遠足や校外学習での整列のポイント~信号待ち・駅のホーム・電車の中~
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遠足や校外学習で何より気をつけなくてはならないのは、「子どもたちの安全」です。怪我や事故なく元気に学校に戻って来られることが、学校としても保護者としても一番の願いだと思います。次に気をつけるのは、「まわりの人に迷惑をかけない」ことです。多くの子どもたちを引率する際は、自分の学校の子どもたちのことだけでなく、まわりの人のことも考える必要があります。横断歩道の前で信号待ちをするとき、子どもをどう並ばせるのが安全か。電車に乗るとき、どう並ばせるのがまわりの人に迷惑をかけないか。松下先生が、これまで経験してきた失敗と改善策を紹介してくれました。
劇団俳優を経て、公立小学校の教壇へ。得意のダンス指導で日本一になったり、絵本作家にチャレンジしたりと、精力的な毎日を過ごす松下隼司先生。その教育観の底には、子どもも指導者も毎日楽しく、笑顔でありたいという願いがあるそうです。そんな松下先生から、笑顔のおすそわけをしてもらうコーナーです。
指導/大阪府公立小学校教諭・松下隼司
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1.2列で横断歩道を渡ると、クラス全員が渡り切れない
小さな交差点は、信号の切り替わりが早いです。すぐに青から赤になります。35人以上のクラスを担任したとき、2列で横断歩道を渡らせたところ信号が途中で赤になり、全員が渡り切れないことがありました。取り残された子どもを不安な思いにさせ、危険な目に合わせてしまいました。
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この失敗から、クラス全員が一度に横断歩道を渡り切るには、クラスごとに4列がいいと気づきました。
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4列にすることで、クラス全員が確実に交差点を渡り切れました。
しかも、クラスごとの先頭には担任の先生がいます。2列だと1番後ろの子どもからは担任が遠くて見にくいですが、4列だと1番後ろの子どもと担任との距離も短くなって見やすくなります(もし途中で赤信号になっても、後ろのクラスの担任が見てくれます)。
2.駅のホームに向かって4列だと、他の乗客の邪魔になる
駅のホームは狭いです。クラスの人数が多いほどスペースをとってしまいます。1クラス36人だと、4列で並ばせると1列あたり9人ずつになります。他の乗客のホームを歩くスペースが狭くなり、迷惑になってしまいます。
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この失敗から、ホームに向かって4列にするのでなく、電車の進行方向を先頭に4列にすると、他の乗客の迷惑にならないと気づきました。
しかも、2か所の乗降口を使うので、短時間で全員が乗車できます。
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3.同じ車両に複数のクラスが乗ると迷惑になる
電車の同じ車両に、複数のクラスで乗車してしまったことがあります。
他の乗客が乗るスペースがなくなったり、子どものおしゃべりが多くなったりして、他の乗客に迷惑をかけてしまいました。
この失敗から、クラスごとに乗る車両を分けた方がいいと気づきました。
また、電車内の1か所に子どもを集めて、騒がしくなってしまったこともあります。
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他の乗客に迷惑をかけないように1か所に集めて乗車させたことで、かえって子どもが騒がしくなる結果となってしまいました。子どもが密集するので、電車の少しの揺れでぶつかったり、ちょっかいをかけ合ったり、おしゃべりが止まらなくなったりしてしまったのです。
そこで、電車内は、背の順1列にしました。
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2列だと隣同士でのおしゃべりが多くなると思い、1列にしたのです。すると、確かにおしゃべりがなくなりました。でも、クラスの人数が40人近くいると、1列は長すぎました。教師から離れた場所にいる子どもの顔が見えません。教師が指示する場合も、大声を出さないと聞こえません。列の最後尾にいる付き添いの先生の負担も大きくなります。
この失敗から、電車内では背の順2列がいいと気づきました。
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教師の目線も、1列のときより子どもに届きやすくなりました。
ポイントまとめ
- 横断歩道では、クラス全員が渡れるように整列する。
(2列より4列の方が短時間で渡れる) - 駅のホームで電車待ちをするときは、他の人が歩けるスペースを確保する。
(ホームに向かって4列より、電車の進行方向に向かって4列の方がスペースが広くなる) - 電車内では、子どもを1か所に集めない。
(2列に整列すると子どものおしゃべりも減り、教師の目線も届きやすい)
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松下隼司(まつした じゅんじ)
大阪府公立小学校教諭。第4回全日本ダンス教育指導者指導技術コンクールで文部科学大臣賞、第69回(2020年度)読売教育賞 健康・体力づくり部門で優秀賞を受賞。さらに、日本最古の神社である大神神社短歌祭で額田王賞、プレゼンアワード2020で優秀賞を受賞するなど、様々なジャンルでの受賞歴がある。小劇場を中心に10年間の演劇活動をしていた経験も。著書に、『むずかしい学級の空気をかえる 楽級経営』(東洋館出版社)、絵本『ぼく、わたしのトリセツ』(アメージング出版)、絵本『せんせいって』(みらいパブリッシング)がある。
イラスト/したらみ