小4 国語科「お礼の気持ちを伝えよう」全時間の板書&指導アイデア

特集
1人1台端末時代の「教科指導のヒントとアイデア」

文部科学省教科調査官の監修のもと、小4国語科「お礼の気持ちを伝えよう」(光村図書)の全時間の板書例、発問例、想定される児童の発言、1人1台端末活用のポイント等を示した授業実践例を紹介します。

小四 国語科 教材名:お礼の気持ちを伝えよう(光村図書・国語 四上)

監修/文部科学省教科調査官・大塚健太郎
編集委員/大妻女子大学家政学部児童学科教授・樺山敏郎
執筆/神奈川県相模原市立双葉小学校・荒木昭人

1. 単元で身に付けたい資質・能力

本単元では、手紙を書くという言語活動を通して、伝えたい内容を意識しながら段落をつくるなど、文章の構成を工夫する力を付けます。

手紙を書くということは相手や目的が明確であり、それに伴って内容や文章の書きぶりも決まってきます。そこで、本単元においては、「学校生活で関わった方に対してお礼の手紙を書く」という必然性のある活動を設定し、目的を意識しながら内容や構成を考えていくようにします。

さらに、自分が書いた文章に対して読み手がいるという状況から、書いた文章の間違いを正したり、相手や目的を意識した表現になっているかを確かめたりする等、推敲することができるようにします。

2. 単元の評価規準

評価規準

3. 言語活動とその特徴

案内状、御礼状、招待状、年賀状、暑中見舞い等、手紙には様々な種類があります。
バースデーカードやクリスマスカードも、手紙と考えることができます。
学校生活の中で子供たちは、例えば生活科の学習で園児に招待状を書いたり、地域の町探検でお世話になった方にお礼の手紙を書いたりした経験があるかもしれません。
また、国語ではアーノルド=ローベル作の「お手紙」を読み、手紙を書いたりもらったりすることについて考えた子供も多いことでしょう。他者とコミュニケーションを取り合う方法としてメール・SNSが隆盛のこの時代においても、相手や目的を明確にした上で、どのような内容・構成にするのかを考えて文章を書くという経験をすることが重要です。

種類にもよりますが、手紙には型があります。「初めのあいさつ」「本文」「むすびのあいさつ」「後づけ」が一例です。住所や宛名の書き方等にきまりがあることも特徴の一つです。このような型やきまりごとを知り、言語活動を行う際にいかしていくことが大切です。

4. 指導のアイデア

〈主体的な学び〉 手紙を書く相手や目的を明確にした言語活動の設定

書くことの学習においては、対象や目的を明確にすることが重要です。
本単元では、実際に子供が関わった方を対象に、「お世話になったことに対しての感謝の気持ちを手紙で伝える」という目的を設定します。「自分たちのために学校外の方が動いてくれた」という事実と子供たちが向き合うことで、「感謝の気持ちを伝えたい」という気持ちが高まります。

ここでは、学校生活のどのような場面と今回の学習を関連させて単元を設定するかということが大切になります。他教科や総合的な学習の時間、さらには行事との関連も含め、手紙を書く相手やその目的が明確になるようにしましょう。

さらに、学習の最後に振り返りを行う際は、今回の学習で付いた力がどんな場面でいかせるかを考えることで、学習と生活を結び付けることにもつながります。学習を通して付いた力を確認した後、手紙を書きたい相手や目的を思い浮かべることが有効な手立てとなります。

〈対話的な学び〉 自分の文章と友達の文章を比べ、気付いたことを伝え合う時間の設定

本単元では、同じ相手に同じ目的で手紙を書く活動を設定しています。
しかし、手紙を送る相手に対して感じていることは、一人一人少しずつ異なります。さらに、それを言葉で表現していくと、より大きな違いが出てきます。

そこで、手紙の下書きをする時間や清書を書く前に文章を確かめる時間等に、友達が書いた文章と自分の文章を比較する機会を設けます。
比較を行うことで、共通点や相違点が明らかになるため、自分の手紙を改善するポイントを発見できたり、友達の手紙のよさに気付くことができたりします。比較する際は、対象となる文章だけでなく、その文章を書くために使ったメモを補助資料として扱ったり、書き手が工夫したことを説明したりすることが重要です。

〈深い学び〉 付いた力を自覚し、実生活での活用・発揮を意識する振り返りの設定

単元を通して身に付けた力を、他教科・他領域、さらには実生活で活用したり発揮したりできるようにすることは、大変重要です。本単元においては、身に付けた力だけでなく、「手紙を書く」という言語活動についても学校生活の様々な場面で活用することができるという特徴があります。

そこで、単元の終末段階では、これまでの学習を振り返り、「単元を通して身に付いた力」について学級全体で確認する機会を設けます。
単元を通して身に付いた力を自覚するためには、授業で実際に取り組んだ手紙の下書きや手紙を書くために使用したメモ、さらには友達からもらったコメント等を読み返しながら、学習を振り返ることが重要です。
そのためにも、学習の履歴を確認する資料を見返すことのできる環境を整えておく必要があります。ワークシートをノートにまとめて貼り付けたり、資料を電子化しドライブ機能を活用して保管したりする等、実態に応じた工夫を行いましょう。

また、単元終末の振り返りでは、「学習したことをいかせそうな場面」について考えることも有効です。身に付けた力を自覚するとともに、その力を活用・発揮する場面を想定することで、学んだことをいかそうとする態度を育成することにもつながります。

5. 1人1台端末活用の位置付けと指導のポイント

(1)相手のことや出来事を想起するために、蓄積した情報を活用する。

「手紙を書く」という言語活動において、「特定の相手に対して伝えたいことがある」ということが重要になります。特に「伝えたいこと」を明確にすることで子供の学習に対する意欲が高まり、主体的に取り組む姿が期待できます。

そのために、1人1台端末やオンライン上のドライブに保存した「手紙を書く相手に関する情報」を活用する方法が考えられます。

例えば、子供が相手と関わった際の写真や動画を視聴することで、相手意識や目的意識を高めたり、手紙の内容を検討する際の資料として利用したりすることが可能です。
写真や動画は、教師が準備したものを子供に提供するのもよいですが、子供自身が記録したデータ等がある場合は、それらを積極的に活用するのも大切です。いずれにしても、他教科・他領域や行事等で手紙の相手と関わる際には、本単元との関連を想定し、様々な方法でその関わりの様子を記録しておくことが必要となります。

(2)端末で下書きを書き、文章を見直して修正する。

本単元において、実際に相手に送る手紙については手書きを想定しています。
しかし、下書きについては1人1台端末を利用する方法が考えられます。端末を活用して下書きをする際は、ワープロソフト等を利用します。ワープロソフト等のメリットとしてまず挙げられるのは、「文章の修正が容易」だということです。
下書きの際は、「相手に感謝の気持ちが伝わる文章を書く」という目的と照らし合わせ、よりよい文章にすることを目指します。そのためには、「書く→見直す→修正する」という流れで下書きに取り組むことが必要です。特に「修正する」場面で重要となる文章の書き換えはもちろん、言葉の挿入や削除も簡単に行うことができます。

もう一つ挙げられるのは、「文章の共有が容易」だということです。
端末を利用して下書きを行った場合は、文章を読み合う相手に対してデータを共有することで、読み合う活動を簡単に設定することができます。さらに、複数の相手とのデータ共有が可能なため、短時間で複数の下書きを読み合うことができます。

一方で、タイピングスキルが十分に習得できていない場合も考えられます。その際は、手書き入力機能や音声入力機能を併用することで、より効率的に下書きをすることにつながります。

6. 単元の展開(5時間扱い)

 単元名: お礼の気持ちを伝えよう

【主な学習活動】
・第一次(1時
① 学習の見通しをもつ。
 ・誰に何のお礼を伝えるのかを決める。
学習課題:お礼の気持ちが伝わる手紙を書こう
 ・手紙を送る相手との関わりを想起する。

・第二次(2時3時4時
② 手紙の型に沿って内容を考える。
 ・「初めの挨拶」「本文」「結びの挨拶」「後づけ」という手紙の型を確かめる。
 ・何に対してお礼を言いたいのかを明確にするため、詳しく書き出す。〈 端末活用(1)〉
③ 手紙の下書きを書く。〈 端末活用(2)〉
④ 下書きを読み返して修正し、清書する。〈 端末活用(2)〉

・第三次(5時
⑤ 学習を振り返る。
 ・手紙で気持ちを伝えることのよさを話し合う。
 ・身に付けた力を押さえる。

全時間の板書例、発問例、児童の発言例

【1時間目の板書例 】

1時間目の板書例

単元の導入では、子供が「手紙を書く・もらう」という経験を想起することによって、「手紙を書いたりもらったりすることは、自分たちの生活とつながっている」ということに気付くことが重要です。
そうすることが、手紙を書きたい相手、手紙を書く必要がある相手を自分たちで決めたり、手紙を書くための学習計画を主体的に立てたりすることにつながります。

子供の関心を高める手立てとしては、教師がもらった手紙を実際に見せたり、手紙を書いた経験について話をしたりすることも有効です。

< 教師の発問、児童の発言例 >

みなさんは今までに手紙を書いたり、もらったりした経験はありますか。

あります。

どんな手紙を書いたり、もらったりしましたか。

一年生のときに、生活科の学習で、幼稚園の子たちを学校に招待するために、招待状を書きました。

二年生のときに、野菜のお世話の仕方を教えてくれた野菜名人の◯◯さんにお礼の手紙を書きました。そうしたら、◯◯さんはお返事の手紙をくださいました。

私は、去年の誕生日に友達からプレゼントと一緒にお祝いの手紙をもらいました。

お正月に、習い事の先生から年賀状をもらったので、私も年賀状を書いて送りました。

多くの人が手紙を書いたり、もらったりした経験がありますね。手紙には、「相手に気持ちを届ける」という特徴があります。皆さんには、手紙を書いて気持ちを届けたい相手はいますか。

昨日、総合的な学習の時間に学校に来て和菓子のことを教えてくれた職人さんたちに、「ありがとうございました」という気持ちを伝えるために、お礼の手紙を書きたいです。

私もその意見に賛成です。お店の準備で忙しい中、私たちのために資料まで準備をしてくれたことについて、お礼をちゃんと伝えたいです。

わかりました。それでは、これからの学習のめあてを「総合的な学習の時間に、和菓子のことを教えてくれたお店の人たちに、気持ちが伝わるように工夫をして、お礼の手紙を書こう。」にしましょう。


【2時間目の板書例 】

イラスト/横井智美

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