答えます! 小学校理科の “大学生が感じる疑問” 【進め!理科道〜よい理科指導のために〜】#27

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理科の壺/進め!理科道~理科エキスパートが教える、小学校理科の指導法とヒント~
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國學院大學人間開発学部教授

寺本貴啓
進め! 理科道(ロード)
〜よい理科指導のために〜

大学では、小学校の先生として理科の授業をどのようにやっていくかという教育法の授業があります。教員養成のカリキュラムとして必修になっているこの授業、いろいろ学習していくにつれ、新しい疑問がわいてくるようです。先生方にとっては基本的なお話になるかもしれませんが、理科の授業に不安がある方々の中には、同じような疑問をもつ方もいらっしゃると思います。
今回は、私が実際に大学生から質問された4つの質問について、こちらでもお答えしていこうと思います。

執筆/國學院大學人間開発学部教授・寺本貴啓


班のメンバー間で理解の差があり、分かっている子1人が主になって実験を進めている班を見かけたら、先生はどのように声をかけてあげますか。高学年になるほど、そのような状況が生まれやすいので少し心配です。

例えば班のメンバーが4人いたとして、その中の1人の子どもばかりが実験の操作をしている、というようなことを言われているように思います。そしてあなたは、1人の子どもだけでなく、多くの子どもたちに実験をさせたいと考えておられるのではないでしょうか。

確かにたくさん子どもたちがいるのに、一部の子どもだけが実験をやっている、他の子どもたちは見ているだけのお客さんになっている場合はよくあります。班の中のパワーバランスで1人の言い分が通ってしまうことや、中には遠慮して自分から実験の操作をしたがらないこともありますね。

私でしたら、「1人だけ実験をするのではなくて、他の人と交代でやってね」と言ってしまうと思います。ただ単にそう言うだけではなく、どのように交代するか、誰が何を担当するかまで決めます。そして、もし自信がない人がいても、周りの人がフォローしてあげるように声かけをしたいと思います。子どもたちだけで決めると、自信がない人は、あまりやりたがらない傾向にあります。先生がしっかりとフォローしてあげたいものです。


実験にて正しい数値を導けたのか(結果が正しく出せたか)は、評価の対象となるのでしょうか?

結論から言うと、「評価の対象になりません」。
正しい結果が出なくても、評価が下がるということはないのです。

逆に言うと「実験で正しい数値を導けたのか」を評価しようとしても、評価をする観点がないのです。「知識・技能」の観点でもありませんし、「思考・判断・表現」の観点でもありません。

なお、「実験において、技能がある人は正しい結果を導くことができるので、これは技能の観点では?」というように思われがちですが、ここでいう「技能」は、①実験技能(実験道具が正しく操作できる)があるか、②結果などを表やグラフにまとめることができるか、という2つで、実験結果の正誤には関わらないのです。

また、「思考・判断・表現」の観点では、①問題を見いだし表現できたか、②根拠ある予想が書けたか、③検証方法を考えることができたか、④考察を書く際、結果からより妥当な考察が書けたか、の4つですので、やはり今回の件は該当しません。

写真AC


子どもたちが実験をしている最中、先生は教室を回りながら歩いて実験を見ていると思いますが、子どもたちが行っている実験結果があまりにも違っているのに、とても納得したような会話が聞こえてきたら、その場で言うべきなのでしょうか。「もう一度実験をやってみようか」くらいの軽い声かけはしたほうがいいのでしょうか。さらに、子どもが実験に失敗した際に声かけは必要ですか? また、良い声かけはありますか?

私でしたら、実験中には言及せず、班の結果が出るのを待ちます。そして、結果が他の班と違っているという事実が出揃ったことをきっかけに、違った原因は何なのか、子どもたちに考えさせる機会とします。
誰か1人が間違えた、ということは、他にも間違えた子がいる可能性は十分にあります。
実験の操作が間違っているかもしれませんし、まとめ方を間違えているかもしれません。それを子どもたちから見付け出すようにしたいです。

ただし、それは時間に余裕があるときです。時間がなければ、具体的に「ここがおかしいよ」とか、「他の班とやり方が違うようだけど、他の班がやっている方法を見てきてごらん」といったことを言うと思います。要は限られた時間の中で、子どもたちに「教え込む」のではなく「考える機会を必ずつくる」ことを大切にしているのです。


単元の導入は最も重要な部分であると思いますが、寺本先生が小学生に教える時は基本的に教科書通りにしますか、自分で考えた導入を行いますか。また、最初の何年かは無理だと思うのですが、教師としての経験を何年か積んだ後には、導入は自分で考えられるようになったほうがよいのでしょうか。

教科書通りもありますし、そうでないこともあります。授業展開は教科書通りにすることが多いです(業者テストは教科書準拠なので、教科書と大きく離れる内容は行わない)。

教科書通りにしないことが多いのは、導入場面での教材の工夫や、先生が話す言葉の内容です。これらは、本屋さんに売っている教師用の授業づくりの本にも、授業の工夫がちりばめられた授業の仕方が書いてありますので、参考になります。

若いうちは、各教科の凄腕先生の授業をマネてみるところから始めました。ただ、単に方法をマネしても、気配りが足りなかったり、声かけが不足していたりして、思った通りに授業ができません。そのような失敗を繰り返すことで、自分の力量や、指導の問題点がよく分かります。すべてオリジナルの授業をする必要はないと思います(教科書も結構検討してつくられています)。いろいろな授業の方法を、試してみるといいと思いますよ。

「進め!理科道」は、隔週金曜日に更新いたします。

「このようなテーマで書いてほしい!」「こんなことに困っている。どうしたらいいの?」といった皆さんが書いてほしいテーマやお悩みを大募集。先生が楽しめる理科授業を一緒に作っていきましょう!!
※採用された方には、薄謝を進呈いたします。

寺本貴啓

<著者プロフィール>
寺本貴啓●てらもと・たかひろ 國學院大學人間開発学部 教授 博士(教育学)。小学校、中学校教諭を経て、広島大学大学院で学び現職。小学校理科の全国学力・学習状況調査問題作成・分析委員、学習指導要領実施状況調査問題作成委員、教科書の編集委員、NHK理科番組委員などを経験し、小学校理科の教師の指導法と子どもの学習理解、学習評価、ICT端末を活用した指導など、授業者に寄与できるような研究を中心に進めている。

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