小3国語「すがたをかえる大豆」指導アイデア
教材名:「すがたをかえる大豆」(光村図書三年下)
指導事項:〔知識及び技能〕(2)イ、(3)オ 〔思考力、判断力、表現力等〕C(1)ア
言語活動:ウ
執筆/東京都公立小学校主任教諭・栁平春奈
編集委員/文部科学省教科調査官・大塚健太郎、東京都公立小学校校長・加賀田真理
目次
単元で付けたい資質・能力
①身に付けたい資質・能力
段落相互の関係に注目し、構成の工夫など分かりやすく説明するための書き手の工夫についてていねいに読むことができる力の育成を図ります。
本文は、分かりやすさという視点から、筆者のさまざまな「説明の工夫」が行われています。筆者の「説明の工夫」をていねいに読み解き、読む力の伸長を図ることで、この単元後、構成などを工夫して書く力の育成にもつなげていきます。
②言語活動とその特徴
この単元では、これまでの説明文との違いを意識し、「説明の『くふう』をたくさん発見しよう」という学習課題により、段落相互の関係を意識した文章全体の構成の工夫や、それぞれの段落のなかで行われている説明の順序や写真との関連のさせ方などの工夫を、説明の工夫という観点で読みを深めていきます。
そのために、「文章構成図」と「大豆へんしんカード」を作り、文章を視覚化し構造的に捉えるという言語活動を設定します。これまで学習してきた説明文には「問い」の文があり、その問いに答える形で具体例などが書かれていましたが、この説明文には「問い」の文はありません。話題の提示のしかたや興味の引き方など、論の進め方について文章構成図に整理することで確認します。
また「大豆へんしんカード」で、動詞と材料を中心に手順をシンプルにまとめることで情報の焦点化を行い、この文章の内容の把握を確実なものとしていきます。
そして、大豆とダイズの言葉の使い分けから、具体例の示し方には、一般的なものから例外的なものへ、簡単で分かりやすいものから複雑で手順の多いものへとなっているなど、並べ方にも工夫があることや段落、取り上げられている食品、写真の数がそれぞれ違うことに着目することで、段落のまとめ方や資料の活用のしかたなどにも、分かりやすく伝えようとする筆者の工夫があることに気付き、より理解を深めます。
この単元で学習した説明の工夫は、読書や書くことの単元でも活用することができます。
単元の展開(8時間扱い)
主な学習活動
第一次(1・2時)
◎学習の見通しをもち、学習計画を立てる。
・題名から大豆がどのようにすがたを変えているのかを想像させてから本文と出合わせる。
・これまで学習した説明的な文章と比べることで、「問い」の文がないことを確認し、既習事項とは違う説明のしかたについて、どのような説明の工夫がされているのかを調べようとする意欲をもち、学習計画を立てる。
【学習課題】説明の「くふう」をたくさん発見しよう。
第二次(3~6時)
◎文章構成図を作成することにより、段落相互の関係など、文章全体の構成を確かめる。
・具体例の「中」の確認から、「はじめ」と「終わり」の対応や、段落相互の関係を意識して文章構成図にまとめ、全体像を確認する。
→アイデア1
◎動詞や材料に着目して、食品ごとに「大豆へんしんカード」にまとめる。
・大豆が食品に「へんしん」する過程を動詞や材料に着目し、食品ごとにグループで話し合いながら「大豆へんしんカード」にまとめることで、おいしく食べる「くふう」の手順を明らかにする。
→アイデア2
◎具体例の並べ方や、段落と食品、資料の数に着目することで、より細かい説明の「くふう」について考えを深める。
・「大豆」と「ダイズ」の言葉の使い分けや具体例の並べ方、また「段落」「取り上げられている食品」「写真」の数がそれぞれ違うことなどに着目し、筆者の説明の「くふう」について、より詳しく考える。
→アイデア3
第三次(7・8時)
◎この単元で学んだ説明の「くふう」について自分の考えをまとめ、活用を図ろうとする意欲をもつ。
・この単元で学習した説明の「くふう」について考えたことを、ノートにまとめる。
・新たな説明的な文章と出合ったときや、自分が書き手となった場合に活用しようとする意欲をもつ。
→アイデア3
アイデア1 文章構成図で全体の構成を整理し、「はじめ」と「終わり」の関係を捉える
三年生の説明的な文章では、「言葉で遊ぼう」「こまを楽しむ」で、「はじめ」の二つの問いに対して、「中」で具体的な事例について対応する二つの答えがあり、「終わり」でまとめがある構成について学習しました。既習事項を生かして構成を捉えようとすると、『すがたをかえる大豆』では、そのような「問い」が見付かりません。子供は戸惑うことが予想されます。
そこで、既習事項では解明できない「説明のくふうを見つけよう」という学習課題により、説明的な文章の書き方の秘密に迫っていこうとする意欲を高めます。これまでの学習から、第三~七段落は具体的な食品の名前が出てくることから、具体例としての「中」であることが分かります。
その前後にある段落が「はじめ」と「終わり」になることが予想できますが、文章構成図にまとめることで、その段落同士の関係性や対応がより明確になります。「問い」ではなく、どのようにして話題提示を行い、読み手の興味を引き出すかの工夫を分析することは、自分が書き手となった場合にも参考にすることができます。
題名や第一段落で「ほとんど毎日口にしている」大豆は「いろいろな食品にすがたをかえていることが多いので気づかれない」という話題の提示を行い、読み手の興味を引き、第二段落で「大豆は、ダイズという植物のたね」という大豆の紹介とともに、「食べにくく」「消化もよくない」ため、「おいしく食べるくふうをしてきた」という説明により、読み手の意識を「くふう」に注目させるという展開となっています。
第八段落では「味がよい」「たくさんのえいようをふくんでいる」「育てやすい」などの食べ方が工夫されてきた理由が開示され、「昔の人々のちえにおどろかされます」という「はじめ」と対応したまとめの「終わり」となっていることに、活動を通して気付かせます。
アイデア2 動詞や材料に着目し、大豆が食品に「へんしん」する過程を「大豆へんしんカード」にまとめる
文章構成図で「はじめ」「中」「終わり」を確認した後、「中」の具体例の内容を詳しく読んでいきます。この文章は身近な食品が取り上げられていますが、「いる」「にる」などの一度は聞いたことがある言葉であっても、明確な理解が伴っていない場合があります。
また、「みそ」の例などの手順が複雑な過程について、正確には把握できていない場合もあります。そこで、「炒る」と「焼く」の違いなどについて問いかけ、言葉の確認に対する必要感を引き出し、互いに説明し合う場面を設定することで、理解を確実なものとしていきます。
また、大豆が違う食品になることを「へんしん」という言葉で表すことで、活動への意欲を高めます。一つの食品を完成させるためには、いくつの手順があり、何が必要なのか、グループでの対話を通して、食品ごとに一枚の「大豆へんしんカード」にまとめます。
材料と動詞に着目することで、大豆から食品までの間にある必要な手順についての理解を確実なものとしていきます。言葉の意味を複数の辞書で確認することや、場合によっては動作化などを取り入れ、互いに見合うことによって、語彙や手順の理解と定着を図ります。
▼大豆へんしんカードの例
『教育技術 小三小四』2021年10/11月号より