職員研修で取り組んでみませんか?【赤坂真二「チーム学校」への挑戦 #26】

連載
赤坂真二の「チーム学校」への挑戦 ~学校の組織力と教育力を高めるリーダーシップ~
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上越教育大学教職大学院教授

赤坂真二

多様化、複雑化する学校の諸問題を解決するためには、教師一人の個別の対応ではなく、チームとしての対応が必須である。「チーム学校」を構築するために必要な学校管理職のリーダーシップとは何か? 赤坂真二先生が様々な視点から論じます。
第26回は、<職員研修で取り組んでみませんか?>です。

執筆/上越教育大学教職大学院教授・赤坂真二

ミドルリーダーの願い

今回は前回の続きです。教職大学院の授業で、現職院生に次のような課題を出しました。

みなさんの学校を「効果的な学校」にするための10の条件を、根拠を明らかにしながらプレゼンテーションしてください。

いくつかのグループに分かれて、2週間ほどかけて探究した後、発表してもらいました。前回は、そのうち3つを紹介しました。

⑴児童・生徒情報の共有
⑵管理職のリーダーシップ・ビジョン
⑶ビジョンの共有

これら3つから窺い知ることができるのは、学校経営における願いです。彼らは管理職の明確なビジョンを求めています。しかし、それは、自治体や諸団体の事情や都合ではなく、子どもたちの実態に立脚したものであってほしい、とのことでした。これは逆から見れば、子どもたちのためになるビジョンであれば、その実現に労を厭わない意志の表れでもあります。そして、それを職員で共有し、チームとして取り組みたいと思っていることがわかります。実に頼もしいリーダー候補生の姿に思えました。詳しくは、前回の拙稿にお目通しをいただければありがたいです。

受講生はそのほとんどが小中学校の10年以上の経験者で、中には地域の自治体からエキスパート教員として認定されている者もいました。いずれは学校管理職になることが望まれている面々です。所属校ではミドルリーダー、またはそれ以上の仕事を任されています。彼らが現時点で望む学校の姿を知ることができるだろうと思います。本稿では、残り7つの項目を紹介します。

10の条件、4~10

⑷学び合う教師集団

学校改善には、数人のスーパー教師ではなく、職員の総和としての力量が求められる時代です。彼らは、実体験からも、校内の力量が高い教師の知識と技術が伝搬しないことに課題を感じていました。児童・生徒情報、管理職のビジョンだけでなく、指導に関する知識・技能の共有が必要との認識です。それを実現するのは、職員同士の学び合う関係であり、信頼関係であるとの認識です。

⑸リフレクションの時間

学校は定期的な振り返りがないままに、次のことが始まります。学校評価と言いながら、うまくいかなかったことを所定の用紙に記入して終わりということがよくあるようです。そうではなく、何ができて、何ができなかったのか、そしてそれはなぜか、をしっかり分析するということです。さらに、必要なものを精査し、優先順位の低い業務は思い切ってやめたいとのことです。リフレクションはダメ出しの時間ではなく、本当に大切なことに職員のエネルギーを配分するための焦点化の時間です。

⑹データの活用

全国学力・学習状況調査などで「過去問トレーニング」や「過剰な宿題」といった安易な手立てに頼らず結果を出している学校は、調査結果を授業改善に活用しています。しかも、改善の手を打つのが早いのです。結果を出せない学校は、思いつきや隣の学校がやっているからやってみるというような根拠の曖昧な取り組みをしがちです。そうではなく、データに基づいて改善の手を打ちたいということです。

⑺地域や行政、関係機関を巻きこんだ教育活動の展開

彼らは授業の中で、学校改善には行政のサポートや地域の協力が不可欠であることを学びました。学校改善のためには内部の充実だけではなく、外部との連携が必要であると考えています。しかし、その連携は、何となくではなく明確な意図をもって戦略的につながるということです。

⑻職員の声が通りやすいシステムがある

彼らは、職員一人一人が学校経営に参画するべきだと考えています。職員会議は性格上難しくても、職員の声を吸い上げる仕組みが必要だと感じています。グランドデザインを決めるときやその振り返りをするときはワークショップ形式などにするなどして、学校経営に関して全員が何らかの形で発言する機会を設けようということです。学校規模などで現実には難しい問題はあるでしょうが、職員の主体性を引き出すには重要なことではないでしょうか。

⑼職員の自己肯定感が高い

メンバーの中に養護教諭がいます。彼女は自分の研究の一環で十数人の教員に自己に対する認識をインタビュー調査しました。すると、自己肯定感を高く持てない教員の多さに驚いたと言います。それぞれの職員のパフォーマンスに対して肯定的なフィードバックをするような時間をとったり、各行事などの反省用紙にも成果は成果としてしっかりと評価する欄を作って、それを担当者に知らせたりするなど、職員がやりがいを持てるような仕組みと配慮が必要とのことです。

⑽「仕事を楽しむ」ことができる環境づくり

授業中に「仕事を楽しんでいますか?」と私が尋ねたら一斉に表情が曇りました。「そういうことを考えたことがない」というメンバーもいました。「効果的な学校」をつくる上では、まず、職員が仕事を楽しまなくてはならないと考えたようです。読者の皆さんは、それぞれに学校が機能するためのチェックポイントをお持ちだろうと思いますが、夏季休業中の研修などで、職員の皆さんでこんな活動をやってみてはいかがでしょうか。 

『総合教育技術』2019年5月号より


赤坂真二(あかさか・しんじ)
上越教育大学教職大学院教授
新潟県生まれ。19年間の小学校での学級担任を経て2008年4月より現職。現職教員や大学院生の指導を行う一方で、学校や自治体の教育改善のアドバイザーとして活動中。『スペシャリスト直伝! 学級を最高のチームにする極意』(明治図書出版)など著書多数。


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