現行学習指導要領の「三つの資質・能力」とは?②【田村学流 単元づくり・授業づくり#9】

連載
田村学流「単元づくり・授業づくり」

國學院大學人間開発学部教授

田村学
現行学習指導要領の「三つの資質・能力」とは?②【田村学流 単元づくり・授業づくり#9】

この企画では、元文部科学省視学官であり、現行学習指導要領の策定にも尽力された、國學院大學・田村学教授に、「単元づくり・授業づくり」をテーマとした連載をしていただきます。

「思考力、判断力、表現力等」とはどのような資質・能力?

前回、「知識及び技能」は、事実に関する知識が関係付けられ、構造化された資質・能力であることについて説明しました。そこで今回は、「思考力、判断力、表現力等」とはどのような資質・能力なのか、具体例も加えながら、分かりやすく説明をしていきたいと思います。

方法に関する知識が事実に関する知識とつながったものが「思考力、判断力、表現力等」

「思考力、判断力、表現力等」は、前回説明をした「知識及び技能」とも関係する資質・能力です。端的に言えば、それまでには経験したことのない未知の状況の中でも、身に付けた「知識及び技能」が自在に活用できる状況と捉えられます。

例えば、ある問題に直面したとき、身に付けた「知識及び技能」の中から、その問題を解決するのに適したものを選択し適用することが、「思考力、判断力、表現力等」と考えられます。あるいは「知識及び技能」を、その場面に応じて組み合わせながら、自在に活用し、問題の解決を図るようになることを、「思考力、判断力、表現力等」が育まれた状態と考えることができます。

私は以前の著書(『深い学び』)では、「思考力、判断力、表現力等」とは、知識が新たな場面や異なる状況とつながることだと説明をしていました。しかし、さらに子供たちの学びをていねいに見ていくことで現在は、方法に関する知識が事実に関する知識(構造化された知識も含む)とつながって、ハイブリッド化したものが、「思考力、判断力、表現力等」だと考えています。

「思考力、判断力、表現力等」における知識の構造化
方法に関する知識が事実に関する知識とつながり、ハイブリッド化したものが「思考力、判断力、表現力等」。ただし厳密に言えば、方法に関する知識に結び付いている事実に関する知識は、個別の知識ではなく構造化された知識と考えられる。

方法に関する知識としては、思考スキルもある

具体的な事例を見て考えていくことにしましょう。例えば、算数で面積について学習するとき、まず長方形や正方形などの整った図形をイメージして、「縦×横」という、基準となる面積のいくつ分で考える面積を求めるための公式を導いていきます。そこから、この求積公式を用いるのに適した練習問題を通して、習熟を図っていくでしょう。子供たちは、そこで学んだ求積公式である「縦×横」を基にして次に、三角形の面積はその半分と考えればよいので、「縦×横÷2」で求められるという、新たな構造化された知識を考え出していきます。

そこからさらに台形などの面積を学習していくわけですが、子供たちはこのとき、大きなものを部分に分けて求めて、後でたしても結果は同じという方法に関する知識を活用します。台形を長方形と三角形に分割したり,それを移動したりして、すでに身に付けている長方形や三角形の求積公式という構造化された知識を使って、台形の面積の求め方を考え、身に付けていくわけです。

このように、方法に関する知識と事実に関する知識や構造化された知識を結び付け、ハイブリッド化したものが、資質・能力としての「思考力、判断力、表現力等」なのです。

ここで特に方法に関する知識としては、思考スキルがあることも押さえておきたいと思います。実際の学習では、獲得した知識を、思考スキルを使って比較、分類などして処理したり認識したりすることは、よく行われていると思います。それは「比較する」「分類する」といった思考スキル(方法に関する知識)が、事実に関する知識と結び付いて、「思考力、判断力、表現力等」として活用・発揮されているということなのです。

さて、ここまで「知識及び技能」と「思考力、判断力、表現力等」について説明をしてきましたので、次回は「学びに向かう力、人間性等」について説明をしていきたいと思います。

現行学習指導要領の「三つの資質・能力」とは?③【田村学流 単元づくり・授業づくり#10】はこちらです。

執筆/教育ジャーナリスト・矢ノ浦勝之

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