上手な聞き方・質問のスキルが身につくトレーニングとは【ソーシャルスキル早わかり4】

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ソーシャルスキルとは、対人関係をスムーズにするための知識と具体的な技術=「人づきあいのコツ」です。ここでは、人間関係を築くうえでのスタート地点ともいえる「上手な聞き方」と「上手な質問のしかた」のスキルが身につくようなソーシャルスキル学習の授業について解説します。

執筆/荒木秀一

グループになり、二人一組で質問と答える人をやり、他の人は見ている

ソーシャルスキルとは?

ソーシャルスキルとは、対人関係をスムーズにするための知識と具体的な技術=「人づきあいのコツ」です。
かつては家庭や地域社会での集団の遊びなどの中で自然と身についたソーシャルスキルですが、現代では少子化や地域の教育力の低下といったさまざまな要因によって身につけることが難しくなりました。そこで近年では、集団生活を基本とする学校での学級単位のソーシャルスキル教育の重要性が強調されています。
ソーシャルスキル学習は、「インストラクション」「モデリング」「リハーサル」「フィードバック」「定着化」の5段階で展開されます。詳しくは下記のリンクからご確認ください。
ソーシャルスキル早わかり(1)基礎知識その1
ソーシャルスキル早わかり(2)基礎知識その2

上手な聞き方のスキル

上手な聞き方は、よい対人関係を保つための重要な基本スキルです。子どもたちにとって、聞くという行為は自分が活動することに役立つだけでなく、話を相手にしっかり聞いてもらえたという満足感や好印象を与えます。つまり、人間関係を築くうえでのスタート地点ともいえます。

授業の基本的な進め方

  1. 友達に聞いてもらってうれしかったことを作文に書いたり、アンケートで上手な聞き方について調べたりする。低学年には紙芝居を見せる。
  2. 問題場面をロールプレイで提示し、モデリングと話合いでポイントを整理する。
  3. 上手な聞き方の練習▶サイコロトーキング
  4. 学習のふり返り▶ふり返りカードを書く

授業の実際

①つかむ インストラクション

友達に話を聞いてもらってうれしかったことが書かれている作文を紹介したり、「上手な話の聞き方」に関するアンケートの結果をグラフ化して提示するなどして学習の目的を知らせます。

低学年では、みんなで遊ぶ日の説明をしっかり聞いていなかったため困っている場面などを紙芝居で見せると、より効果的です。

授業の約束を確認します。

■アンケートの内容例

アンケートの内容例

②気づく モデリング

折り紙を折っている友達に話しかけている場面の、悪い例(話しかけられても知らん顔をして折り紙を折っている)と、よい例(折るのをやめて話しかけた人の方を向いて話を聞く)をロールプレイで提示します。

ロールプレイは、教師と子ども、教師同士、子ども同士など、実態に応じて演じさせます。

【ロールプレイ】

話しかけられているのに顔を見ずに折り紙を折っている子
話しかけられたので折り紙を折るのをやめて話しかけた人の方を向いて話を聞く子

よい例のロールプレイから、子どもたちに意見を自由に発表させて、黒板にポイントを掲示します。すべての意見を肯定的に認めることが大切です。高学年は、うなずきながら「なるほど」「いいね」などのあいづちをポイントに加えます。

スキルのポイント

〇やっていることをやめる
〇体を相手に向ける
〇相手の目を見る
〇うなずきながら聞く


③やってみる リハーサル(さいころトーキング)

サイコロの目と話の内容の板書

●サイコロの目と話の内容

1 きのう見たテレビのこと
2 今、一番ほしいもの
3 一番こわいもの
4 好きな食べ物
5 好きな遊びやスポーツ
6 一番楽しかったこと

①二人組になる。
②ジャンケンをして、勝った人が話す人、負けた人が聞く人になる。
③話す人はサイコロを振り、出た目の話をする。話しにくければ目を選んでもよい。
④聞く人は上手な聞き方のポイントを使って聞く。
※低学年の場合は、一人ずつ前に出て先生が聞く人になる。

先生や授業協力者がくり返しほめることで、スキル強化につながります。


④ふり返る フィードバック

スキルのポイントを書いたふり返りカードに、感想も含めて書きます。その後、各グループのよかったところを発表し合います。

教師はその発表ごとにほめます。

「上手な聞き方」ふり返りカード

⑤生かす 定着化

普段の授業でも上手な聞き方のポイントを使って聞いている子どもは必ずほめます。また、掲示してある「スキルのポイント」を授業に活用して、子どもたちに意識させるといいでしょう。

上手な質問のしかたのスキル

わからないことをそのままにしたり、自分で勝手にわかったように思ってしまうことがよくあります。その結果、間違った行動をとって誤解されたり、思わぬ結果をまねいて人間関係がうまくいかなくなることがあります。

学校での授業や生活の中で、聞きたいことをはっきりさせ、きちんと質問できることは大切です。適切な質問ができることで不安感が減り、見通しをもって行動できるようになるからです。孤独感を感じている子どもは、この“質問のスキル”など、仲間に働きかけたりルールを守るスキルの学習がとくに必要です。

授業の基本的な進め方

  • 道に迷ったときにどう質問したらよいかを考える
  • 問題場面をロールプレイで提示し、モデリングと話し合いでポイントを整理する
  • 質問のしかたの練習▶二人組み、またはグループで
  • 学習のふり返り▶ふり返りカードを書く

授業の実際

①つかむ インストラクション

道に迷ったときにどのように質問するかについて、ワークシートに書きこみます。いろいろな言い方を発表させ、質問しないとわからないことを意識させます。

学習課題「上手な質問のしかたにチャレンジしよう」と板書します。

授業の約束を確認します。

先生「お母さんにおつかいを頼まれました。途中まで来ましたが、お店がわかりません。近くにいる人にどうたずねますか?」

②気づく モデリング

いきなり「果物屋さんにはどうやって行けばいいですか?」と質問する場面と、「すみません。道を聞きたいのですがいいでしょうか。果物屋さんにはどうやって行ったらいいのでしょう。」という場面をロールプレイで見せて、感想を話し合います。

ロールプレイは、先生と子どもや授業協力者と子どもで行います。

【ロールプレイ】

女子「果物屋さんにはどうやって行けばいいですか?」
女子「すみません。道を聞きたいのですがいいでしょうか果物屋さんにはどうやって行ったらいいのでしょう。」

ポイントは、行動面と言語面に分けると、よりわかりやすくなります。

スキルのポイント 行動面

○相手に聞こえる声で
○相手を見て
○笑顔で
○ていねいな言葉で

スキルのポイント 言語面

○あいさつをする
○質問してもよいか聞く
○質問する
○お礼を言う


③やってみる リハーサル

●二人組で

二人一組で質問する人と答える人が交代して練習する様子

①二人一組になる。
②一人が質問する人、もう一人が答える人になる。
③質問する人と答える人が交代して練習する。
④質問されたときの感想を話し合う。

●グループで

グループになり、二人一組で質問と答える人をやり、他の人は感想を話し合う

①6〜8人のグループになる。
②二人一組になり、一人が質問する人、もう一人が答える人になる。
③ほかの人はポイントに沿って感想を話し合う。
④全員がやるまでくり返す。

1、2年生は、モデリングと同じ内容で何度もくり返すことが大切です。3年生以上は、いろいろな場面を用意しておき、時間のあるグループにチャレンジさせましょう。

上手な質問のしかたをした子どもをくり返しほめることで、スキルの強化につながります。


④ふり返る フィードバック

ふり返りカードに、感想も含めて書きます。とくに言語面でのポイントが理解できたかをふまえて感想が書けるといいでしょう。

「上手な質問のしかた」ふり返りカード

⑤生かす 定着化

朝の会・帰りの会などで、短い質問のしかたのゲームなどに楽しく取り組ませると定着します。例・「あなたは○○が好きですか?」「はい、好きです。」「それはどうしてですか? 理由を一つ(または二つ)言ってください。」「○○だからです。」聞く人と答える人が交代して続けます。


イラスト/宮地明子

「COMPACT64 ソーシャルスキル 早わかり」より

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