小学生の頃の思い出|絵本作家 あずみ虫さん
雑誌『教育技術 小一小二/小三小四/小五小六』では、月替わりで人気の高い絵本作家に表紙用のイラストの作画をお願いしていきます。本コーナーでは、その絵本作家さんに、小学生の頃の思い出を綴っていただきます。今回は、2019年11月号のイラストを担当していただいた、あずみ虫さんによるシマ猫との思い出です。
目次
初めての「私の猫」
昔から動物が好きです。 子どものころの夢は、当時テレビで放映していた「ムツゴロウ王国」で働くこと。
大人になった今は野生動物に惹かれ、アラスカを旅しています。
目標は野生動物の絵本を描くことです。
小学生のとき、一匹の茶トラのシマ猫が我が家の庭によく来ていました。私は親に内緒でエサをあげ、シマ猫は私になつきました。
当時、家でも猫を二匹飼っていたのですが、二匹とも母にべったりだったので、思えばそのシマ猫が初めての「私の猫」でした。
教室の外から鳴き声が・・・
ある日、小学校で授業を受けていると、教室の外から猫の鳴き声が聞こえてきます。声の方を見ると、なんと窓の外にあのシマ猫がいて、しきりにこちらに向かって鳴いているのです。
教室中「猫だ! 猫だ!」と大騒ぎです。私は先生に「ウチの猫です」と告げ、外に出ました。シマ猫は私の姿を見ると駆け寄ってきて、嬉しそうに喉をゴロゴロと鳴らします。
登校する私のあとを追って、学校までついて来てしまったのだと思いました。
私はひとしきりシマ猫を撫でたあと、校門で放し、そのまま教室に戻りました。
そしてそれっきり、シマ猫は家にも学校にも現れませんでした。
今でもときどき、あのシマ猫のことを思い出します。
あずみ虫
イラストレーター、絵本作家。1975 年神奈川県生まれ、茅ヶ崎市在住。安西水丸氏に師事。アルミ板をカッティングする技法で雑誌、書籍、絵本、広告などで活動中。おもな絵本に『おまつり』(白泉社)『わたしのこねこ』(福音館書店)など。講談社出版文化賞さしえ賞、産経児童出版文化賞美術賞受賞。
あずみ虫さんのHPhttp://azumimushi.com/
『教育技術』2019年11月号より