【相談募集中】過労でダウン……やり遂げたい気持ちと不安の狭間で悩んでいます
問題の多いクラスの担任になり、管理職には理解されず、ストレス反応の症状が出てドクターストップがかかった先生からの相談が 「みん教相談室」に寄せられました。復帰の準備をしたいけれど、実際に学校に行くと体がこわばり、頭痛が再発してしまったそう。今回、教員向け法定研修でメンタルヘルス研修の講師をされている臨床心理士・公認心理師の大多和二郎先生からのアドバイスをシェアします。
目次
Q. 過労でダウン…やり遂げたい気持ちと不安のはざまでどうしたらよいかわかりません
これまで、主幹教諭として、児童・保護者との関係もよく、副校長昇進候補としてバリバリ仕事をこなしていました。残念ながら今年度は昇進できず、異動しました。
異動先で6年主任や研究主任、教務を言い渡されました。その学年は昨年度の担任は持ち上がらず、私と同じくらいのキャリアの先生がうつ病を発症しダウンした学年でした。私は41名のクラス担任となり、4月当初から、少しでも指導すると「死ね」、手をもつと「体罰だ」と反抗され、その味方をする子どもたちも複数いる状況でした。6年生ですが、まっすぐ列になるにも時間がかかり、離席する児童もいます。反抗的な行動を嫌がる子どもたちは「何とかしてほしい」と訴えます。
そんな中でも、子どもたちを認めたり、任せたりしながら、少しずつ子どもたちとの関係を築いてきました。何とか、最高の1年にしてあげたい、勉強をはなからあきらめている子も何とかしたい、と思って頑張っていました。ただ、四六時中、クラスのことを考えて不安な毎日が続きました。クラスのことで疲れ果て、他の様々な業務が追い付かなくなりました。
校長や専任に何度伝えても「大丈夫。昨年度の6年生よりは、落ち着いているから。小さな問題はおこるかもしれないけれど」「人がいないんだよね。この立場(校長)になったらわかると思うんだけど難しいんだよ」と毎回とりあってもらえず、フォロー体制もなく自分が何とかしなければならない負担が重くのしかかりました。
職場では仕事人として明るく行動していたので、気にとめてもらえなかったのかもしれません。頭痛がだんだんひどくなり、首から背中が痛くなり、吐き気や立ち眩みで朝起きることができなくなりました。無理に1日小学校にいっても、パワーが出ず座っていることしかできないため、離席だらけで収拾のつかない授業になります。それを見て落ち込みます。
ついに、頭痛、吐き気、立ち眩み、首から背中までの痛み、体のだるさ、気分の落ち込みがひどくなり、判断力・思考力が一気に低下し、学校を休みました。以前から長らくお世話になっていた主治医の先生に自分の状況を相談すると、1か月のドクターストップがかかりました。このまま出勤すればひどいうつ病になり、回復が困難になるといわれました。
そんな中でも職場からは、些細な用件で遠慮なく電話があり、それが負担でした。自分の大変さが全く理解されていないことがわかりショックでした。判断力低下で要求を自分でする自信がなく、夫に「休みの期間は緊急の要件以外は学校から連絡をいれないでほしい」とお願いしてもらい、ようやく休むことができました。
家で休んでいると、ゆっくりと食事をし、家事をしてお風呂に入って眠るという人間らしい時間をもつことができました。1日中仕事やクラスのことを考え、家でも仕事をし、寝食も忘れ悩んでいたことに気づきました。
1か月たち、家では心も体も落ち着いてきました。今復職に向けて動き出しています。ドクターはまだ早いのではと、さらに1か月休む診断書を出してはいます。先日、職員室や少し教室を見に行くなどして午前中勤務してみました。職員室にいて業務をすることはできました。教室に子どもたちを見に行くこともできました。しかし、代わりの先生が反抗的な子どもや子どもの訴えについて対応している姿、保護者のクレームに対応する姿を見ると、体がこわばり、頭痛が再発しました。
6年主任で担任であるということの重みややり遂げたい気持ちがある一方で、今、担任として復職することにかなりの不安を感じています。校長は「クラスのことだけやってくれればいいから」といいますが、クラスが一番の原因なのです。
復職するにあたり、職場にどんなことをどのようにお願いすればよいのか、この後1年間自分が勤務できるにはどうすればよいのか、今日主治医の先生にも相談する予定ですが、こちらでもご助言をいただけたらと思います。
子どものことを悪くいうのが最も嫌いな自分が、このようなことを書いてしまうことに自己嫌悪を覚えます。でも今はこれが素直な気持ちです。子どもや保護者が大変で本当はつぶれそうですと声をあげられない先生方、管理職に理解されず苦しむ先生は多いはずです。そしてもし、自分がこの状況から復職できたのならば、この経験を他の苦しんでいる先生にも還元していきたいです。よろしくお願いします。 (もとか先生・50代女性)
A. 復帰については、「家にいると退屈だな」と思うくらい回復が安定してから考えてください
1か月のドクターストップがかかるまでの様子、その後の生活状況、そして心や体の変化の様子を詳しく書いていただいたので、状況がよくわかりました。やり遂げたい気持ち、仕事への責任感も強く、いままではバリバリ仕事をこなしてきていたけれど、今年は昇進はできず異動になったとのことですね。
そして、昨年度同じくらいのキャリアの先生がうつ病を発症してダウンした学年のクラス担任になり、それだけではなく、研究主任と教務も任されたのですね。そしてクラスをなんとかしたいという思いで四六時中クラスのことを考えて不安で、疲れ果てて他の業務が追いつかなくなってしまいましたね。でも管理職にはなかなか理解してもらえず、フォローの体制もなかったので、更に頭痛、背中の痛み、吐き気などストレス反応による症状が次々と出てきて、判断力、思考力も落ちてきてドクターストップがかかったのですね。本当に大変な状況でしたし、ストレス反応もきつかったですね。
療養のために休んでいるところへ職場の些細な用件の連絡はかなり負担になり、特に、業務の負担による心身の不調で休んでいる場合には、回復を遅らせることになります。管理職は仕事の連絡をしないように職員に注意してほしかったですね。でも1か月間休むことで人間らしい時間をもてたこととともに、それまでは家でも仕事をし、悩んでいたことに気づけたのは良かったと思います。そして、ドクターストップ直前のかなりの心身の不調さからすると、1か月でよくそこまで回復できたなと思います。もとか先生の持っているもともとの健康度、ご家族の理解や協力などがあったことで回復も順調だったのでしょう。もちろん、医師の助言や薬も役立ったのだと思います。
ただ、「ドクターはまだ早いのでは、とさらに1か月休む診断書を出してはいます」ということですから、急がないほうが良いと思います。体の疲れだけではなく、精神的な負担による不調がかなり出ていたからこそドクターストップがかかったのです。メンタル不調による場合、家の中や職場以外の外出ではほとんど問題なくなるほど回復していても、復帰を急ぎすぎると「職場」「仕事」というところでは、不安や心身の不調が蘇ってきてしまうことがよくあります。
「先日、職員室や少し教室を見に行くなどして午前中勤務してみました」とありますが、代わりの先生が子どもや保護者のクレーム対応している姿をみて体がこわばり、頭痛が再発したのは、まだ復帰の時期には早いということだと思います。ここは焦らずに、「家にいると退屈だな」と思うくらい、回復が安定してきてから、少しずつ復帰の段階を考えていくことが大切だと思います。体の状況、心の状況を医師に細かく報告し、ストレス反応からの回復がどの程度なのかを判断してもらい、復帰のタイミングを医師と一緒に考えていきましょう。復帰にあたっては、職場復帰訓練プログラムを利用するやり方もありますし、管理職と話し合って段階的に業務に復帰するように計画していくことも考えられます。
いずれにしても、いきなり以前と同じように業務をこなすというのは難しいと思います。「自分の限界」を超えないように、一番のストレッサー(ストレスのもと)を明確にすることも大切です。クラスのことが負担で不調になったのですから、「クラスのことが一番大変だった」というところを丁寧に管理職に話しましょう。
やる気があったからこそ、自分に鞭打ってがんばってしまったのですよね。体がこわばり、頭痛になり、朝起きられなくなるというストレス反応は、体が自分の限界を示しているサインです。もとか先生は責任感も強く、子どもたちを思う気持ちも強く、弱音を吐かずがんばるタイプなのかなと思います。「職場では仕事人として明るく行動していたので、気にとめてもらえなかったのかもしれません」とありますが、人を悪く言わず、弱音をあまり吐かず、いつも笑顔を心がけている人が注意しなくてはいけないのは、「元気そうに見られる」ということです。
ストレスによる自分の限界を体験してしまった以上、それを伝えなければなりません。
管理職には「辛かったことをそのまま話すことにします」と言って、人から見られる自分と、実際の自分自身のギャップを少なくすることにしましょう。もちろん話すときには、誰かのせいにするのではなく、事実と自分の心身の状態をそのまま話すことが大切です。
みん教相談室では、現場をよく知る教育技術協力者の先生や、各部門の専門家の方が、教育現場で日々奮闘する相談者様のお悩みに答えてくれています。ぜひ、お気軽にご相談ください。