小6体育「ボール運動(ゴール型)」指導アイデア②

特集
【文部科学省教科調査官監修】1人1台端末時代の「教科指導のヒントとアイデア」
小6体育「ボール運動(ゴール型)」指導アイデア  バナー

文部科学省教科調査官の監修による、小6体育科の授業案です。1人1台端末を活用した活動のアイデアも紹介します。今回は「ボール運動(ゴール型)」の単元を扱います。

執筆/品川区教育委員会指導主事・石原朋之
監修/国立教育政策研究所教育課程調査官・塩見英樹
   品川区教育委員会統括指導主事 ・唐澤好彦

単元名

「サッカー」~キック&ダッシュでゴールを目指せ~

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単元目標

●知識及び技能
サッカーの行い方を理解するとともに、ボール操作とボールをもたないときの動きによって、簡易化されたゲームをすることができるようにする。
●思考力、判断力、表現力等
ルールを工夫したり、自己やチームの特徴に応じた作戦を選んだりするとともに、自己や仲間の考えたことを他者に伝えることができるようにする。
●学びに向かう力、人間性等
サッカーに積極的に取り組み、ルールを守り助け合って運動をしたり、勝敗を受け入れたり、仲間の考えや取組を認めたり、場や用具の安全に気を配ったりすることができるようにする。

授業づくりのポイント

ボール運動は、ルールや作戦を工夫したり、集団対集団の攻防によって仲間と力を合わせて競い合ったりする楽しさや喜びを味わうことができる運動です。

ゴール型では、攻守が入り交じったなかで、ボール操作とボールをもたないときの動きによって得点を競い合うことを課題としたゲームです。

授業づくりでは、攻撃側にとって易しい状況のなかでチームの作戦に基づいた位置取りをするなどの攻守入り交じった簡易化されたゲームや陣地を取り合う簡易化されたゲームをすることが課題となります。

例えば、攻撃側プレーヤーの数が守備側プレーヤーの数を上回る状態をつくり出すことにより、攻撃しやすく、また得点が入りやすくなるようにルールを工夫することで、作戦を生かしやすくすることができます。

また、チームを構成する一人一人のよさから、チームの特徴を捉え、その特徴に応じた作戦を選べるようにします。

〈感染症対策〉
授業を行う際には、地域の感染状況に応じて、以下の新型コロナウイルス感染症対策を講じることも考えられます。
・子供たちに授業前後の手洗いを徹底する。
・決まったグループで活動し、対戦チームを固定する。
・活動中は不必要に大声を出さないようにする。
・集合、整列時は子供どうしの適切な間隔を確保する。 など

単元計画(例)

小6体育「ボール運動(ゴール型)」指導アイデア 単元

工夫してもっと楽しく運動をしよう

自己やチームの特徴に応じた作戦を選び、サッカーをもっと楽しもう!

自己やチームの特徴に応じた作戦を選ぶことで、さらに協力したり、チームの課題を意識したりしてゲームができるようにしていきます。ゲーム→ふり返り→ゲームの流れで学習を進め、チームの課題を解決する学習を進めていきます。

チームの作戦や課題に応じた練習の例

子供たちが学習の進め方、自己やチームの特徴や課題を十分理解できていれば、準備運動やゲームにつながる運動の一連の流れをチームに任せることも考えられます。子供どうしのやり取りを促し、主体性やチームの仲間意識を高めることができます。

 

・ナンバリングパス
ゼッケン番号順に声をかけてパスを回していく。慣れてきたらパスをした相手の位置へ動くなど、動きを入れながら行う。仲間のいる場所をねらってボールを蹴る力やボールを止める力を高める。

小6体育「ボール運動(ゴール型)」指導アイデア  図

・3対1
コーンとバーを使い、360度どこからでもシュートをしてよいゲーム。オフェンス3人程度に対し、ディフェンス1人。ボールは1つ。コーンバーなどをどちら側からでも通過することができたら1点。ねらって蹴る力やボールをもたないときの動きが身に付く。

小6体育「ボール運動(ゴール型)」指導アイデア  図

・シュートゲーム
3人のオフェンスはペナルティエリアの線上に立つ。2人のディフェンスは1人がボールを投げ、もう1人がキーパーになる(※1)。
オフェンスの1人がボールをキープし、ほかの2人はフリーでパスが受けられるように動く。その際、パスを受けたらすぐにシュートが打てるように意識して動く。ディフェンスはシュートをできるだけ打たせないように守備をする(※2)。
1分間で何点取れたのかをチームで競うゲーム。ボールを運ぶ力やねらってシュートやパスする力が高まる。

小6体育「ボール運動(ゴール型)」指導アイデア  図
小6体育「ボール運動(ゴール型)」指導アイデア  イラスト
小6体育「ボール運動(ゴール型)」指導アイデア  図

チームの課題に応じた練習で大切なことは、練習に「意味」をもたせていくことです。

チームの課題は「パスがつながらない」「ドリブルでボールを運べない」「得点が入らない」など、ゲームの様相から生じてきます。

チームが課題に気付くことができるような言葉がけを行い、子供たちが課題の解決の仕方(練習方法)を選択できるようにしていくことがポイントになります。

 


ゲーム→ふり返り→ゲームの流れ

1ゲームを「ゲーム→ふり返り→ゲーム」の流れで行います。

ゲームの間にふり返りを入れるのは、作戦の実施状況を確認したり修正したりすることで、ゲームの質を高めることにつながります(1ゲーム中の「PDCA」サイクルの確立)。

ゲームとゲームの間のふり返りは、「1~2分」のチームタイムを設定して、客観的な視点(動作や言葉、絵図、ICT機器)を根拠にチーム内で互いに伝えるようにします。

ゲームに参加しなかった仲間は、コートの外から見た状況について、ICT機器を活用しながらチームにフィードバックを行うことも考えらえます。

1人1台端末の活用アイデア

対話的な学びを進めていく工夫として、紙ベースではなく学習資料や学習カード、その時々の映像記録をタブレット端末に入れておくことで、仲間のよさを見付けたり、作戦を話し合ったりしながら、情報をチームで共有することができるようにします。

小6体育「ボール運動(ゴール型)」指導アイデア  イラスト
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ナイスプレイカード
※ダウンロードはこちら

 


チームの特徴に応じた作戦を選ぶための学習カード例

簡単な作戦を提示し、子供たちが選べるようにします。○○作戦など、ネーミングはチームの特徴に応じて決めると意欲が高まります。

シュートマップカード
ゲームに出ていない仲間が、どこからシュートを打ったか、入れば〇を、外れた場合は×で記録する。どこからシュートチャンスをつくれたか、どこからシュートの確率が高いかなど、客観的に判断できる。

小6体育「ボール運動(ゴール型)」指導アイデア  資料
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タッチ&シュートカード
ゲームに出ていない仲間が、ゲーム中、誰が何回ボールに触れ、シュートをしたか記録する。誰にたくさんボールが集まったり、シュートをしたりしているか、一人一人のよさを見付けるとともに、ゲームのふり返りの際にも活用できる。

小6体育「ボール運動(ゴール型)」指導アイデア  資料
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チームカード
チームの特徴を確認しながら、それぞれの役割を記入したり動きを書き込んだりしながら作戦について話合いができる。

小6体育「ボール運動(ゴール型)」指導アイデア  資料
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シュートマップカード、タッチ&シュートカード、チームカード
※ダウンロードはこちら

 

コラム 指導のワンポイント! ~運動領域と保健領域の関連~

小学校学習指導要領(平成29年告示)第9節 体育、第2 各学年の目標及び内容 第5学年及び第6学年の内容の取扱いにおいて、「各領域の各内容については、運動領域と保健領域との関連を図る指導に留意すること」が示されており、小学校学習指導要領(平成29年告示)解説体育編では、全身を使った運動を日常的に行うことが、現在のみならず将来、病気の予防の方法としても重要であることを理解することと、各運動領域において学習したことを基に日常的に運動に親しむことを関連付けるなど、運動と健康との関連について具体的な考えをもてるよう配慮することが大切であると示されています。

また、「令和3年度 全国体力・運動能力、運動習慣等調査」結果からは、「体育の授業が楽しい」と思う子供ほど「運動やスポーツが大切」と考えている割合が高いことや、「学習以外でテレビやゲームの画面を見ている時間」が少ない傾向が分かります。

日々の体育の学習を楽しく行うなかで、「運動」「食事」「睡眠及び休養」の健康三原則などの保健の学習との関連を図り、子供たちが体育で学習したことを休み時間や放課後、休日など日常生活の様々な場面で生かしていくことができるようにしていく視点も体育授業の大切なポイントになります。

 

小6体育「ボール運動(ゴール型)」指導アイデア グラフ
小6体育「ボール運動(ゴール型)」指導アイデア グラフ

 

小6体育「ボール運動(ゴール型)」指導アイデア グラフ
小6体育「ボール運動(ゴール型)」指導アイデア グラフ

 

小6体育「ボール運動(ゴール型)」指導アイデア①
「楽しく運動をしよう」はこちら

イラスト/みながわこう

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