学級崩壊11月クライシスを防ぐ!予兆発見のポイント&チェックリスト
学級崩壊のカウントダウンは9月からと言われています。気づかぬうちに崩壊が進み、11月には手遅れ・・・とならないために、9月の今から「荒れ」に気をつけ予防対策を練ることが大事です。【予兆発見編】では、荒れの特性を学び、クラスの状態をチェックし、荒れの兆候を見逃さないようにしましょう。
目次
「11月クライシス」って何?
クライシスとは「危機」「重大局面」のことです。つまり、11月クライシスとは、11月頃になると、クラスが荒れ、危機が訪れるということです。そして、それを予防するのは9月でなければなりません。「えっ? なぜ11月に荒れるの!?」と思われるかもしれません。実は、要因がいくつかあります。要因とその対処法を知って、11月クライシスを防ぎましょう。
なぜ11月? 予防は9月?
11月頃になるとクラスの雰囲気がどこか暗い、子どもたちの反応が少しおかしい・・・なんてことを実感したことがある方もいらっしゃるかもしれません。ですが、なぜ11月なのでしょう。まず、前提として「必ず11月に起こる」ということではありません。他の時期にクラスが荒れることだって多々あります。ただ、11月に荒れることが多いということです。なぜなら11月は・・・
1.大きな学校行事が少なく、目標を見失いがちな時期
2.学校生活のあらゆる面で、ほころびが見える時期
だからです。運動会のように全校を挙げて競技や応援練習に取り組み、各自が目標に向かって努力する。あるいは、音楽会に向けて毎日のように練習し、仲間と協力して歌声をつくり上げる。そういった学校行事や大きなイベントが11月には少ないことが一つの要因す。気持ちが緩み、目標もなく過ごす毎日が、11月クライシスを招くのかもしれません。
もう一つの要因は、学校生活の中で見えてくるほころびです。みなさんが4月に伝えたクラスのルールや大切にしてほしいことは、現在どれくらい守られているでしょうか? 毎日の学校生活の中で、少しずつ少しずつ曖昧になったり、いいかげんになったりしていないでしょうか。
夏休み明けの9月に再スタートを切り、約束したはずのルールや大切にしてほしいことが、ウヤムヤになるのが、ちょうど11月なのです。だからこそ、9月。夏休み明けの今こそ、11月クライシスを予防するための準備が絶対に必要なのです。次からは、具体的な対処法についてご紹介します。
荒れのパターンは様々
「私のクラスは授業中に大声を出す子もいないし、立ち歩きもない。大きいトラブルも起きていないから大丈夫」と思っている方、要注意です。実は、そんなクラスにも崩壊の危機が刻一刻と近づいているかもしれません。一見してすぐには分からない荒れもあります。
荒れのパターン
●先生の指導が伝わっているようで、実は機能していないパターン
・先生の指示にすぐには従わない。
・注意をすると一旦は収まるが、またすぐに元に戻る。
・ダルそうな表情で、「やりたくない」雰囲気をつくり出す。
●目に見えないところで荒れているパターン
・先生の前では指示や指導に従っているが、「良い子」を演じているだけ。
・休み時間やグループ活動など先生が見ていないところで、子ども同士の人間関係に問題が生じる。
・子どもたちの内部で荒れがどんどん進行している。
●先生の指導に全く動じないパターン
・子どもたちが笑顔で先生に寄ってくるが、わがままばかり言っている。
・友達のような先生が、いくら何を言っても言うことを聞かない。
・教師の指導を強めにすると、学級全体で自分たちの意見を押し通そうとする。
子どもたちの毎日の変化は大きなものではありません。少しずつ姿かたちを変えていきます。注意して見なければ予兆を見逃してしまいます。「そんなこと言われても、何を注意して見ればよいか分からない」という方のために、荒れの予兆を見つける視点があります。それは、
「個を見る視点・集団を見る視点」
この二つの視点で、クラスの子どもたちを見てみましょう。
どこから見るか
子どもたち一人ひとりを見るとき、クラス全体を見るとき、まずは教室の立ち位置を考えてみましょう。
位置によって見え方が変わります。全体を見れば個は見づらく、個を見れば全体が見えにくい。目的に応じて見方を変える必要があります。
予兆発見チェック! 何を見るか
さて、クラスのどのような様子を見れば、荒れの予兆に気付き、防ぐことができるのでしょう。次に挙げる、荒れへの予兆発見チェックリストでご自分の教室を見てみましょう。
クライシス予防チェックリスト 【生活規律】
- 最近、忘れ物が多くなった(提出物や遅刻も同様)。
- 以前に比べて、給食の準備に時間がかかる。食事のマナーが悪くなった。
- 清掃をしても、教室があまりきれいにならない。
- 下校後の机や椅子が乱雑(隣の机とついていない。椅子を引いていない)。
- 床に筆記用具やプリントが落ちていることが多くなった。
- ロッカーや雨具掛け、傘立てなどが散らかっている。
- 教室の掲示物が曲がっていたり、折れていたりすることが増えた。
- 「物がなくなった」と訴える子どもがいる。
ここに挙げたチェックリストのうち、忘れ物や提出物については、その原因が家庭にある可能性もあります。また、まだ3年生、4年生ですから、チェックリストに該当する項目が多いからといって、すぐに「あぁ、崩壊だ」と結論付けるのは性急です。しかし、担任である以上「最悪のシナリオ」を想定しておくことは、決してマイナスにはなりません。
続いて、子どもの態度と学習での注意点を見てみましょう。
クライシス予防チェックリスト 【子どもの態度】
- 話し言葉が変わった(言葉遣いが悪くなった)。
- 目つきや表情がきつくなった。
- 呼ばれても返事をしない。先生のところへ来ない。
- これまでと比べて服装が明らかに違う(派手なものに変わった。暗い色が多くなった)。
- 一緒にいる仲間が変わった。一人でいることが多くなった。
- 担任に自分のことを話さなくなった(聞こうとすると話すのを嫌がる)。
クライシス予防チェックリスト 【学習】
- 授業開始時刻になっても着席していない(休み時間が終わっても教室になかなか戻ってこない)。
- 授業中の私語が多くなった。
- 仲間の発言に対して冷やかしが増えた。
- ノートやプリント、机に落書きをしている。
- ノートの文字が乱雑になった。
- 学習中の姿勢が悪い。
- 挙手や発言が少なくなった。
- やたらとトイレ、保健室へ行こうとする。
ここに挙げたチェックリストは一例です。同僚の先生からの、「最近●●さん、様子がちょっとおかしいね」といった情報や、学校生活に関するアンケートなども活用しながら、子どもの変化を具体的に見ていきましょう。
執筆/新潟県小学校教諭・畠山明大
イラスト/terumi
『小三教育技術』2017年9月号より