#48 青春の1ページ【連続小説 ロベルト先生!】
今回は朝見鉄也先生の夢の回想シーンの続きです。中学生になった鉄也は、どんな少年時代を過ごしているのでしょうか。野球部での活躍や淡い恋の行方は……?
第48話 鉄也が見た夢②
中学生になった鉄也は、マンガ「ドカベン」や「キャプテン」の世界に憧れて、野球部に入った。
1年生ではひたすら校庭を走らされ、球拾いの毎日。それでも途中で諦めることなく何とかみんなについていった。そのおかげで、肥満児だった鉄也の体は人並みに戻っていった。
3年生が抜けて、2年生の後半からは部活の中心となった。しかし、鉄也は背番号12の補欠。
最初の公式戦である新人戦の1回戦。
もちろん鉄也はベンチを温めていた。6回裏まで0対0。最終回から鉄也はファーストの守備についた。
初めての試合出場で嬉しかった反面、緊張していた鉄也は、どうかこっちにボールが飛んでこないようにと祈った。
ツーアウトからフォアボールでランナーが出塁した。そして、次のバッターの打球がふらっとピッチャーとファーストの間に上がった。鉄也はフライを取りに行こうとしたが、ピッチャーが目に入り、取るのを譲った。打球はストンと地面に落ち、鉄也は慌てて打球を拾ったが間に合わず、ツーアウト一塁、三塁となった。
その後、ヒットを打たれて点が入り、結局試合は1対0で負けた。鉄也はチームメイトに合わせる顔がなかった。
鉄也は2年生の頃から、アニメの世界ではなく、ちゃんとした人間の女の子が好きになった。しかし、打ち明ける勇気もなく、ただただ…、見ていただけ…。
ところが3年生になって同じクラスになり、気持ちはますます高まっていった。親友に相談し、勇気を振り絞ってついに手紙で告白。
その結果は、好きでも嫌いでもなく見守ってください的な内容で、後から考えれば、彼女なりの優しさで傷つけずに断ったのかと思うのだが、鉄也はそんなことにも気がつかず、そのまま見守った。手紙を出してからはかえって意識して話もできなくなり、ひたすら見守った。
部活で体を鍛えるために、夜、彼女の家まで走った。青春の1ページとして捉えれば少しはかっこのいい話だが、今で言うストーカーと思われても全く不思議ではない。
そのまま中学校を卒業。彼女と鉄也は別々の高校に入学し、それでもしばらく鉄也は思い続けていたが、鉄也から何をするわけでもなく、片思いは自然に消滅した。
執筆/浅見哲也(文部科学省教科調査官)、画/小野理奈
浅見哲也●あさみ・てつや 文部科学省初等中等教育局教育課程課 教科調査官。1967年埼玉県生まれ。1990年より教諭、指導主事、教頭、校長、園長を務め、2017年より現職。どの立場でも道徳の授業をやり続け、今なお子供との対話を楽しむ道徳授業を追究中。