小5国語「たずねびと」京女式板書の技術
今回の教材は「たずねびと」です。本単元では、物語の全体像を捉え、考えたことを伝え合うという学習活動になります。そのため、物語の全体像を理解しやすいような板書の工夫を紹介します。あらすじや主題、できごとの意味が、子供たち自身の言葉で表現できることをめざします。
監修/京都女子大学附属小学校特命副校長・吉永幸司
執筆/京都女子大学附属小学校教諭・酒井愛子
教材名 「たずねびと」(光村図書)
目次
単元の計画(全6時間)
1 学習の見通しをもち、初発の感想を書く。
2 物語の全体像を捉える。
3 登場人物の心情の変化を捉える。
4 最後の場面について考える。
5 学習を振り返り、感じたことや考えたことをまとめる。
6 学習のまとめとして、感じたことや考えたことを友達と交流する。
板書の基本
〇教材「たずねびと」の学習内容及び学習活動は、「物語の全体像をとらえ、考えたことを伝え合おう」と教科書では示しています。そのためには、「全体像」を捉えることが大事だと考えて板書を工夫しました。
「たずねびと」は、教科書14ページにわたる物語です。登場人物はそれほど多くはありませんが、「さがしています」の文字がいきなり飛び込んできます。書き出しから結びまで緊張を緩めないすきのない展開です。そこで、教材の特性を生かし、「物語の全体像をとらえる」の「全体像」と「とらえる」に着目した板書を大事にしました。
〇物語の全体像につながる板書で大事にしたことは次の通りです。
一つ目は、場面の展開が理解できるような板書です。時間の順序や気持ちの変化の理解をうながすように、黒板全体を活用してまとめることが大事です。
二つ目は、物語の大事な言葉を見落とさないことです。ここでいう大事な言葉というのは、物語全体につながる叙述を意味しています。
三つ目は、板書を活用して、あらすじや主題、できごとの意味が、自分の言葉で表現できることです。わかりやすい板書は、進んで課題に取り組もうという意欲を高める要因を備えています。
板書のコツ(2/6時間目前半)
板書のコツ①
教材「たずねびと」は場面ごとに行間を設けているのでわかりやすい文章構成です。全体を読んだ後、「物語の全体像」を理解させるために、黒板に「始まり」「展開」「終わり」のカードを貼り、場面の共通理解を図りました。
次の文章は、教材「たずねびと」の冒頭部分の引用です。
すごく不思議なポスターだった。
「さがしています」という大きな文字が、わたしの目に飛び込んできたのだ。
いつものように駅の構内をぬけていくときのことだった。
大きな文字の下には名前。名前、だと思う。名前だけ、何段も何段も書いてある。
―あんなにたくさんの人を、だれがさがしているんだろう。 (中略)
すると、ポスターのちょうど真ん中へんにあったのは、わたしの名前だった。
「楠木アヤ」―かっこの中には年れいも書いてあった。(十一さい)―年れい
も同じ。
―びっくり。だれかが、わたしをさがしているの。(後略)
題名「たずねびと」の謎を解くような書き出しです。全体像につながる言葉(太字の部分)として、「始まり」の部分を板書しました。
板書のコツ②
「―びっくり、だれかが、わたしをさがしているの。」
題名「たずねびと」と関わらせて、問題意識につながる文として板書に位置付けています。
板書のコツ(2/6時間目後半①)
構成/浅原孝子