小3体育「表現運動(リズムダンス)」指導アイデア
文部科学省教科調査官の監修による、小3体育科の授業案です。1人1台端末を活用した活動のアイデアも紹介します。今回は「表現運動(リズムダンス)」の単元を扱います。
執筆/東京都公立小学校主幹教諭・諸星琢也
監修/国立教育政策研究所教育課程調査官・塩見英樹
秀明大学教授(元東京都公立小学校校長 元東京都小学校体育研究会会長)・橋本茂樹
目次
単元名
レッツエンジョイ! ダンシング
年間計画表
単元目標
●知識及び技能
リズムダンスの行い方を知るとともに、軽快なリズムに乗って全身で踊ることができるようにする。
●思考力、判断力、表現力等
自己の能力に適した課題を見付け、リズムの特徴を捉えた踊り方や交流の仕方を工夫するとともに、考えたことを友達に伝えることができるようにする。
●学びに向かう力、人間性等
リズムダンスに進んで取り組み、誰とでも仲よく踊ったり、友達の動きや考えを認めたり、場の安全に気を付けたりすることができるようにする。
授業づくりのポイント
表現運動は、自己の心身を解き放して、イメージやリズムの世界に没入してなりきって踊ることが楽しい運動であり、互いのよさを生かし合って友達と交流して踊る楽しさや喜びに触れることのできる運動です。
中学年は「表現」及び「リズムダンス」で内容を構成しており、「リズムダンス」では、弾んで踊れる軽快なロックやサンバのリズムの曲や、いろいろな速さや曲調の異なるロックやサンバのリズムの曲に乗って、全身で即興的に踊ったり、友達と自由に関わり合って踊ったりして楽しく踊ることをめざします。
その際に、ロックやサンバのリズムの特徴を捉え、体の各部分でリズムをとったり、へそ(体幹部)を中心にリズムに乗ったりして、全身で踊ることができるようにしていきます。
また、より楽しく行うために、自己の課題を見付け、その解決のための活動を工夫するとともに、誰とでも仲よく踊ったり、友達の動きや考えを認めたり、場の安全に気を付けたりすることができるように指導することも大切なポイントです。
本単元では、単元全体を通して、ロックやサンバのリズムに乗って即興的に踊る時間を十分に確保します。学習を進めていくなかで、教師とともにリズムの特徴を捉えながら複数の曲で踊ったり、変化をつけて踊ったりすることに取り組み、リズムダンスの面白さを豊かに味わえるようにしていきます。
子供たち一人一人が「いつでも どこでも 誰とでも」、進んでリズムダンスに取り組めるようにしていきましょう。
1人1台端末を活用したアイデア
1人1台端末を使って、自己の踊りを撮影したり、資料を見て動きのポイントを確認したりできるようにしていきます。
動画を撮影しておくことで単元の序盤と終盤での踊りの変容を比較することや、1時間の学習内での変容を確認することができます。
また、アプリなどを利用して、学習カードに動画を貼り付けてまとめることも有効です。毎時間のふり返りで活用しましょう。
単元計画(例)
習得…リズムに乗ることや全身で踊ること、リズムを変化させることを習得する。
活用…習得の時間に身に付けたリズムの乗り方や踊り方で、2~3人で即興的に踊る。
【留意点】
「リズムダンス」は、第3学年と第4学年の子供の実態に応じた指導がより適切に行われるよう、内容の取扱いに偏りがない限り、中学年のなかで弾力的な扱いを工夫することが大切です。学級の子供の実態に応じて、誰もが安心して取り組むことができるように、前学年での学習との円滑な接続を図るように計画をしましょう。
第3学年では、第2学年までに学習している「表現リズム遊び」での活動を取り入れながら、ロックとサンバのリズムの特徴を捉えて、即興的に踊る楽しさや喜びに触れることができるようにしていきましょう。
授業の流れと指導のポイント
楽しく運動をしよう
めあて
やってみよう! ロックとサンバのリズムに乗ってリズムダンスを楽しもう。
授業の流れ
1 学習の見通しをもつ。
2 本時の課題を確認する。
3 準備運動(心と体をほぐす運動)をする。
4 リズムダンスをする。
5 学習のふり返りをする。
授業のポイント
誰もが安心して学習に取り組めるように、低学年での「表現リズム遊び」との円滑な接続を図りながら学習を進めましょう。
中学年のはじめは、子供たちが聞き慣れた曲やリズムの特徴を捉えやすい音楽を選びましょう。
まずはリズム遊びで行った動きや心と体をほぐす運動で行うペアやグループでの動きを通して、全身で弾んで踊る楽しさに触れられるようにしましょう。教師が音楽に乗って踊り、心からリズムダンスを楽しむ姿を見せることも重要です。
そして、どんどん子供たちの動きを称賛していくようにしましょう。「いつでも どこでも 誰とでも」を合言葉に、まずは一人一人の「やってみる」を大切にして、ロックやサンバのリズムに乗って即興的に踊る時間を十分に確保しましょう。
(1)運動遊びとの関連
低学年の学習では、軽快なリズムの曲でへそ(体幹部)を中心に、様々な動きでリズムに乗って踊ることを楽しんできています。
第3学年では、運動遊びとの円滑な接続を図れるように、低学年でのリズム遊びの学習をふまえて学習を進めていく視点をもつとよいです。
子供が聞き慣れた曲やリズムの特徴を捉えやすい音楽を選び、リズムの特徴を体で感じながら、低学年のリズム遊びで行った動きや、心と体をほぐす運動で行うペアやグループでの動きをリズムに乗って行う活動を通して、全身で弾んで踊る楽しさに触れられるようにしていきましょう。
・体でじゃんけん
基本のじゃんけんから、クラスやグループの体じゃんけんをつくる。その際、動物などに例えたものを考え、体の各箇所を動かすと、多様なじゃんけんになる。
・猛獣狩りに行こう
スタンツなどで使用される「猛獣狩りにいこう」のリズムに乗って、いろいろな動物に変身していく。このとき、子供たちは教師の動きを真似しながら、大きな動きや様々な動きが経験できるようにする。
・2人組でなかよく
2人組で手をつないだり、馬跳びしたり、くぐり抜けたりする動きなどを続けて行う。
・ジェンカ
友達と一緒にリズムに合わせて、じゃんけんをしながら列を増やしていく。
・ミラーごっこ
教師やリーダーの真似をする。教師やリーダーは大げさに動く。
(2)準備運動(心と体をほぐす運動)
けがの防止のために適切な準備運動を行いましょう。また、心と体を十分にほぐし、子供たちが表現しやすくなるようにします。運動に応じてゆったりとした曲や軽快なリズムの曲をかけて行います。
心と体をほぐす運動の例
・リズム遊び
音楽のリズムに合わせて、2人組で向かい合って両手をつなぎ、前後左右に動いたり、その場で回ったり弾んだりする。
・円形コミュニケーション
学級全体で輪になり、リズムに合わせて手拍子をしたり弾んだり、手をつないで移動したりする。
(3)安全のポイント(準備や片付け、見合いなどの約束事など)
安全に学習を進めることができるように運動のきまり、場や用具の準備の仕方などを確認しましょう。
運動のきまりの例
・周囲の安全を確かめてから踊りましょう。
・誰とでもペアやグループになって楽しく踊りましょう。
・友達の動きや楽しく踊るための考えを認めましょう。
場や用具の準備の仕方の例
・踊る場に危険物がないかを確かめて、見付けたら先生に知らせましょう。
・踊りに使う用具は、友達と一緒に準備や片付けをしましょう。
・安全に踊ることができるように服装などが整っているか、友達と確かめ合いましょう。
(4)いきいきと踊るために実態に合った題材(曲)の選択
リズムダンスは音楽との関係が深く、どの場面でどんな音楽をどのように使うのかを考えることはとても重要です。
①軽快なリズムで、全身で弾むような曲を選ぶ。
・子供の実態に合わせたリズムやテンポの曲
・上下左右に弾んで踊れる軽快なテンポのロックやサンバの曲
・リズムの刻みがはっきりしており、動きにアクセントを付けたり、手拍子を入れたりできる乗りやすい曲
②いろいろな速さや曲調の異なる曲を取り上げる。
・速いテンポ(走ったりスキップしたりできるテンポ)や、ゆっくりしたテンポ(歩いたり左右にゆれたりできるテンポ)の両方を含むもの
・曲調が違ったもの(ロック・サンバ・レゲエなど)を組み合わせて、同じ曲調に偏らない曲
(5)「楽しく運動をしよう」での活動例
リズムに乗って体を動かす行い方の例
まずは座って、教師や友達の顔を見ながらリズムに乗って体を動かしましょう。教師のリードに合わせて、ロックとサンバのリズムの特徴を知りましょう。徐々に動きを大きくして、スキップで弾んだりねじったり回ったりするなどの動きを組み合わせていきましょう。
友達と関わり合って踊る行い方の例
・教師の見本の踊りにいろいろな動きを加えて即興的に踊る。
・子供のなかからリーダーを決めて、その子供の真似をしながら踊る。
・互いの踊りを真似して、即興的に踊る。
1人がリーダーになり、もう1人は鏡のように真似をして踊る。途中でリーダーを交代する。
(ジャンプやステップなどの足の動きに、首・手・肘・肩・腕などを上下・左右・前後に動かす動きを合わせる)
【ロックのリズムの特徴】
「ウンタ・ウンタ」の後打ち(アフタービート)と「ンタ・ンタ・ンタ・ンタ」の弾みのリズム
・おへそを中心に上下に動かす。
・左右に跳んだりスキップで回ったり移動したりする。
※ねじる、回る、すばやく、ストップなどで変化をつける工夫をする。
【サンバのリズムの特徴】
「ンタッタ・ンタッタ」の2拍のなかにリズムの変化(シンコペーション)があるリズム
・おへそを前後左右に動かす。
・スキップやツーステップ、サンバステップで行う。
※手をウエイブさせるなどの工夫をする。
工夫してもっと楽しく運動をしよう
めあて
友達と関わり合いながら、動きを工夫して即興的に踊ろう。
授業の流れ
1 学習の見通しをもつ。
2 本時の課題を確認する。
3 準備運動(心と体をほぐす運動)をする。
4 リズムダンス(ダンス交流会)をする。
5 学習のふり返りをする。
授業のポイント
リズムの特徴を捉えた踊り方を工夫して、さらにリズムダンスを楽しみましょう。リズムダンスの動きの変化の付け方について、学習資料やICT機器を活用して理解できるようにしていきましょう。
また、友達と関わり合いながら自己の課題を解決できるように、ペアやグループなどで互いの動きを見合ったり、1人1台端末を有効に活用したりして運動に取り組めるようにしましょう。
完璧に踊ることや完璧な作品に仕上げることは意識せず、自分たちが楽しいと思える動きや見ている人が楽しいと思えるような動きをして楽しむことを大切にしていきましょう。