小6国語「私と本」「森へ」板書の技術

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見やすく理解しやすい「単元別 板書の技術」元京都女子大学教授・同附属小学校校長 吉永幸司監修
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今回の教材は、「私と本」「森へ」です。「本は友達」をテーマに、ブックトークで本の魅力を伝え合うという学習活動です。ブックトークをするにあたり、自分と本との関わりや「森へ」を通し、作品の魅力に気付かせるようにします。そのため、子供たちが本との関わりや作品の魅力に気付きやすくする板書の工夫を紹介します。

監修/京都女子大学附属小学校特命副校長・吉永幸司
執筆/埼玉県公立学校教諭・小澤綾華(せせらぎの会)

 

単元名 本は友達
教材名 
「私と本」「森へ」(光村図書 6年)

単元の計画(全5時間)

第一次 単元のめあてを確認し、学習の見通しをもつ。(1時間)
1 自分と本との関わりを振り返って、学習の見通しをもつ。

第二次 本のテーマを話し合い、ブックトークの準備をする。(3時間)
2 「森へ」を読み、作品の魅力について話し合う。
3 ブックトークで紹介するテーマを決め、本を探して読む。
4 選んだ本の魅力を考え、ブックトークの練習をする。

第三次 ブックトークをし、感想を交流する。(1時間)
5 ブックトークをし、本の魅力を伝え合う。

板書の基本

〇今までの読書生活を振り返り、今後の読書の幅を広げるために役立つ板書

本単元の言語活動であるブックトークとは、いろいろな「テーマ(主題)」に沿って本を紹介することです。今回は「テーマ」を広げ、自分が今までに読んだことのないテーマの本を選んだり、同じ「テーマ」でも違う本を読んだりしながら、読書生活の幅を広げることを課題としています。

1/5時間目では、一目で今までの読書生活を振り返ることができる表を作成し、書き込みながら振り返りをします。6つの項目をカードで示し、「どんな本が好きか」から「これからどんな本を読みたいか」に考えを広げることで、今まで読むことのなかったテーマや本の好みに気付かせます。

また、本のテーマをあらかじめカードでいくつか用意したり、実際の本を紹介したりすることで、「次、読んでみたい」と今後の読書生活の幅を広げる助けになります。

〇作品の魅力を捉えやすくする板書

なかなか手に取ることのないテーマの魅力を語ることは、簡単ではありません。2/5時間目のように、板書で整理しながら考えを広げることで、作品の隠れた魅力に気付かせます。

テーマを「作品から受け取ったメッセージ」とし、作品を読んですぐに感じたことを色チョークで表したり、魅力を「心に残る言葉や気持ち」とし、色用紙に分類して表したりします。「人にたとえる表現(擬人化)」や「比喩」が多い文だからこそ、「筆者目線に立てる」「読んでいてドキドキする」と表現技法と子供の感想を結び付けます。

「テーマから魅力を探し、表現技法につなぐ」学習の流れが分かる板書にすることで、自分の選んだ本の魅力を考える際の助けとなります。

板書を利用した授業の進め方(1/5時間目)

小6国語「森へ」板書の技術 板書
1/5時間目の板書

授業前に次のような準備をして授業に臨みます。

・あらゆるジャンルの本に触れてほしいことから、単元の前から、司書教諭や学校司書と連携して、広いテーマの本を教室などに置き、子供たちの読書量を増やしておきます。
・可能であれば、振り返りをしやすくするために、学校図書館の個人の貸し出し履歴や、読書の記録などを用意します。

1 学習課題を確かめる

単元名「本は友達」、教材名「私と本」「森へ」と板書し、今までの読書生活について振り返り、テーマに着目して読み広げていく学習をすることを伝えます。そして、本時のめあて「本との関わりを考え、好きな本について話し合おう。」と板書します。

2 学習の見通しをもつ

単元の見通しをもたせるために、教科書を読み、学習計画を立てます。「私と本」を読み、①自分と本との関わりを考えよう②印象深い本について、友達と話そう③本のテーマに着目して、読みを広げよう④テーマを決めて、ブックトークをしよう、と学習の全体像をつかませます。

3 自分と本との関わりを振り返る

今までの読書生活を振り返り、今後の読書生活を豊かにしていくための話し合いをします。「自分と本との関わりを考えよう。」と板書し、黒板中央に「ぼく・私と本との関わり」と黄色カードを貼り、そこから6つに分かれる線を引きます。そして教科書と同じ項目の6つの青いカードを貼ります。

読書生活を振り返る項目の例は、次の通りです。

・どんな時・どこで、本を読むか(時・状況・目的・場所)
・どんな本が好きか(傾向・ジャンル意識)
・どのくらい本を読むか(量・頻度)
・どのように読む本を決めているか(目的に応じた読み方・決め方)
・これからどんな本を読みたいか(読書計画)
・読むと、自分にどんな変化が起きるか(読書の価値の意識)

以上の6つの項目ごとに、振り返るヒントとなる言葉を白チョークで板書していきます。子供たちは、自分の経験を振り返り、板書と同じように区切られたシートに書き込んでいきます。

4「好きな本・印象が深い本」のテーマについて話し合う

まず、「好きな本・印象が深い本について話し合おう。」と板書し、紹介の仕方を説明して、「どういう話」「この本のテーマ」と友達に伝える内容を書き加えます。次に、テーマの例をカードにして貼っていきます。そして、自分の選んだ本を友達に紹介します。

子供たちが興味をもって手に取る本は、「物語」や「伝記」、「ファンタジー」や「歴史物」が多いことが予想されることから、教師側で「事実にもとづいて書かれた話(ノンフィクション)」や「国際理解」「平和」「自然・生命」などの本を用意し、8つのテーマといっしょに本も紹介していきます。

※事前に好きな本、印象が深い本を持参するように伝えておきます。複数ある場合や、持参が難しい場合は、学習用端末を使用して写真などを用意させます。

5 次時の見通しをもたせ、学習のまとめをする

次の学習は、「自然・生命」のテーマから「森へ」を読み、その魅力について考えることを伝え、本時の学習のまとめをします。

板書を利用した授業の進め方(2/5時間目)

小6国語「森へ」板書の技術 板書
5時間目導入の板書 

1 本時の学習のめあてを確かめる

本時は、「森へ」を読んでその魅力について考えていくことを伝え、〈「森へ」のテーマについて話し合い、作品のみ力を考えよう。〉と板書します。

2 「森へ」を読み、テーマを考える

〈「森へ」のテーマは何だろう。〉と板書します。そしてテーマは、「作品から受け取ったメッセージ」と意味を付け加え、黄色チョークで書きます。

子供たちは自分で読みながら、心に残る言葉や文にサイドラインを引きます。その後、作品全体から受け取ったテーマについて話し合います。子供たちの発表をまとめながら、本文の叙述は白チョークで書き、そこから考えられるテーマは赤チョークで板書し、吹き出しで囲みます。

〈子供たちの考えるテーマ(作品から受け取ったメッセージ)の例〉
・命はつながっていく
・命を全うする大切さ
・生命力
・自然の力強さ、迫力、壮大さ
・成長し続けるエネルギーの強さ
・どんなに老いても無駄な命は存在しないということ
など

3 魅力について考える

〈「森へ」のみ力は何だろう。〉と板書します。魅力は、「心に残る言葉や気持ち」と意味を付け加え、黄色チョークで書きます。板書に書かれたテーマを伝えるための作品の魅力について考えます。子供たちが「森へ」を読みながら思った意見をまとめ、黄色い用紙にペンで書いていき、3つに整理します。

〈子供たちの感想の例〉
・読んでいてドキドキする(緊張感がある)
・その場にいるような気がした(臨場感や現実感がある)
・リアルを感じる
・筆者目線に立てる(動物たちの動き、森や木の気持ち)
・見たことのない景色なのに、分かりやすい(想像しやすい)
・自然の壮大さが分かる(スケールの大きさ、今まで見たことのない森)
・命・生命の壮大さも分かる(人の何倍もの長さ、受け継がれていく命)
など

次に、本文のどの言葉や文が魅力と感じたのかを発表させます。そして整理しながら、黄色い用紙の左側に板書し、吹き出しで囲います。擬人化や比喩、写真等の表現技法にも魅力があることを伝えながらまとめます。

4 学習のまとめをする

作品の魅力について、次は自分が選んだ本で考え、ブックトークにつなげていくことを伝え、本時の学習のまとめをします。

 

構成/浅原孝子

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