卒業式アイデア|主役は6年生!フロア全体がおめでとうのステージに

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「学校は好きではない」と言っていた子供たちを主役にする卒業式とは……? 
フロア全体を卒業ステージに設える取り組みを実践した、ある学校の卒業式をご紹介します。在校生や保護者、教職員に見守られるなか、6年生は胸を張って新たな第一歩を踏み出しました。

左)福岡教育大学教授・脇田哲郎 右)福岡県宗像市立河東西小学校教諭・山崎邦彦

子供による、子供のための卒業式

フロア全体を式場にする形態の卒業式とは、卒業生が在校生(5年生)、教職員、保護者、来賓の前を巡っていくというもの(図参照)。

なぜ従来型のステージを利用した卒業式ではなく、このような卒業式をしたのでしょうか。それには、複雑な事情がありました。

▼卒業会場図

この卒業式を行った宗像市立玄海東小学校は、学級崩壊ならぬ学校崩壊の状態で、保護者や地域住民、市会議員に至る多くの市民から学校を憂う苦情が教育委員会に多く寄せられていた学校でした。市が実施した学校状況調査では多くの子供が、「自分にはいいところがない」「学校は好きではない」と回答している状況でした。

そこへ教育委員会から校長として赴任したのが脇田哲郎校長でした。「かかわり」をキーワードとして学校の立て直しを図りました。子供相互のかかわりや、地域の人、もの、こととのかかわりを深める教育活動として、特別活動を中心に取り組むことにしました。

脇田校長の念頭にあったことは、6年生を1年間でどう育て、どう卒業させるかということだけ。他者とかかわる中で1年間を過ごした子供たちには、在校生(5年生)、教職員、保護者、来賓の方々にかかわっていただいたことに感謝して巣立っていくのが一番です。

地域住民や保護者から、「この学校の子はだめだ」と思われてきたという子どもたち。そんな状況を覆すような卒業式とは何かと考えた末に思いついたのが、子供による、子供のための卒業式だったといいます。

卒業式は学校行事の儀式的行事に当たるので、次のような活動のねらいと評価の視点をもって臨みました。

みんなに見守られるなか、堂々と胸を張って卒業する6年生

主なねらい

卒業生一人一人に、小学校6年間の課程を終えた喜びを味わわせ、母校の卒業生であるという誇りと、よりよい中学校生活への希望や意欲をもてるようにする。

主な評価の視点

  • 下級生が憧れる卒業式にするという目的意識をもち、堂々とした適切な所作を主体的に練習している(以上が事前における評価の視点)。
  • 式中の自他の所作が、下級生が憧れる堂々としたものになっていたかを振り返っている (事後における評価の視点)。

会場づくりは、すべての参列者が卒業生と向き合えるように、フロアの中心に向かって円を描くように席を配置すればOK。卒業生は在校生、教職員、保護者らに見守られながら会場を巡ります。

卒業式の会場

個々の呼びかけを物語として構成

卒業式の練習自体は3回のみ。1回目は全体の動きを確認、2回目は在校生を入れての流れの確認、3回目は教職員も入れてのリハーサルです。「かなり練習回数は少ないと思う」と話すのは山崎邦彦先生。

卒業式で行う別れの言葉(歌や呼びかけ)は、内容を自分たちで考えるので、卒業式に熱が入るというのが一番の効果です。子供たちは個々の呼びかけをうまく組み立て、ひとつの学級物語のように構成するという、ドラマティックな呼びかけを見せてくれました。

▼卒業証書授与の様子

卒業証書授与の様子
  1. 演台に行き、卒業証書を校長から受け取る
  2. 保護者の前に進み、これまで育ててくださったことへの感謝の気持ちを含めて一礼する
  3. 来賓の前まで進み、一礼する
  4. そこから、自分の席に向かって歩き、全体に一礼して着席する

ここが活動のポイント
子供による、子供のための卒業式だから「6年生が行う別れの言葉(歌や呼びかけ)の内容を子供たちが自主的に話し合って決めることがポイント」とは山崎先生。6年生には、堂々と胸を張って演台まで歩き、よい姿勢で卒業証書を受け取り、参列者に対して感謝の気持ちを込めて一礼をするという一連の所作を徹底して指導しました。

取材・文/高瀬康志

『教育技術 小五小六』2022年2/3月号より

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