小2国語「きつねのおきゃくさま」板書の技術

連載
見やすく理解しやすい「単元別 板書の技術」元京都女子大学教授・同附属小学校校長 吉永幸司監修
関連タグ
連載 見やすく理解しやすい 京女式 単元別 板書の技術  バナー

今回の教材はあまんきみこさんの「きつねのおきゃくさま」です。主人公のきつねの心情の変化を読み取りながら、物語に浸るという学習です。学習の方向性を決める初発の交流板書や言葉にこだわる板書、登場人物の心情を場面の移り変わりや出来事に沿って折れ線グラフにする板書など、様々な板書の工夫を紹介します。

監修/京都女子大学附属小学校特命副校長・吉永幸司
執筆/大阪府公立小学校教諭・岡本美穂

 

教材名 「きつねのおきゃくさま」(教育出版)

単元の計画(全3時間)

1 「きつねのおゃくさま」の読み聞かせを聞き、初発の感想を書く。
2 初発の感想を基に、登場人物や印象に残ったところについて話し合う。
3 主人公のきつねの心情の変化を読み取る(1場面の様子をきつねの行動を中心に読み取る)。
4 主人公のきつねの心情の変化を読み取る(2場面の様子をきつねの行動を中心に読み取る)。
5 主人公のきつねの心情の変化を読み取る(3場面の様子をきつねの行動を中心に読み取る)。
6 おおかみと戦うきつねの心情の変化を読み取る(4場面の様子をきつねの行動を中心に読み取る)。
7 きつねが「はずかしそうにわらって死んだ」理由について考える。
8・9 学習の振り返り

板書の基本

板書計画はあくまでも「計画」

初発の感想を書くのはなぜでしょうか。新任のときは、「書かなくてはいけないもの」との固定観念があったので、何気なく書かせていることが多かったように思います。ほかには、

・子供たちが、どのような感想をもったのかを知りたいから。
・先輩の先生に言われてなんとなく書かせている。
・指導書に書いてあったから。

など様々な理由からでしょう。

しかし、今は初発の感想を読むことをとても楽しみにしています。初発を読むことで、

・子供たちにどのような力が付いているのか。
・不思議に思っていること。
・こだわり。

などがわかるからです。そして、その初発を基に毎時間の「発問」づくりを行います。

それはすべて「楽しい国語」の授業をつくるためです。ここでいう「楽しい」というのは、「考えたい! 話し合いたい!」と子供たちが自然に思えるような授業にすることです。この「発問」が魅力的であればあるほど、子供たちは主体的に取り組むことが増えることでしょう。そして子供たちが主体的になれば、より話し合いが好きになります。話し合いが好きになれば、より深い学びにつながります。つまり、深い学びを達成できるかどうかの土台になるのは「発問」づくりだということです。

だからこそ、子供たちから出てきた疑問を学習課題にするために、私は子供たちがどこに疑問をもっているのかを初発の感想で必ずチェックします。そして、単元の最初に感想を交流する時間をとるようにしています。その際、板書では、気になったこと、疑問、深めたいことなどを整理するようにしていきます。するとその板書を見ることで、新たな発見が引き出される子供もいます。

板書のコツ(2/9時間目)

小2国語「きつねのおきゃくさま」板書の技術 板書
2/9時間目の板書

板書のコツ①  

今回のめあては「感そうをつたえ合おう。」としています。これは、初発を書いた後に子供たち同士で、わかったことや疑問を出し合いながら交流する中で、「発問」づくりにつないでいくための取り組みの1つです。そこから、子供たちから出てきた疑問をみんなで話し合いたい学習課題として授業を進めていきます。

まず、「むかしむかし、あったとさ」「とっぴんぱらりのふう」と黄色で板書しました。これは、昔話の構成を教えることにもつながります。その後、登場人物を確かめていく中で、ある子が「悪いきつね」と発表したことをきっかけにして、「ゆうかんなきつね」「世界一やさしいきつね」「どちらかわからない」「最初は悪いきつねだったが変わった」「やさしいきつね」ときつねのイメージについて交流していきました。そこで、みんなでこれから授業をしていくなかで、きつねに注目して考えていこうという方向性が生まれました。また、そのなかで、「変だな」「おかしい」と思った意見で「きつねは、はずかしそうにわらってしんだ」というところに注目する子も出てきました。そこで、ここについては「学習課題」としてみんなで今後考えていくことにしました。

板書のコツ②  

赤色チョークで「きつね」を囲んだのは、話し合いの中で、子供たちがこだわっていたからです。つまり「中心人物」はきつねだということを読み取っていることにつながっています。今回は複雑に書くのではなく、人物に焦点がいくようなシンプルな板書にしました。

そのためにも「チョーク」の活用はポイントとなります。

板書のコツ(6/9時間目)

小2国語「きつねのおきゃくさま」板書の技術 板書
6/9時間目の板書

板書のコツ① 

めあては、「きつねについて考えよう。」とざっくりとした内容に敢えてしています。おおかみと戦うに至って、どのくらいほかの動物を食べたいと思っていたのかについて考えるようにしました。

発問として「ひよこ・あひる・うさぎのことを食べようと思っていたのか、思い出してみましょう」と、挿絵を貼りながら発問しました。すると、「食べようと思っていたけど、ひよこの言葉で変わった」という意見が出てきました。ただ、「ひよこは、まるまる太ってきたぜ。」「あひるも、まるまる太ってきたぜ。」「うさぎも、まるまる太ってきたぜ。」という言葉に注目する子供も出てきたので、その部分は青色チョークで囲むことで、際立たせるようにしました。

同じように「食べたい」ときつねが思っていたのではなく、違いが出てきていること、変化に気が付くような板書になるように意識しました。そのために、「きつねお兄ちゃん」「やさしい」という言葉、そこから「親切」、最後は「神様」と、きつねの心を動かした言葉が出てきたときには赤色チョークで書くようにしました。ここから「きつねの変化」が読み取れます。

この言葉は、教材解釈を行うなかで大事にしてほしい言葉の1つでもありました。ある「言葉」から、みんなで考えを深めていく過程が「言葉にこだわる」授業の第一歩だと考えています。

板書のコツ② 

心情曲線を使った授業とは、登場人物の心情を場面の移り変わりや出来事に沿って、折れ線グラフにする授業です。まとめとして、食べたい思いを「心情曲線」で表現しました。

小2国語「きつねのおきゃくさま」板書の技術 板書
6/9時間目の心情曲線を使った板書

「お手紙」の授業のときや「かそこじぞう」でも、「気持ちメーター」などと言って書いていたときもありました。

この表現については子供が名付けるようにしていますが、ここで大事なことは「心情曲線」を書くことではなく、心情曲線で表す際の「根拠」です。この根拠を授業で交流し合い、最後に振り返りを書くことを大事にしています。

 

構成/浅原孝子

学校の先生に役立つ情報を毎日配信中!

クリックして最新記事をチェック!
連載
見やすく理解しやすい「単元別 板書の技術」元京都女子大学教授・同附属小学校校長 吉永幸司監修
関連タグ

授業改善の記事一覧

雑誌『教育技術』各誌は刊行終了しました