温かい学校づくりのための、ワクワクする校長講話~プレゼン型で朝礼をもっと楽しく、 子どもたちの心にメッセージを届けよう~

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タバティのLet’sスマイル (レッツスマイル)学校づくり
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小学生の不登校対策とサポート記事まとめ

前埼玉県公立小学校校長

田畑栄一

毎月の朝礼時や、始業式・終業式での「講話」にどんな思いを込めていますか? あなたが心に描く理想の学校づくりに向かうとき、教職員たちに学校経営方針について語るのはもちろんですが、学校の主人公である子どもたちに真摯に語ることで、その理念や思いは、よりダイレクトかつ全体的に広がって浸透していきます。
校長が子どもたちの前で話す機会は少ないです。折角の機会ですから、子どもたちの心に残る語りの場にしたいものです。それが長期休みの生活の基軸になったり、新学期のモチベーションにつながったりしたら、益々やりがいが感じられますね。

【連載】タバティのLet’sスマイル(レッツスマイル) 学校づくり #15

「校長先生のお話は聞こえないと思います」

私は朝礼時の講話を「校長先生の10分間授業」と題し、壇上からではなく、子どもたちと同じフロアに立ち、パワーポイントを併用して行ってきました。

それは私が新任の校長となった年の4月、新学期の始まりに、特別な配慮が必要とされる子どもたちの保護者と面談をしたことに端を発します。
耳の聞こえにくいお子さんをもつ保護者から、
「校長先生のお話は、うちの子には聞こえないと思います」
と言われました。

校長先生の話は聞きづらい、ではなく、「聞こえない」。
私はハッとしました。
耳が聞こえにくいことに配慮する、というのは、どう喋るかといった「相手が聞くこと」に対する方法論ではなく、「相手の心にいかに伝わりやすくするか」という本質論だと、教えてもらったように思えたからです。
そこで、この子に伝わりやすい話をするべく、パワーポイントで話の内容をまとめ、投影しながら講話をすることにしました。
それから10年間、毎回の講話でプレゼン資料を作り続け、令和5年3月24日の修了式で総計111回のプレゼンを行いました。

学校全体に届くプレゼンにするための10か条

始めた当初は、耳の聞こえづらい子どもたちにも、心に届きやすい話を…と考えてのことでしたが、パワーポイントで視覚に訴えるだけではなく、クイズなど様々な工夫をすることにより、このプレゼンを楽しみにしてくれる子どもや教職員がどんどん増えていきました。そして嬉しいことに、やがてこの1か月に1度だけの僅かな時間が、学校経営で欠かすことのできない要点となりました。以下に、私がプレゼンを作ってきた中で気付いたコツをご紹介します。

 10分以内を原則に
通常の朝礼は、全部で20分くらいの時間があります。まず先生たちの指導や分掌連絡を10分以内でやっていただき、私のプレゼンは文字通り、10分で行いました。
始業式や終業式の時間は普段より長く、45分間確保されていますので、私のプレゼンは15分。どんなに長くても20分に収まるようにしました。

 子どもたちとのやり取りは必須
「授業」と名付けているくらいですから、子どもたちとの双方向のやり取りを入れるようにしました。プレゼンの流れも授業と同じように、「導入⇒今日のテーマ・ねらい⇒展開(ここが創意工夫できるところ、個性をだせるところ)⇒終末」です。

「授業のテーマ・ねらい」を端的かつ明確に
「今月、子どもたちに伝えたいことは何か」
「子どもたちの今の実態から何が必要か」
それが短く分かりやすいキーワードになるまで心のなかで練ります。そして、単なる理想やお説教にならぬよう、私が目にした子どもたちの姿を交えて、分かりやすいストーリーに仕立てていきます。

 文字は大きく、読みやすく
1年生でもわかりやすいように文字を大きくしたり、1枚のプレゼンシートの情報量を調整したりしました。文字は、漢字だけでなくひらがなにしたり、ルビをつけたり配慮します。手紙を紹介する場合などは、どうしても情報量が多くなってしまいます。ときには、文字がどうしても小さくなる場合があります。そうした場合は、ゆっくり丁寧に読み上げて伝わるように配慮しました。

 子どもたちが主役であることを忘れずに
子どもたちの写真を多く入れ込み、子どもたちが「自分事」として興味をもつようにしました。何と言っても、子どもたち自身が生き生きと頑張っている姿は誰が見ても素晴らしく、これこそ共有に値する映像です。自分たちの活動を校長先生が受け止めてくれているのだ、という、教師と児童の相互信頼が強くなります。1年生から6年生までバランスよく配置して、なるべくまんべんなく紹介したいです。

 ビジュアル資料にこだわる
図、イラスト、写真などのビジュアル素材を多用して、目を惹き、関心を惹きつける資料作りを心掛けました。ただ目立つというだけではなく、一枚の写真や絵は、100や1000の言葉にも匹敵する説得力をもつことがあるからです。また学校アンケートなどでは、印象付けたい数字を大きくするなどして、注意を向けやすくします。

 同じフロアで、子供たちと一緒に作る
学校は子どもたち一人一人が主役である、ということ。そして、「一人はみんなのために、みんなは一人のために」という大切なテーマを感じ取ってほしい。そんな願いから、私はプレゼンを壇上からではなく、子どもたちと同じフロアで行ってきました。
そして子どもたちから意見を聞く場合には、丁寧に対応することを心掛けました。
例えば、「なぜ、学校は右側通行なのですか」「どうすれば、いじめがなくなると思いますか」「どんなことをみんなでやったら、楽しくなると思いますか」などと問いかけ、発言してもらうときには、マイクを持って私自身が子どもの近くに行きます。
子どもたちの意見を傾聴し、全員がそれを共有することで、「みんなの提案が受け入れられる学校だよ」という意識の浸透を願いました。
もちろん、「クイズ」や「問題」、挙手による即席アンケートで子どもたちの全体的傾向を視覚化するなど、楽しいゲーム的な参加意識の刺激も行います。子どもたちとトリオを組んで教育漫才を発表したこともありました。
体育館という広い広い教室の中、全校児童が私の担任する子どもたち、という感覚です。なんと楽しいことか!

 子どもたちの向こうに教職員の姿を
子どもたちにプレゼンしながら、実は教職員たちにも語りかけています。私は、「こういう考えをもって子どもたちに問いかけているよ。先生たちは、各クラスや、担当する分掌で進化・発展させてください」というメッセージを込めています。
もちろん、こちらから教職員に要望するだけではありません。日頃、先生たちの授業をしっかり拝見し、その指導助言とプレゼンの内容が矛盾しないように、あるいは、先生たちの指導助言がより価値高くなるよう、充分に意識します。

 地域に開かれた学校づくりのために
コロナ禍の3年間は実現できなかったのですが、それ以外の間は、保護者や地域の方に朝礼を公開してきました。40人程の方々が見に来てくださった朝もありました。朝礼が終わった時にお礼の挨拶に行くと、感謝の言葉や、「校長先生の考えがよく理解でき安心します」等との言葉をいただくことができました。そして、仲良くなることができました。可能な限り多くの方に学校経営方針や私の思いを伝え、子どもたちの反応や姿を見ていただくことが、「地域に開かれた学校」「コミュニティーのセンターとしての学校」に繋がる最適解だと考えます。

 一人一人に語りかける気持ちで
プレゼン用の資料は作りますが、台本は使いません。すべて喋りたいことは暗記しておきます。
そして、必ず会場の四隅にいる子どもたちにまで目線を送るように心がけ、会場全体の子どもたちと目を合わせるような気持ちで、子どもたちから顔を背けずに、ゆっくりと丁寧に言葉を発します。
心から発せられた言葉である、と感じてもらったとき、その言葉は説得力をもつからです。
笑顔の表情や、声の強弱、間の取り方、姿勢を意識して、子どもたちの中を視線を合わせながらゆっくり歩き語りかけていきました。

おわりに

今年も後1週間ほどで「終業式」を迎えます。是非、子どもたちの1年の歩みや、頑張りをあなたらしい方法と言葉で労いと評価をして、子どもたち一人一人の自己肯定感を高め、各自が新年へ希望が見付けられるような終業式にしていきましょう。
そして、その言葉の中に教職員を讃え労う言葉があると、教職員たちもきっと報われた気分になり、「頑張ってきてよかった」と振り返ることができると思います。子どもたちも、先生たちに感謝の思いをもつと思います。
温かい笑顔で心から語ってください。校長は多くの人に支えられて初めて職務が遂行できるのですから。

イラスト/坂齊諒一


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<プロフィール>
前埼玉県公立小学校校長。
埼玉県公立中学校国語科教諭、指導主事、教頭職、校長職を歴任。校長職は10年間。
著書に『教育漫才で、子どもたちが変わる ~笑う学校には福来る~』(協同出版)、『クラスが笑いに包まれる! 小学校 教育漫才テクニック30』(東洋館出版社)、『学級づくりと授業に生かすカウンセリング』(共著・ぎょうせい)。 NHK EテレなどTV出演も多数。
現在は、全国各地での講演や研修を実施/私立学園中学校・高等学校国語科講師/一般社団法人「Lauqhter(ラクター)」教育コンサルタント/一般社団法人「アルバ・エデュ」参事/こしがやFM86.8 教育パーソナリティーなど。
最新の教育活動についてはこちら(他サイトが開きます)。


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