改めて確認しよう! 学校で使わないほうがいい「不適切な言葉」とは

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マスターヨーダの喫茶室~楽しい教職サポートルーム~
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元山形県公立学校教頭

山田隆弘

学校では日常的に様々な話や言葉が飛び交います。特に職員室では、児童の家庭環境や学校をとりまく社会環境など、普段はあまり使われないような、様々な言葉や表現を使うこともあるでしょう。そして、そこには人権に配慮されていないような不適切な言葉が含まれている可能性があります。ぜひ、みなさんも一度立ち止まって、チェックしてみてください。

【連載】マスターヨーダの喫茶室~楽しい教職サポートルーム~

1 言葉の言い換えの必要性

ある時、学校の教育相談の会議で、新人のせんせいが、
「あの家は片親だから、あの子も大変なんです」
と話をし始めました。ちょっとドキッとしました。

わたしは、すかさず…。

その「片親」っていう言葉は、差別的な意味合いを含んでいるよ。昔、片方の親しかいないことを欠損家庭と捉える悪しき風潮があり、そこから生まれた言葉だからなんだ。
それに、両親が揃っていたって課題を抱えている家はたくさんあるし、ひとり親でも素晴らしい子育てをしている家族だってたくさんあるよ。

えっ、そうなんですか。親が一人だと我が子に関われる時間が少なくなるでしょうし、「父親として」「母親として」といった役割が果たせなくなるのではないですか?

確かに、そういう難しさはあるだろうね。でも、たくさんの保護者さんと話をし、その姿を見ていこう。両親のどちらかに重大な問題があり、家庭が壊れたりDVがあったりすれば、子供たちが心に傷を抱えていることが多い。そのような場合、ひとり親になることで家庭の問題が清算され、心が安定することも多いんだよ。決めつけは止めておいたほうがいいよ。

そんな会話をしましたが、新人のせんせいは、
「ウーン、そうなんですかねえ…」
と納得がいかないようでした。

恐らくこのせんせいは、両親の揃った家庭で育ち、それが当たり前だったのでしょう。
逆にひとり親の家庭で育ってきた人にとっては、親は一人が当たり前です。
人は生育環境や過去の経験など、様々な要因によって、多かれ少なかれ認知にバイアスをもっています。そして、そのバイアスに気付かずに不用意な発言をすることによって誰かを傷つけたり、問題を巻き起こしたりすることがあります。
教員は、社会に暮らす、ありとあらゆる人たちと接する可能性のある職業です。使うべきでない言葉、言い換えたほうがいい言葉の感覚を研ぎ澄ましていきましょう。
そして、人権に配慮した言葉が学校で定着していくようになればと、願ってやみません。

2 人権に配慮した言葉とは

学校教育の中で、言い換えたほうが良い言葉と適切な言葉について、列挙してみました。重要そうな言葉を選んでみたつもりですが、わたしが認識できていない言葉もあるかもしれません。そのような言葉に気づかれた方は、ぜひコメントをお寄せください。

①保護者や家庭に関する用語
世間一般で当たり前のように使われている言葉もあるだけに、正しい認識を心がけましょう。


保護者が正式な婚姻届を出していない場合もありますので、よく家庭状況を把握し、「父」「母」ではなく「パートナー」などといった表現をすべきケースも多いです。あるいは、「保護者」という表現を言い換えて、「~さんのおうちの方」という表現も無難ですね。

使用頻度が高いです。言い換えていくべき表現です。

②性別に関する用語

「性役割」というものはありますが、決めつけるような言い方、表現は避けていく必要があります。男子は技術科、女子は家庭科などという教育課程上の差異は今やありません。


(オカマ、オナベ、オネエ、レズ、ホモなど)

③心身に関する用語、日常的に使う表現の中で
絶対に使ってはならない障がい者に対する言葉も含めて、日常生活で使いがちな表現を再考していく必要があります。共生社会の実現のためにも配慮していかなければならない言葉です。


*障害者→障がい者の言い換えについては、地方自治体によって対応が異なります。詳しくは、【内閣府の障害者施策関係単独事業の実施状況等】のページをご覧ください。

特にネット界隈では、「シンショー(身障)」など新たな差別用語が作られています。児童たちは影響を受けやすいので、注意していきましょう。

日常生活の中で、上記のような言葉を使うことがありますが、使うべきではなく、ぜひ言い換えていきたいです。

障がいのある方に使いがちな用語ですが、人権的に問題があります。使う必要がある場合は、診断名で代替したいです。

④人種や民族に関する用語
人種や民族、身分に関わる差別的用語は使ってはならないです。


両方の文化を受け継ぐ「ダブル」「国際児」という表現のほうがグッド。

絵本『ちびくろサンボ』を11社が絶版にしたことは有名

以前は、「支那蕎麦」と表記している店もありましたが「中華そば」に変更


「部落」は、「部落差別」を想起させる可能性があるので、使わないようにしましょう。
「都市」の反対語として「村落」、家々の小規模な集合体を示す行政用語として「集落」という言葉がありますので、これらの方を使っていきましょう。

⑤職業に関する用語
性別の入っている職業名をはじめ、いまだによく耳にする言葉が多いです。

3 言葉そのものではなく…

「徹底追及 『言葉狩り』と差別」(1994年 文藝春秋)に、故井上ひさし氏が寄せた「差別語のための私家版憲法十一箇条」という論考の中に、特に教育者として肝に銘じておくべき言葉があります。

第七条 ことばを抹殺したからと云って、また、たとえそれをどう言い換えたからと云って、その言葉が示していた差別がなくなったわけではない。

第八条 差別語には差別語の歴史があり、わたしたちはその歴史と勇気を出して向き合わなければならない、そうする人間の数がふえることによってのみ、歴史の暗部や秘部を乗り越えることができるだろう。つまりその差別語をつくり出している歴史的状況を大勢で意識的に変えなければならない。

井上氏が示すように、単なる言い換えだけでは、本質的な解決になりません。しかし、言葉に敏感になることによって、その言葉が象徴している現実問題に気付くことができます。言葉によって苦しんでいる人々の思いや願いをくみ取ろうとする姿勢が個々の人権意識の高揚につながっていきます。

本稿に示したもののほか、民族、被差別部落、ジェンダーに関しての差別語は数多くあり、残念ながら令和のこの時代にも残っています。じっくり見定め、差別語や不快語は使わない人権に配慮した学校教育でありたいです。

イラスト/したらみ フジコ

【参考図書】
改訂版 実例・差別表現 堀田貢得/SBクリエイティブ
最新 差別語・不快語 小林 健治 /にんげん出版
差別用語を見直す―マスコミ界・差別用語最前線 江上茂/花伝社
失敗しないためのジェンダー表現ガイドブック 新聞労連ジェンダー表現ガイドブック編集チーム/小学館
オトことば。 乙武洋匡/文藝春秋
徹底追及 「言葉狩り」と差別 週刊文春編/文藝春秋


  こんな問題を抱えているよこんな悩みがあるよ、と言う方のメッセージをお待ちしています!

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山田隆弘(ようだたかひろ)
1960年生まれ。姓は、珍しい読み方で「ようだ」と読みます。この呼び名は人名辞典などにもきちんと載っています。名前だけで目立ってしまいます。
公立小学校で37年間教職につき、管理職なども務め退職した後、再任用教職員として、教科指導、教育相談、初任者指導などにあたっています。
現職教員時代は、民間教育サークルでたくさんの人と出会い、様々な分野を学びました。
また、現職研修で大学院で教育経営学を学び、学級経営論や校内研究論などをまとめたり、教育月刊誌などで授業実践を発表したりしてきました。
『楽しく教員を続けていく』ということをライフワークにしています。
ここ数年ボランティアで、教員採用試験や管理職選考試験に挑む人たちを支援しています。興味のあるものが多岐にわたり、様々な資格にも挑戦しているところです。



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