これから先生になるあなたへ⑧問題解決のポイント3選|樋口綾香のすてきやん通信
Instagramでは2万人超えのフォロワーに支持され、多くの女性教師のロールモデルにもなっている樋口綾香先生による人気連載! シリーズ「これから先生になるあなたへ」最後となる今回は、授業の準備や保護者対応など、さまざまな問題解決のポイントを教えてくれました。(連載はまだまだ続きます!)
執筆/大阪府公立小学校教諭・樋口綾香
目次
目が回るほど忙しい毎日
新学期が始まり、2週間ほどが経ちました。シリーズ「これから先生になるあなたへ」は、今回で終わります。最後に、4月から学校現場で奮闘されている新しく先生になったみなさんへ向けて、少しでも見通しがもてる問題解決についての話をします。
4月から先生になったみなさん、体調は大丈夫ですか。ご飯は、食べられていますか。夜は眠れていますか。週末は、リフレッシュできていますか。誰かと、他愛もない話で笑い合えていますか。
この時期の教員の仕事量は異常だと、何年働いていても感じます。経験が増えるごとに、仕事量は増すばかりで、なんとか効率のよい方法を探している私がいます。さらに昨今のコロナ事情で、現場は本当に余裕のない状態です。
経験が豊かな先生は、互いを思いやり、なんとか協力し合って学校や学年を運営していこうとしていることでしょう。それでも、初任者の思いに寄り添い切れていないことも多いと思います。
担任をしている方は、自分の責任の重さに逃げ出したくなっていることでしょう。子どもたちに分かるように授業をしたいけれど、一日5~6時間ある授業をすべてきちんと準備することの難しさ。休み時間は子どもと遊びたいのに、毎日積み重なる宿題の山。もめごとが起きるたびに緊張する生活指導と、保護者への連絡。
どんどん余裕がなくなり、いつの間にか自分を追い込んでしまっていることがあります。ここで一つ大きな深呼吸をして、少しでもゆとりがもてるように、さまざまな問題解決の方向性をいっしょに考えていきましょう。
1.授業の準備
受け持つすべての教科を一人で教材研究し、ワークシートや掲示物を作り、授業をするのは、とても大変なことです。
私は今年度5年生の担任をしていますが、仕事量が少しでも軽減されるように、次のように役割を分担しています。
- 樋口→国語・図工・総合の年間指導計画、3学期行事関係
- A先生→算数・道徳の年間指導計画、2学期行事関係
- B先生→社会・体育の年間指導計画、1学期行事関係
役割を分担すると、見通しがもてるようになりました。担当の教科については先行して授業を進め、板書やワークシート、子どものノートなどの情報を放課後に交流しています。忙しいときには、板書のみをグループLINEに送ったり、GoogleWorkspaceを使ってデータを共有したりしています。ワークシートなどの印刷物は基本的に他学級の分も印刷するなどして、さまざまな準備時間を削減できています。
初任のみなさんには、一人ですべてをこなそうとせず、先輩の教員の授業を真似させてもらったり、作ったデータをもらったりしてほしいです。それが難しい場合は、学校のファイルサーバーなどに保管してあるデータを閲覧し、使えるものはもらって、少しでも時短につなげてください。
次に、教科書や指導書のデータについてです。
指導書には、教科書のデータをPDFにした資料のCD-ROMがついていることがあります。それらをパソコンやタブレットに読み込んでおけば、いつでもワークシートや教材文を確認することができます。指導書に付属している資料は要チェックです。難しい場合は、情報担当の先生に聞いてくださいね。
2.宿題やノートのコメント
子どもたちが提出した宿題や授業のノートも、あっという間にたまってしまいます。私は、一人ですべてを完璧にこなすことはできないと考えて、チェックの一部を子どもたちに手伝ってもらっています。
まず、当番活動の中に、「宿題チェック」という当番を設けます。画用紙に名簿を貼り付けた宿題チェック表を用意し、毎日朝の時間に提出されているかどうかのチェックをしてもらっています。
また、計算ドリルの宿題は、「答え合わせ→直し」までをセットで子どもたち自身で行うようにしています。その後、提出してもらい、きちんとできているか確認できたらスタンプを押して返却します。
低学年を担任しているときには、子どもたち同士で朝の時間に答え合わせをして、提出されたものにスタンプを押して返却していました。
丸付けをすべてこちらでしてしまうと、宿題をしたときと答え合わせをしたときの時間差が開いてしまって、「なぜ間違えたのか」を考える機会を失ってしまいます。
そして、子どもが自分たちで答え合わせができるようになると、その時間担任は別の作業をすることができるのです。
ノートのコメントについては、「全員に同じ量のコメントをする」という考えをやめました。花丸やスタンプだけのときもあれば、ひとこと「すばらしい」と書くときもあります。
私がノート集めで大切にしているのは、「自分の考えを書かせたなら、見る」ということです。「書く」という指示だけを与えて、本当に書けているか、どのように書いているか、何を考えていたか、ということに関心を示さないでいると、その態度を見抜いて、次から書かなくなってしまう子がいます。発達段階にもよりますが、「先生がノートを見てくれる」というのは、子どもの学習意欲の向上にもつながります。授業中、ノートに考えを書かせた場合は、できるだけ集めて読んでほしいと思います。
3.生活指導と保護者対応
子どもがもめごとを起こしたり、怪我をしたりしたときの、子どもと保護者への対応は、とても重要です。私が心がけているのは、「子どもを大切に思っていることを相手に伝える」ということです。
悪いことをすれば叱るし、間違ったことは注意をします。しかし、子どもを大切に思えば、「なぜその行為がいけないか」を理解してほしい、「今後どうするとよいか」を考えて、正しい行動を自分で選択できるようになってほしいという願いが生まれてきます。そうすると、一方的に𠮟りつけるのではなく、相手を尊重した言葉かけができるようになります。静かに、落ち着いた声のトーンで、丁寧に伝えるとよいでしょう。
保護者には、子どもが帰るまでに電話等で伝えられるようにします。もめごとが起きた場合は、連絡帳ではなく、直接伝えるのがおすすめです。書きぶりによっては、こちらが伝えたいように相手に届くとは限りません。保護者に正確に事情が伝わるように、問題の対応時には記録をとっておき、それを見ながら伝えるようにしましょう。
しかし、生活指導や保護者対応は、少しのボタンの掛け違えで大きな問題に発展することがあります。気になることがあればすぐに学年で共有し、学年で対応することが大切です。遠慮せずに、些細なことでもすぐに相談するようにしましょう。
先生になったみなさんが、子どもたちと楽しい毎日を過ごしていけるように、少しでも参考になれば幸いです。
樋口 綾香
ひぐち・あやか。Instagramでは、ayaya_tとして、♯折り紙で学級づくり、♯構造的板書、♯国語で学級経営などを発信。著書に、『3年目教師 勝負の国語授業づくり』(明治図書出版)ほか。編著・共著多数。
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イラスト/横井智美