「部活動の地域移行」とは?【知っておきたい教育用語】

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「部活動の地域移行」を段階的に進めていく取り組みが、今年度より本格的にスタートしました。その取り組み概要と背景について確認しておきましょう。

執筆/創価大学大学院教職研究科教授・渡辺秀貴

部活動の地域移行とは?

運動部活動の地域移行に関する検討会議で、「運動部活動の地域移行に関する検討会議提言について」が取りまとめられ、令和4年6月6日にスポーツ庁が公開しました。その内容は、公立中学校などの運動部活動の主体を、学校単位から地域単位に変えていこうというものです。中学校の運動部活動は、教員の職務の一つとして学校主体で進められてきましたが、段階的に地域主体の運営にしていく取り組みが本格的に始まりました。

部活動の地域移行の背景

部活動の運営主体を地域に移行しようとする背景には、少子化のために中学校の規模が小さくなり部活動運営が難しくなってきたことや、教員の働き方改革の一環として、業務負担を軽減しようとする動きが進んでいることなどがあります。

これまで部活動は、学校の教育活動の一環として位置づけられ、校務分掌で役割を分担して教員が指導にあたってきた経緯があります。しかし、平成31年1月の「新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指導・運営体制の構築のための学校における働き方改革に関する総合的な方策について(答申)」(中央教育審議会)において、部活動は、「学校の業務だが、必ずしも教師が担う必要のない業務」とされ、その適正化を進めることが示されました。

運動部活動の地域人材による運営の仕組みを作ることで、少子化の中でも生徒がスポーツに継続的に親しむことができる機会を保証することをめざすとしています。

具体的な内容とスケジュール

「運動部活動の地域移行に関する検討会議提言について」が示される以前の令和2年9月には、「学校の働き方改革を踏まえた部活動改革について(通知)」が、スポーツ庁と文化庁、そして文部科学省の連名で都道府県教育委員会や学校等宛に送付されました。関係する省庁が連名で関係機関などに通知したところからも、国として力を入れていることがわかります。

この通知には、取り組みの趣旨概要と令和5年までのスケジュールが付されています。具体的な方策として、「休日の部活動の段階的な地域移行」と「合理的で効率的な部活動の推進」が示されました。

この流れを受ける形で検討会議は、令和7年度末をめどに、「休日の運動部活動の地域移行に向けた改革集中期間」として重点的に取り組むことを提言しています。まずは、休日の運動部活動に教員が関わらなくても、練習や大会等の運営が可能な地域中心の仕組みづくりを実現しようということです。

現状と課題

検討委員会の提言の中には、全国的な調査結果をまとめ、部活動の地域移行についての現状と課題が整理されています。その一部を紹介します。

●どの地域でも、受け皿となるスポーツ団体などの整備充実が必要だが、地域スポーツ団体と中学校等との連携が十分でないところが多い。
●専門性や資質を有する指導者の量を確保する必要がある。
●教師等の中には専門的な知識や技量、指導経験があり、地域でのスポーツ指導を強く望む者もいる。
●公共スポーツ施設やスポーツ団体・民間事業者などが有するスポーツ施設だけでは足りない地域も想定される。
●スポーツ団体などが学校体育施設を利用する場合、施設管理を学校が行うと負担が増大するおそれがある。
●大会の参加資格が学校単位に限定され、地域のスポーツ団体などの参加は認められていないものがある。
●中体連と競技団体が主催する全国大会が併存。全国大会ではより上をめざそうとして練習の長時間化・過熱化による怪我や故障、行き過ぎた指導などを招いている。
●大会運営の多くを教師が担っている実態があり、休日の大会参加の引率に負担を感じている教師がいる。

これまで長い時間をかけて築かれてきた、「中学校の運動部活動の運営の仕組み」は、ある意味で一つの中学校文化として根付いている部分があり、これらの現状から「地域移行」という理念の実現に結びつけていくには、関係者、関係団体など、人や組織の理解とそれを牽引する行政の柔軟かつ強いリーダーシップが必要なことは言うまでもありません。

各自治体は、教員が休日に部活の指導をしなくても可能となる体制の構築をめざして環境の整備を進めています。しかし、平日の部活動との関連や活動中のさまざまな対応を考えると、学校部活動と地域部活動を切り離して考えることは難しく、生徒の指導と部活動の運営という2つの側面からの工夫が求められているのです。

教員の意識への対応

学校の働き方改革の一環としての「運動部活動の地域移行」の意義については前述しましたが、担当する部活動の運動の経験がないのに、いわゆる「管理顧問」として校務分掌で割り当てられ、勤務時間を超えて休日もない生活を送る教員の労務環境の改善は、待ったなしの状態です。これまで当たり前だった部活動についての意識改革を先行させることが重要です。

一方で、休日でも部活動指導することを教職キャリアとして位置付けている教員もいます。このような教員には、学校設置の自治体から兼業兼職の許可を得て、地域部活動の運営主体の下で職務として従事できる取り扱いも「提言」には示されています。令和5年度からこのような兼業兼職の仕組みが適切に運用できるよう、条件整備が進められています。

運動部活動改革の取り組み事例

スポーツ庁のホームページには、政策課学校体育室所管の事業として、全国の運動部活動改革の先行実践として次の地域の取り組みが紹介されています。

●中学校部活動を支える総合型地域スポーツクラブ:長野市立東北中学校×長野スポーツコミュニティクラブ東北(→資料PDF)
●中学校部活動とスポーツ少年団が一体となって子どもたちを育てる:仙台市立大沢中学校×大沢ベースボールクラブスポーツ少年団(→資料PDF)
●中学校の体育施設を共有クラブハウスとして活用:半田市立成岩中学校×ソシオ成岩スポーツクラブ(→資料PDF)

こうした事例からは、地域の実情に応じたスタイルが工夫されていることがわかります。学校と地域と行政が協力し、アイデアを出し合って、新たな仕組みを整えていくことが重要です。

▼参考資料
スポーツ庁(ウェブサイト)「運動部活動の地域移行に関する検討会議提言について
文部科学省(ウェブサイト)「新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指導・運営体制の構築のための学校における働き方改に関する総合的な方策について(答申)」中央教育審議会、平成31年1月
文部科学省(ウェブサイト)「学校の働き方改革を踏まえた部活動改革(概要)」令和2年9月
スポーツ庁(ウェブサイト)「運動部活動改革の取組事例

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