こんな「授業の荒れ」を見逃さないで! 学級崩壊を防ぐ、前兆チェックリスト!
「授業の荒れ」は、「いじめ」と似ています。最初はとても小さなことから始まり、放置していると、だんだんひどくなります。そして、良くない行動を真似する子どもが増えてきます。授業崩壊につながっていきます。今回は、松下先生が実際に経験したことを元に作成した「授業崩壊の前兆行動チェックリスト」を紹介します。
指導/大阪府公立小学校教諭・松下隼司
劇団俳優を経て、公立小学校の教壇へ。得意のダンス指導で日本一になったり、絵本作家にチャレンジしたりと、精力的な毎日を過ごす松下隼司先生。その教育観の底には、子どもも指導者も毎日楽しく、笑顔でありたいという願いがあるそうです。そんな松下先生から、笑顔のおすそわけをしてもらうコーナーです。
目次
1.授業崩壊の前兆行動チェックリスト
2.荒れの前兆に気付いたら、「流さない」・「逃げない」
教師になったばかりで経験が浅かった頃の私は、子どもの荒れに気付けませんでした。少しずつ少しずつ荒れが広まっていき、荒れの言動もひどくなり、気付いたときには「時すでに遅し」の状態でした。修復不可能の状態まで、荒れが進行してしまっていたのです。
一度でも子どもたちの荒れを経験すると、次からは気付けるようになります。しかし、荒れに気付いたのに、対応を躊躇してしまったことがありました。気付いていたのに、見過ごしてしまったのです。
「子どもから反発されるかも……」と、気後れしてしまったからです。20年近く前、教員になって経験が浅く、まだ初々しかった頃の話です。
授業に限らず、学級の荒れは、「虫歯」に似ています。虫歯は、自然に治りません。放っておいたら、どんどんひどくなります。だから、気づいたらすぐに歯医者さんで治療してもらう必要があります。
学級の荒れも同じです。放っておいても、荒れはなくなりません。荒れに対応しなければなりません。教師としての責任感と、立ち向かう勇気、そして知略をもって。
例えば、教師の指示に、わざと大声で、
え~!
と言う子どもがいたとします。問題は、わざとか、そうでないかです。
子どもですので、思わず「え~!」と言うことはあります。子どもが「え~!」と言って当然のことを教師が言ったのならば、なおさらです。
それを威圧的に、
『え~!』と言うな!
と一喝するのでは、子どもが可哀そうです。素直な感情表現を奪ってはいけません。
しかし、子ども本人が授業をかき回そうと悪意をもって「え~!」と言った場合は、今の私だったら、毅然と、
ん!? 誰?
と、普段と声色を変えて言います。
もちろん、誰が言ったか分かっていながら、「誰?」とあえて言うのです。この私の一言で、教室の雰囲気ががらりと変わるようなイメージです。
そして、言った本人のところに、ゆっくりと歩いて行きます。まわりの子どもたちの視線を集めるぐらいにゆっくりと行くのがポイントです。
その子どもの近くまで来たら、その子どもの目線までゆっくりと腰をかがめて、一瞬、間をとります。まわりの子どもも、言った本人も、さらに緊張感が高まります。
そして一言、
Youか?
と聞きます。「自分か?」「あなたか?」でなく、ふざけて英語で言ったことに気づいた子どもたちは笑顔になります♪
ただしこれは、今の私、私が今担任している子どもたちの場合です。先生お一人お一人のキャラクターや子どもたちの実態に合わせて、対応してみてください。
3.規律や厳しさより、楽しさや大らかさを!
私は以前、荒れの前兆行動に敏感になりすぎてしまったこともあります。
前兆行動を見抜けるようになると、つい注意が増えてしまいます。また、しっかりやっている子どもへの褒め言葉が少なくなります。褒めるときも、前兆行動を起こす子どもへの嫌味になってしまいます。
荒れを防止するために授業規律を守るよう厳しくしすぎたことで、子どもたちがのびやかに過ごせる学級ではなくなってしまうのでは、本末転倒です。
荒れの前兆行動が起きる一番の原因は、私の授業が子どもたちにとって楽しくなかったからです。授業が分かりにくかったからです。子ども一人一人の特性や、家庭の事情も理解できていなかったからです。授業改善こそが、授業の荒れを根本から直す対処方法だと思っています。
子どもたちの荒れを思い出すと、今でも胸が苦しくなります。でも、私よりも苦しい思いをしていたのは、子どもたちと、親御さんです。経験の浅い先生方や、子どもたちの荒れに悩まれている先生方のご参考に少しでもなれば幸いです。
松下隼司(まつした じゅんじ)
大阪府公立小学校教諭。第4回全日本ダンス教育指導者指導技術コンクールで文部科学大臣賞、第69回(2020年度)読売教育賞 健康・体力づくり部門で優秀賞を受賞。さらに、日本最古の神社である大神神社短歌祭で額田王賞、プレゼンアワード2020で優秀賞を受賞するなど、様々なジャンルでの受賞歴がある。小劇場を中心に10年間の演劇活動をしていた経験も。著書に、『むずかしい学級の空気をかえる 楽級経営』(東洋館出版社)、絵本『ぼく、わたしのトリセツ』(アメージング出版)、絵本『せんせいって』(みらいパブリッシング)がある。
イラスト/したらみ 横井智美