身近にある “あれ?” から始まる理科 【理科の壺】

連載
理科の壺/進め!理科道~理科エキスパートが教える、小学校理科の指導法とヒント~

國學院大學人間開発学部教授

寺本貴啓

理科の醍醐味は、不思議に思ったことを見たり触ったりして、自分が納得するまで調べられる点にあります。特に外に出て、自然の中で遊んでいると、これまで見たことのない物事に出合います。子どもたちは、そうしたことをよく調べることで成長していくと言えます。
“あれ?”という感覚が、子どもから出てくれば成長に直結しますが、先生から “あれ?” と思うように働きかけ、成長を促すのも効果的です。これまで気付かなかったことに注目させ、その自然の世界に入り込ませるのです。優秀な先生たちの、ツボをおさえた指導法や指導アイデア。今回はどのような “ツボ” が見られるでしょうか?

執筆/佐賀県公立小学校教諭・秀島 哲
連載監修/國學院大學人間開発学部教授・寺本貴啓

身近にある “あれ?”

先生方は理科の授業が好きですか? 小学生の頃、理科の授業は好きでしたか?

私は、小学生の頃から理科の授業が大好きでした。今、先生になり、私自身は子どもの頃どうして理科が好きだったのだろうと考えました。当時は、家の前の川でザリガニ釣りをしたり、近くの田んぼでカメを捕ったり、ナマズを飼育したりと、生き物大好き少年でした。生き物についてたくさん学べること。これも理科の授業が好きだった理由でした。もう一つは、観察・実験です。“あれ、なんで?” と思ったことを友達と一緒に自分たちの力で解決していくこと、これが楽しくて理科を好きになったのだなと感じています。

“あれ、なんで?” と思うことは、残念ながら昔の生き物大好き少年の私自身と比べると減ってしまったように思います。逆に言うと、子どもたちの世界は “あれ、なんで?”、“おやおや?”、“これはどうなるんだろう?” と色々な “?” が身の回りにたくさんあります。子どもたちの身近にある “あれ?” を一緒に見つけられるように、感覚を磨き続けたいなと願っています。
身近にある “あれ?” から始まる理科について2つご紹介します。

“あれ?” 1 食べている野菜は、根?葉?茎?実?

野菜と聞いて一番初めに思い浮かぶ野菜は何ですか? 私はピーマンです(特に理由はわかりませんが…)。単元の導入時、子どもたちにも1人1つずつ野菜の名前を言ってもらい、名前の挙がった野菜たちを、自由にグループ分けすることにしました。

出てきた意見で多かったのは、色や形に着目してグループ分けしたものです。
ところが、中には、こんな面白いグループ分けをした子どもがいました。それをみんなで共有します。

他の子どもたちは、はじめは不思議そうに見ていましたが、だんだんと「硬いのと、軟らかいの」、「地面の中にあるものと、外にあるもの」、「根っこと葉っぱだ」と、意図に気づきました。
小学校3年生の「身の回りの生物」の単元では、「植物の体は根、茎及び葉からできていること」を学習します。今回の実践では、単元の導入時に扱いましたが、単元終末に、これまで学んだことを生かして身近な野菜を分類することも考えられますね。

“あれ?” 2 芋虫たちは住処が違う?

これは学校のある地域によって異なると思いますが、私がこれまで勤めてきた学校では、春先にツマグロヒョウモンというチョウの幼虫が花壇で見られるようになります。学級園で育てているキャベツにはモンシロチョウの幼虫がいます。でも、同じところで異なる種類の幼虫を見かけることはほとんどありません。どうしてだと思いますか?
生き物を飼育することは“あれ、なんで?”の連続だと思います。
教室で幼虫を飼育するとき、モンシロチョウの幼虫があんなに美味しそうに食べていたからと、ある子がツマグロヒョウモンの虫かごにキャベツを入れました。しかし全然食べてくれません。
幼虫によって、食草が異なるからです。生き物を飼育することは、生き物がそれぞれに周辺の環境と関わって生きていることを学ぶ機会となるでしょう。

普段の生活の中にも理科の授業につながるヒントが隠れているかもしれません。理科の授業を考えるときはもちろん、そうでない時にも身近にある“あれ?”を大切にできるといいなと思います。とても便利な社会となり、調べるとすぐに様々な情報を得られる今だからこそ、身近な“?”を自分で解決できることを子どもと一緒に楽しみたいと思います。

イラスト/難波孝

「このようなテーマで書いてほしい!」「こんなことに困っている。どうしたらいいの?」といった皆さんが書いてほしいテーマやお悩みを大募集。先生が楽しめる理科授業を一緒に作っていきましょう!!
※採用された方には、薄謝を進呈いたします。

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<執筆者プロフィール>
秀島 哲●ひでしま・あきら 佐賀市立西与賀小学校教諭。佐賀県小学校教育研究会理科部会常任委員。大学では、きっずサイエンスクラブに所属し、県内の小学生を対象に実験教室を開催。現在は、小学校理科を中心に日々実践研究を行う。


<著者プロフィール>
寺本貴啓●てらもと・たかひろ 國學院大學人間開発学部 教授 博士(教育学)。小学校、中学校教諭を経て、広島大学大学院で学び現職。小学校理科の全国学力・学習状況調査問題作成・分析委員、学習指導要領実施状況調査問題作成委員、教科書の編集委員、NHK理科番組委員などを経験し、小学校理科の教師の指導法と子どもの学習理解、学習評価、ICT端末を活用した指導など、授業者に寄与できるような研究を中心に進めている。


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