本ばなれした子どもが本を読まずにはいられなくなる方法

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アニマシオンで楽しい読書

執筆/岡山県公立小学校・南惠介

アニマシオンとはいったい何でしょうか。

アニマシオンの語源はラテン語のアニマであり、英語の「アニメーション」の同義語です。つまり、簡単にいえば本を通じていきいきと子どもたちが動き出すこと。そしてそれを通じて子どもたちが本に親しむことと捉える読書教育メソッドと言うことができるでしょう。

教えるのではなく、気づかせ育てる

そのような教育メソッドを考案者のモンセラット・サルトは75の「作戦」として提案しました。アニマシオンでは教師が読み聞かせで日常的に行っている、絵を提示して問う、早口言葉、暗唱などの作戦もあります。本稿では日常的に行えそうな「ゲーム」を簡単に紹介します。

前もって本を読んで行うもの

アニマシオンの「作戦」では、同じ本を人数分用意して全員が読んでいることが前提ですが、現実的にはハードルが高いものです。そこで、以下のような方法を提案します。

◆「これ、だれのもの?」

①本の登場人物それぞれに関係がある服や持ち物の絵を画用紙に一枚ずつ描いておく。
②あらすじを簡単に話す。
③一通り絵を見せる。
④一人ひとりに服や持ち物の絵を見せる。正解したら一点。
⑤最後に点数を集計する(なくてもよい)。

◆「物語バラバラ事件」

①本の中の文章をカード一枚に一行ずつ書く。
②列を作り、バラバラにしたカードを一人ひとりに配る。
③黙読させた後、一人ずつ大きな声で読ませ、自分のカードが別の子のカードの前だと思ったらその子の前に移動、後ろだと思ったらその子の後ろに移動する。
④最後に正しい順番を教える。

前もって本を読んでいなくてもできるもの

アニマシオンには前もって本を読んでいなくてもよい「作戦」もいくつかあります。

◆「聴いたとおりにします」

①子どもたちの配役を決め、配役ごとに決めておいたそれぞれの場所に分かれる。
②読み聞かせのとおりに子どもが動く。
③感想を言う。

◆「ダウトをさがせ」

①読み聞かせを行う。
②もう一度同じ本の読み聞かせを行うが、名前や状況を何か所か変えて読む。
③間違いに気づいた子どもは「ダウト!」と大きな声で言う。

一年生の子どもはくり返しが大好きで、同じ本を何度も「読んで」と言います。同じ日でなくても、次の日に、また次の日に。

最後になりましたが、教師はアニマドールという仲介役を演じます。アニマドール自身が、本や活動を楽しむことが大切です。また、ここで紹介したものはあくまでも作戦です。子どもたちの様子や準備できる環境に合わせて楽しく実践できればよいですね。

参考文献『読書へのアニマシオンー75の作戦』『読書で遊ぼうアニマシオン』モンセラット・サルト著(柏書房)

みんなの声が集まれば、もっと絵本を楽しめる

執筆/北海道公立小学校・戸来友美

読み聞かせをする本を選ぶときには、ページをめくりながら、ここを読むときっとこんな反応が返ってくるな、とか、ここをみんなで読むと楽しい時間になるなと、読んでいる時間を想像しながら本を手に取っています。

声を合わせて読んでみる

例えば、『はなを くんくん』は、冬眠をしていた動物たちが、はなをくんくんしながら、何かを見つけに駆けていくお話。何度もくり返し「はなをくんくん」というフレーズが出てくる。そこで、そのフレーズをみんなで声に出して、楽しむことにしました。「絵本を読んでいて、先生が『はなを』と言ったら、みなさんは題名のように『くんくん』と言ってください。ちょっと、練習しましょう」と声をかけます。

「はなを・・・」「くんくん・・・」「もっと、声が出たはずなんだけどな。もう一度! はなを・・・」「くんくん!」というように、何度か掛け合いを練習しました。すると、お話にどんどん興味が湧いてきます。それから読み始めました。

『はなをくんくん』(福音館書店)

『はなをくんくん』文/ルース・クラウス、絵/マーク・シーモント、訳/きじまはじめ(福音館書店)

白黒の絵を見つめながら、聴き入る子どもたち。声を出すフレーズが出てくるときには、少しゆっくりと「はなを・・・」と言うと、「くんくん!」と元気のよい声が響きます。何度かくり返すたびに声は大きくなります。そして、最後のページを開くと、くんくんとしていたものが絵として出てくるので、子どもたちも「ほう」と安心の表情になります。一冊の本の世界を学級みんなで楽しめる時間となるでしょう。

絵本の世界を広げてみる

『うんこしりとり』は、「こ」ではじまるうんこが、終わりのないしりとりになっている絵本で、読むと必ず笑いが起こります。しかも、このしりとりの歌があり、(http://www.kodomoe.net/unko/)で見られます。自然と口ずさみたくなるこの歌は、一度聞くと忘れられず、歩きながらも自然と歌うようになります。

『うんこしりとり』(白泉社)

『うんこしりとり』文・絵/tupera tupera(白泉社)

絵本を読んで、しりとりの歌を聞いた後は、「高級なうんこの音は、どんな音?」などと問いかけたり、自分たちでもうんこしりとりを考えたりして遊ぶこともできます。子どもたちは自分の考えたものを発表したり、友達の作ったものを聞いたりすることで、さらに楽しんでいました。

イラスト/津田蘭子

『小一教育技術』2015年10月号より

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