最初の「サッカーで初めてシュートが入って喜んでいる友達に冷たい態度をとる」場面では、どんどん意見を言わせても時間的には短くすませます。
「サッカーで初めてシュートを決めて喜んでいる友達といっしょに喜んであげている」場面を、最初の場面と比較し、具体的に説明しながらポイントを整理するとよいでしょう。
【ロールプレイ】
「(私も)+感情語」 は「きみがうれしそうで、ぼくもうれしいよ」「やったね。ぼくも最高だよ」など、共感する言葉を自分なりに考えて使えるようにします。
スキルのポイント
○相手をよく見る
○相手の話を聞いてみる
○「(私も)+感情語」で言葉かけをする
③やってみる リハーサル
●表情を読み取る練習
・落ちこんでいるのかな
・ニコニコしてうれしそう
・怒っているのかな
教師は少し大げさな表情をつくり、子どもたちが読み取りやすくしましょう。顔を隠し、見えないようにして表情をつくると効果的です。いろいろな表情の顔のイラストや写真を用意してもいいでしょう。
●気持ちをわかってあげる練習
①学習班(4〜6人)になる。
② a・サッカーの試合で勝ってうれしい場面
b・買ったばかりの筆箱が壊れてしまって悲しい場面
一人が声をかけられる人、もう一人は共感する人という場面で、グループ内でくり返し相手をかえて練習する。
③ほかの人は共感している人のどこがよかったかをポイントをもとに伝える。
教師は子どもを個別にくり返しほめて、スキルを強化します。
④ふり返る フィードバック
ふり返りカードの気持ちをわかってあげるスキルのポイントに◎○△の記号を記入し、授業の感想も記述します。気持ちを分かち合うことの大切さについて書いている子どもに、それを発表させましょう。
⑤生かす 定着化
朝の会などにコーナーを設けて「気持ちをわかってあげる」ショートスキル学習を取り入れると、より効果が上がるでしょう。日常生活で気持ちをわかってあげているシーンが見られたら、帰りの会などの先生の話で紹介するのもいいでしょう。
イラスト/宮地明子
「COMPACT64 ソーシャルスキル 早わかり」より