旗づくりを通して学びのコンセプトを深める【あたらしい学校を創造する #36】

先進的なICT実践と自由進度学習で注目を集めた元・小金井市立前原小学校教諭の蓑手章吾(みのて・しょうご)先生による連載です。公立学校の教員を辞して、理想の小学校を自らの手でつくるべく取り組んでいる蓑手先生に、現在進行形での学校づくりの事例を伝えていただきます。
今回は、自発的な学びを促す環境について考えます。

目次
入学前アクティビティはみんなの旗づくり
開校前のおよそ半年間にわたって、月イチで開催してきた「入学者の集い」ですが、3月の集いでは、ヒロックの旗(フラッグ)をつくりました。
ヒロック初等部は4月5日に初日を迎えました。いわゆる入学式を行うというイメージはなく、子供主体に楽しく過ごしてほしいという願いで計画しました。その結果、みんなでヒロックの旗をつくって、最後に旗にひとりずつサインをして、「このメンバーでヒロック発足だ!」と盛り上がろうと考えました。(うまくいったかどうかは、この記事が出るころには判明しているはずです笑)。
とはいえ入学の一日だけで旗をつくりあげることは厳しい。前もってみんなで、7〜8割くらいまでつくっておくことにしました。入学当日に残りの仕上げをして、完成させた旗の前でみんなで写真を撮る、という手はずです。
あらかじめ生地の上に「HILLOCK2022」という文字を形取り、ガムテープを貼っておき、そこに子供たちが自由にフィンガーペイントをしました。入学の日にガムテープの部分を剥がすと、「HILLOCK2022」の文字が白抜きに浮かび上がるという仕掛けです。
つくった旗は、その後も、たとえばみんなで公園に行ったときの集合場所に立ててもいいし、キャンプのときの集合写真のバックに飾ってもいい。旗は1年限りで、毎年更新していくつもりです。

3月の集いで行った旗づくりのワークでは、旗のデザインについての話を導入にしつつ、最後はアート(=旗づくり)で締めくくるという展開にしました。「そもそも旗って何だろう?」という問いかけで始め、いろいろな国の旗を見せながら、旗にはそれぞれ国民の願いが込められていることを話した上で、ヒロックの旗に込める願いをみんなで考えていきました。
事前に準備していたわけではないのですが、子供たちに国旗の話をしながら、時事的な話題でもあるウクライナの話をはずすことはできないと思い、ウクライナの国旗を見せて「青色は青空、黄色は小麦を表しているんだよ」ということを話しました。そして「ウクライナというところが今、脅かされていることを知っている?」と聞いてみると、「ロシアが攻めている」とある子が答えました。すると、「ロシアが悪いんじゃないんだよ」と返す子が現れました。表面的な理解にとどまらない意見の子が多くいて、意見交流が起きたことに驚きました。