学級をよくするアイデアを聴き合う『サークルタイム』第4段階【子供同士をつなぐ1年生の特別活動】⑦
1年生の子供たちは、初めて集団活動を体験します。主体的・対話的な態度を育てるとともに、子供同士をつなぎ、よりよい人間関係を築きましょう。この連載では、『日常アレンジ大全』(明治図書出版)や『教室ギア55』(東洋館出版社)などのヒット著者の鈴木優太先生が、小1「特別活動」のさまざまなアイデアを紹介していきます。
第7回は、聴き合いで問題解決集団を育む『サークルタイム』の第4段階を取り上げます。
鈴木優太(すずき・ゆうた)●宮城県公立小学校教諭。1985年宮城県生まれ。「縁太(えんた)会」を主宰する。『教室ギア55』(東洋館出版社)、『日常アレンジ大全』(明治図書出版)など、著書多数。
目次
『サークルタイム』第4段階とは?
「話合い」=「聴き合い」です。「聴き合う」豊かな体験の積み重ねが、話合い活動のできる課題解決集団を育むのです。
全員で「輪」になって「聴き合う」時間を『サークルタイム』と呼んでいます。
今回は『サークルタイム』の第4段階の活動です。
『サークルタイム第4段階』=学級活動の時間に行う「クラス会議・ロング」の実践を紹介します。私は、クラス会議を含む第1段階~第4段階の活動を全て『サークルタイム』と総称し実践しています。学級活動の時間だけでなく、朝の時間や教科の学習の時間においても「輪」になって「聴き合う」活動をスムーズに取り組むためです。
※『サークルタイム』第1段階~第2段階は連載第5回、第3段階は第6回をご参照ください。
はじめは「輪番で2周意見を聴き合ったら、多数決で決める」でOK
『サークルタイム』の第4段階は、学級をよりよくするためのアイデアを聴き合い、「集団決定」をします。学級活動の時間に30分ほどで行う話合い活動が「クラス会議・ロング」です。
ここまで、3回の連載で丁寧に段階を追って進め方を説明してきましたが、この第4段階から始めてもかまいません。
「輪番で2周意見を聴き合ったら、多数決で決める」ぐらいシンプルな「集団決定」で、まずは良いと私は考えます。
何に決めるか、どう決めるかよりも、「決めたことにどう取り組むか!」がなすことによって学ぶ特別活動の本質だからです。
決めたことを実践し、振り返りを生かして「次の機会」を積み重ねることの方が優先度が高いと考えます。
多数決は悪ではありません。
「パスします」もOKな温かな雰囲気の中で、まずは「基本は多数決!」と考えて、集団決定をやってみるとよいと思います。任せてみると案外子供たちだけでいい感じに折り合いを付けて、実践活動にもぐんぐん進んでいくということが起こります。
「まずは1週間(1度)やってみましょう!」を合言葉に、とにかく決めたことをやってみることが大切です。私が先生方に強くお伝えしたいのは、話合い活動にもっと気軽に取り組んでよいということ。多様な考えを持った子供たち35人中35人全員が100%「納得」できるように話合い活動が着地することは、稀なのです。
学級をより良くするためのアイデアを聴き合う
「お楽しみ会をどのようにやるか決める」
「教室ぴかぴかキャンペーンで1週間やることを決める」
「雨の日の1年〇組ルールを決める」
などの議題を、連載6回で紹介した「議題箱」から司会役の子供と教師とで選びます。
主に、学級活動(1)の内容です。
何に決まってもよい状態となるように自治範囲を整えてから(例えば、お楽しみ会では、今回の活動場所は教室、45分間でできること、食べ物を扱うことやお金が掛かることはできない…など)、正式な議題として学級の子供と共有します。
冒頭の10分ほどの解決策の発散(提案)は、個人のお悩み解決アイデアを聴き合う『サークルタイム』第3段階の「クラス会議・ショート」と全く同じ流れで進めます。
私は、「輪番で意見発表を2周する」ことにしています。「輪番で意見発表を1周してから、どうしても言いたいことがある人は挙手をして、2周目の意見を述べる」実践を行っています。
『サークルタイム』第4段階(クラス会議・ロング)進行表1
「納得」を目指して「集団決定」にチャレンジ
「クラス会議・ショート」は「個人決定」で収束しますが、「クラス会議・ロング」は「集団決定」で収束する点が異なります。
この「集団決定」が難しいのです。だからといってチャレンジしないのは、子供たちが不幸せになります。「集団決定」は、子供たちがただの集まりではなく、「集団」として大きく前進するきっかけになる営みだからです。
冒頭で提案したように、はじめは「輪番で2周意見を聴き合ったら、多数決で決める」ぐらいシンプルな「集団決定」でよいと私は考えます。
『サークルタイム』第3段階の「クラス会議・ショート」と同じように、10分~15分ぐらいで話合い活動が終わってもよいのではないでしょうか。残りの時間を役割分担や実践の活動時間に充て、活動を豊かにたっぷりと行いましょう。
多数決で「集団決定」する「クラス会議・ロング」を積み重ね、子供たちだけで話合い活動を進められるようになると、多数決を用いない方が話合いがうまく着地しそうなタイミングや、多数決だけでは物足りないと感じてくるタイミングがやってきます。機を見計らって、多数決を用いない解決策の収束法も子供たちとチャレンジしていきましょう。
『サークルタイム』第4段階(クラス会議・ロング)進行表2
おすすめは、⑴~⑶の司会の3つのセリフと、選択or合併or折衷の3つのセリフ、これらのキラーフレーズを子供たちと共有します。選択や合併や折衷という言葉やその意味も私は教えています。
大きく書いたセリフを掲示したり、話合い活動マニュアル(上の図を参照)を拡大印刷して貼り出したりするなど、子供たちの目に入るようにします。多数決にせよ、キラーフレーズにせよ、子供たちが「終わり方」に見通しが持てるようになると、話合いの中で練り合いや深まりが少しずつ見られるようになっていきます。
しかし、これらの話型やマニュアルにとらわれ過ぎて、心ここにあらずな話合い活動になってしまっては本末転倒です。
合言葉は「まずは1週間(1度)やってみましょう!」
「集団決定」できたら、自分たちに拍手を贈り合い、温かく話合い活動を閉じましょう。ポジティブな雰囲気で、実践活動に取り組めます。議題提案者がうまくいったイメージをロールプレイ(寸劇で表現)して締めくくるのも、実践への具体イメージを前向きに共有できる有効な手立てです。
『サークルタイム』第4段階(クラス会議・ロング)進行表3
一つの意見に固執してしまう子がいたり、納得感の薄い話合い活動になったりすることもあります。
しかし、決まったことをいざ実践してみると、「楽しい!」「もっとこうしたい!」という前向きな意見が出てくることがほとんどです。経験の乏しい1年生にとっては、特に、直近に共通の体験をする過程を経て、ようやく話合いが成立する(同じ土俵に上がれる)という場合が多いこともあります。
だから、「まずは1週間(1度)やってみましょう!」を合言葉に、振り返り、修正していくサイクルを積み重ねるのです。話合いの力を付けるのはリアルな問題を解決する話合い活動しかありません。
大人の私たちも、特に有事の際(東日本大震災、新型コロナウイルス感染症のまん延等)には話合いの尊さを実感してきたはずです。個人の悩みも、みんなでやってみたいことも「気軽に」話し合えるコミュニティが理想です。
だから、「議題箱」を教室に設け、朝の会での「クラス会議・ショート」(主に個人の問題解決10分)と、1~2週に1度の「クラス会議・ロング」(主に学級の問題解決30分)を、はじめてみましょう。変わります!
参照/鈴木優太『教室ギア55』(東洋館出版社)、鈴木優太『日常アレンジ大全』(明治図書出版)
赤坂真二『クラス会議入門』(明治図書出版)
諸富祥彦監修・森重裕二著『1日15分で学級が変わる!クラス会議パーフェクトガイド』(明治図書出版)
イラスト/高橋正輝