運動会は何のため?【妹尾昌俊の「半径3mからの“働き方改革”」第5回】

連載
妹尾昌俊の「半径3mからの“働き方改革”」

学校の“働き方改革”進んでいますか? 変えなきゃいけないとはわかっていても、なかなか変われないのが学校という組織。だからこそ、教員一人ひとりのちょっとした意識づけ、習慣づけが大事になります。この連載では、中教審・働き方改革特別部会委員などを務めた妹尾昌俊さんが、「半径3m」の範囲からできる“働き方改革”のポイントを解説します。

執筆/教育研究家・合同会社ライフ&ワーク代表 妹尾昌俊

運動会は誰のためか

6月は運動会という学校も多いことだろう。新型コロナ対策でさまざまな配慮や工夫もあっての運動会、一大イベントという学校も多いと思う。今回は運動会を題材に、学校の“当たり前”をちょっと見つめなおすことを実践してみよう。

そもそも、「運動会って何のためでしたっけ?」ということが最も大切な問いだ。「保護者や地域を喜ばせるためではないですよね?」という話をしたいと思う。

「なんだ、そんなの当たり前でしょう」という声も多いかと思う。しかし、たとえば、学校にはこんな“忖度”があると聞く。

運動会のプログラムをもう少し、児童にとっても、教師にとっても負担のかかりにくいものにしたいが、「去年のほうがよかった、盛り上がった」といった保護者等の声も予想されて、なかなか見直せない。

学校としては、「感染症対策のために今年の運動会は短縮します」ということは言えるのだが、「教職員の負担軽減のために短くします」とは言えない、言いづらい、という話を何人かの校長、教職員から聞いたことがある。なんでもかんでも時短したほうがよい、とは思わないが、運動会のあり方については、各地模索しているなかかと思う。

指導要領上はマストではない

ここで学習指導要領を確認してみたい。ご存じのとおり、特別活動のなかに学校行事という項目がある。ちょっと長くなるが、関連する記述を抜粋した。

学習指導要領とその解説での関連する記述(一部抜粋)
【学習指導要領】
第6章 特別活動[学校行事]
2 内容
(3)健康安全・体育的行事
心身の健全な発達や健康の保持増進、事件や事故、災害等から身を守る安全な行動や規律ある集団行動の体得、運動に親しむ態度の育成、責任感や連帯感の涵養、体力の向上などに資するようにすること。
3 内容の取扱い
(1)児童や学校、地域の実態に応じて、2に示す行事の種類ごとに、行事及びその内容を重点化するとともに、各行事の趣旨を生かした上で、行事間の関連や統合を図るなど精選して実施すること。…
【学習指導要領 解説】
健康安全・体育的行事には、健康診断や給食に関する意識を高めるなどの健康に関する行事、避難訓練や交通安全、防犯等の安全に関する行事、運動会や球技大会等の体育的な行事などが考えられる。
運動会などについては、実施に至るまでの指導の過程を大切にするとともに、体育科の学習内容と関連を図るなど時間の配当にも留意することが大切である。また…事故防止に努める必要がある。
運動会においては、学校の特色や伝統を生かすことも大切である。ただし、児童以外の参加種目を設ける場合は、運動会の教育的意義を損なわない範囲にとどめるよう配慮する。また、児童会活動やクラブ活動などの組織を生かした運営を考慮し、児童自身のものとして実施することが大切である。その場合、児童に過度の負担を与えたり、過大な責任を負わせたりすることのないように配慮する。

小学校学習指導要領特別活動編解説より一部抜粋

ここからも分かるが、実は、学習指導要領の本体では「運動会」という言葉は一言も出てこない。解説に健康安全・体育的行事のひとつの例として登場する。しかも、指導要領本体では、行事と内容の重点化や精選をするように述べている。

極端な話をすると、「うちは運動会はしません」という学校があってもよいわけである。健康安全・体育的行事を全くなくしてしまうのは指導要領上も問題がありそうだが、そんな学校はほとんどないと思う。

私が言いたいことは、「働き方改革ということで、運動会なんてやめてしまえ」ということではない。運動会には教育的意義や効果もあると思うし、保護者目線からしても楽しみだ。だが、マスト(Must)ではないわけだし、もっと柔軟にあり方やプログラム内容を見直していきましょうよ」ということをお伝えしたい。

準備や当日に過度の負担となっていないか

運動会を考えなおすためには、再度申し上げるが、目的やねらいをもっと意識することが最初のステップだ。指導要領では「規律ある集団行動の体得、運動に親しむ態度の育成、責任感や連帯感の涵養、体力の向上など」となっているが、各学校でなじむ言葉で表現できたらよいと思う。

●やればできるという達成感を体感してほしい
●学級・学年単位はもちろん、異学年でも協力、連帯するよさを学んでほしい
●児童が運営に関わることで、主体性や周りに貢献することを体験してほしい
などである。

次に確認、検討したいのは、その目的やねらいのために、現状のプログラムや準備が過度な負担になっていないだろうか、という視点である。コロナ以前であれば、「2、3週間は毎日2時限分くらい運動会の練習をする」という学校もかなりあったようだ。リレーや応援団、鼓笛隊などがあると、朝練や昼休みを潰しても練習するという学校もあった。いまはどうだろうか? 少しはマシになっているだろうか、それともコロナ前に近い状態に戻りつつあるだろうか?

入念な準備や練習を一概によい悪いと言える話ではないが、運動会の目的やねらいに照らして、そこまでやらなくてもよいだろう、と感じる例もある。保護者等への見栄えを気にして児童にも、教師にも相当な負荷をかけている学校は多いのではないだろうか。冒頭で述べたとおり、「保護者や地域を喜ばせるためではないですよね?」ということを振り返ってほしい。

『総合教育技術』2018年8月号に加筆

野村総合研究所を経て独立。教職員向け研修などを手がけ、中教審・働き方改革特別部会委員などを務めた。主な著書に『変わる学校、変わらない学校』『学校をおもしろくする思考法』(以上、学事出版)、『こうすれば、学校は変わる! 「忙しいのは当たり前」への挑戦』(教育開発研究所)、最新著書に『教師と学校の失敗学 なぜ変化に対応できないのか』(PHP研究所)がある。

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