友達や下学年と絆を深める修学旅行
6年生の子どもたちにとって、一番の思い出になるであろう修学旅行。指導者としてねらいをもち、年間の学習の中に位置づけ、学級活動で子どもたちと一緒にめあてを決めて取り組みましょう。ここでは広島への旅行例をご紹介します。
目次
広島への修学旅行を例に考える
修学旅行のねらい
①集団生活に必要なルールやマナーなどを習得する。
②旅行先の自然・文化・歴史などに関して、見聞を広める。
③友達と寝食を共にし、これまで気づかなかった自他のよさに気づき、友情を深める。
【事前の活動】
●昨年度の活動を参考に
昨年度と旅行先やコースが同じ場合、映像や写真を見せましょう。どのような活動をするのか、具体的に説明することで、意欲を高めることができます。しかし、現地で味わえる驚きや感動は、事前の説明では控えておくことも大切です。また、保護者説明会でも活用すると、分かりやすく伝えることができます。
●修学旅行実行委員会
実行委員を中心に、修学旅行の企画や運営を進め、主体的な取り組みができるよう指導していきましょう。
・学年全体のめあての決定
・出発式、入所式、帰校式のあいさつ
・しおりの作成
・歌集の作成
・レクリエーション(バスの中のゲーム、歌、クイズ。夜の集いの室内オリンピックなどの計画と司会進行)
●平和学習
一学期より、総合的な学習の時間や道徳の時間などに学習したことを、一人1冊の平和学習ファイルにまとめていくとよいでしょう。
・調べ学習(広島、原爆、大阪大空襲、平和記念資料館、佐々木禎子さん、佐伯敏子さんなど)
・文学教材学習(「ヒロシマに歳はないんよ」「ヒロシマの歌」など)
・音楽(「青い空は」「ふるさと」など)
●異年齢との交流を
総合的な学習の時間などに、修学旅行先の自然・文化・歴史などについて調べてきたことを、下学年の子どもたちに伝えましょう。そして、学校の最高学年である6年生として、修学旅行に行ってくるのだという自覚を育てましょう。
児童朝会で
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平和のつどい(各学年ごとに1時間ずつ)
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児童朝会で
●友達との人間関係づくり
・バスの座席
・見学グループ分け
・宿泊先での部屋割りなど
これらのグループ編成は、子どもたちにとって重要な関心事であり、学級づくりに大きな影響があるといっても過言ではありません。子どもたちに任せすぎて大きな混乱が生じないように、細心の注意が必要です。編成の方法を事前に子どもたちと話し合ったり、約束事を決めておいたりするとよいでしょう。
【当日の活動】
●聞き取り学習
宿泊先などで、原爆を体験された方からの聞き取り学習を行います。その恐ろしさや戦争のつらく悲しい思いを聞き、涙する子どもたちもいます。そして、私たちが、そのつらさや悲しさを語りつぐ大切さを感じ取るのです。
●家族への手紙
一日目の振り返りとして、各家庭にあてた絵手紙などを書きます。旅先で学んだことや楽しかったことなどを思い出して振り返ります。親元を離れて、命の大切さを学んだあと、保護者へ送るメッセージもよいでしょう。
【事後の活動】
●全校児童へと報告
児童集会などの時間を用いて、修学旅行報告会を行います。全校児童を代表して、修学旅行に行き、学んできたことを伝えましょう。映像を見せたり、詩の朗読をしたり、歌を歌ったりして報告します。五年生にとっては、次年度の修学旅行への意欲を高めることにつながります。
修学旅行報告会
●修学旅行壁新聞
修学旅行で楽しかったこと・感動したこと・友情が深まったことなどを新聞にまとめます。グループや個人などで、思い出して記していくことで、振り返り学習ができます。保護者向けに書くのか、下学年に向けて書くのか、相手意識をしっかりもって書くことが大切です。
●学習参観で
修学旅行で学んだヒロシマについて、学習参観で保護者のみなさんに報告します。6年生全体で行うのもよいでしょう。よびかけ、歌、リコーダー、詩の朗読、作文の発表などで一時間を構成します。また、学習発表会があれば、「はだしのゲン」などをもとに台本化し、劇化して表現するのもよいでしょう。下学年の子どもたちに、ヒロシマをわかりやすく伝えることができます。
学習発表会
<参考>
『ヒロシマに歳はないんよ』佐伯敏子 ヒロシマ・ナガサキを考える会
『ヒロシマの歌』今西祐行 フォア文庫
『まちんと』松谷みよ子 偕成社
「青い空は」作詞/小森香子 作曲/大西進
「ふるさと」作詞/高野辰之 作曲/岡野貞一
『はだしのゲン』中沢啓治 汐文社
執筆/大阪府公立小学校教諭・藤岡愛子 イラスト/北澤良枝
『小六教育技術』2017年8月号増刊より