子供同士のトラブル時の保護者対応ポイント

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上級教育カウンセラー

八巻寛治

新学習指導要領で取り上げられたガイダンス機能の充実。子供が自らの考え方や学び方を主体的に確立していくことの支援を強化する目的があります。ここでは、子供同士がトラブルを起こした場合の保護者への対応について、具体的な場面を例に出しながら解説します。

執筆/ガイダンスを学級づくりに活用する会代表・八巻寛治

けんかする子どもたち

トラブルが見えにくくなる?

2年生の前半は、担任に不平不満を訴えたり、その子の態度を注意したくて言いつけに来たりする子が多いですが、2年生も後半になると、トラブルが見えにくくなることもあります。発達段階的に見ると、社会性を意識できる一方で、自己中心的な傾向も混在しているこの時期は、自分の思いがゆがんだ行動になって表れてくることもあります。

本当は仲良くしたいのに、その子の気を引こうと嫌がらせをしたり、些細なことで手を出したり、暴言を吐いたりすることもあります。2年生は、客観的に自分を見つめたり、自分の気持ちをうまく言葉で表現したりできないことから、突発的にトラブルが起こることが多いようです。

トラブルの要因と指導の難しさを確認してみましょう

トラブルの要因
□ 相手に自分の気持ちを言葉でうまく表現できない。
□ 誰彼構わず、何気なく、ついちょっかいをかけてしまう。
□ 言葉がきつく、相手が傷つくことを言ってしまう。

指導場面での難しさ
□ トラブルの状況や原因をはっきりと説明できない。
□ 事実確認の際に、話がそれたり、二転三転したりする。
□ 保身(自分を守りたい)の気持ちが強くなり、事実を歪曲してでも自己防衛しようとする。

「いじめ」に過敏に反応する保護者

2年生の子供は、友達にちょっかいをかけられたり、からかわれたりした時や、悪口を言われただけで、「いじめられた」と言ってしまう場合があります。当然その子が「いじめ」と感じれば、担任として適切に指導しなければなりません。しかし保護者は、我が子から「いじめ」と聞いただけでその言葉に過敏に反応し、我が子からの一方的な情報だけで判断しがちであることを認識しておきたいものです。

我が子がいじめを受けていると苦情を受けた時の対応・対処の前に

Aさんの母親から「娘がいじめを受けているので学校に行きたくないと言っています」という苦情の電話がありました。この時期にはどのようなことに配慮して対処すべきなのでしょうか?

子供が「いじめられている」と訴えると、教師も保護者も、自分の対応の仕方に何か問題があるのではないかと不安になります。

保護者から理解を得るような子供への指導の手順

保護者から問われたときに、どのように対応・対処したか、分かりやすく手順を伝えると不安を払拭するきっかけになります。

①当事者や双方の話をしっかり聴く。
(事実確認・意識のずれ・思い違い等)
       ↓
②教師が判断を言い伝えるのではなく、お互いの気持ち(感情)を表現できるようにコーディネートする。
       ↓
③しっかり謝る場面を設ける。
※何となく話の流れで済ませるのではなく、理由がはっきりし、子供自身が問題の所在に気が付くことができたら、互いに納得のいく謝罪の仕方を促し実行する。
※けんか両成敗はしないように気を付ける。
       ↓
④今回の件で分かったこと・気が付いたことを確認し、今後の望ましい言動を確認させる。

保護者からの苦情に応えるためではなく、Aさんも、他の子供たちも含めて子供の健全な成長のために動いている姿勢は貫きたいものです。

保護者から理解を得るような保護者への連絡の手順

電話や連絡帳でいじめの相談があった場合を想定して、「保護者から理解を得るような保護者への連絡の手順」を確認してみましょう。

①保護者からの主訴をしっかり聴き取り、返事をするための大まかな日程や時間(いつ頃まで時間が欲しい)等を伝える。
※保護者が感情的になっているときは、一端落ち着くまで時間を取り、受け止めるように話を聴くように心がける。当事者や双方の話をしっかり聴くこと、期限までに分かったことを伝える。
       ↓
②前述の「保護者から理解を得るような子供への指導の手順」を参考に事実確認をしっかり行う。
※担任の思い込みや推測を含めて話をしてしまうと、不信感を招いてしまうことにもなりかねないので、気を付けたい。
       ↓
③保護者が感情的になっているときや、事態が複雑なときなどは、連絡帳や電話は避け、保護者の表情や反応をつかみながら話ができるので直接会って話をする。
       ↓
④家庭訪問や面談をする際は、保護者の心理状態を確認した上で、話の筋を決める。
※中には、確認した事実を伝えると、急に感情的になって、我が子をかばったり、相手を非難しようとしたりするケースもあるが、一時的な場合が多いので、しっかり吐露するように話を聴くことがポイントになる。
       ↓
⑤確認した事実や指導した内容を伝える。
※子供同士のトラブルでは、関係した双方の保護者にどのように納得してもらえるような説明ができるかがポイントになる。困っていてしっかり相談したいと思っている保護者には手順を追って丁寧に。実際に何が起きたかの事実を知りたい場合は結論から伝えると、こじれずにすむことが多い。
        ↓
⑥今後の方針について話し合い、家庭の協力を得る。
※どちらが加害者・被害者の如何に関わらず、双方の保護者に、我が子にも相手の子にも、発達上の課題であることを理解してもらえるように働きかけ、家庭の協力を得る。


八巻寛治(やまき・かんじ)上級教育カウンセラー・ガイダンスカウンセラー・小学校教員ほか。エンカウンターミニエクササイズ、心ほぐしミニゲーム、課題解決のカウンセリングなどを活用した実践を紹介している。

『小二教育技術』2018年10月号より

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