“What”や“How”の前に“Why働き方改革”【妹尾昌俊の「半径3mからの“働き方改革”」第1回】

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妹尾昌俊の「半径3mからの“働き方改革”」
半径3mからの“働き方改革”

学校の“働き方改革”進んでいますか? 変えなきゃいけないとはわかっていても、なかなか変われないのが学校という組織。だからこそ、教員一人ひとりのちょっとした意識づけ、習慣づけが大事になります。この連載では、中教審・働き方改革特別部会委員などを務めた妹尾昌俊さんが、「半径3m」の範囲からできる“働き方改革”のポイントを解説します。

執筆/教育研究家・合同会社ライフ&ワーク代表 妹尾昌俊

忙しい先生の働き方改革、身近なところにヒントはある

以前、学校の長時間労働の問題について、小学生向けに解説してほしいと頼まれたことがある。さて、どうしたものか。うちは子どもが5人いて、小学生もいるけれど、子ども向けに分かりやすく、しかも400文字以内で説明するとなると、大人向けよりよほど難しかった。

児童生徒から「先生の仕事って忙しいの? なんで? 忙しいとどんな影響があるの?」と聞かれたら、あなたなら、どう答えるだろうか?

正解がひとつしかない話ではない。参考までに私がひねり出した文章を紹介する。

先生のなかには、毎朝7時台に来て、夜9時、10時まで頑張る人もいます。みなさん児童のために一生懸命なのはいいことですが、体をこわしてしまうこともあります。
ところで、みなさんは日ごろどんなふうに勉強していますか? 本を読んだり人から話を聞いたりしていますね。大人もそれは同じですが、忙しい先生のなかには勉強時間がなかなか取れない人もいます。先生だからといって、勉強しないでいいわけではないのです。社会や科学は日々進歩しているので、先生たちも学び続けています。日本の先生は外国と比べても、1人でたくさんの種類の仕事をしています。授業はもちろん、卒業式など行事の準備や宿題の確認、家庭への連絡や相談、給食費などのお金を扱う会計、打ち合わせ……。
先生が早く帰れるようにするには、どうしたらいいでしょうか? 宿題のコメントを簡単にしたり、夜に学校に電話をかけるのをやめたりすることも必要かもしれないですね。

出典:朝日小学生新聞2018年2月10日

この連載では学校の働き方改革について、先生方が身近に、みなさんの半径3mから行動できることを解説していきたいが、その出発点となる考えをこの文章には込めている。

長時間労働、何が問題?

拙著『こうすれば、学校は変わる! 「忙しいのは当たり前」への挑戦』などで詳しく解説しているが、学校の長時間労働を放置しては、さまざまな弊害がある。そのひとつは、先生たちの命であり、健康への影響だ。とても悲しいことだが、一生懸命に頑張っていた先生が過労死したという事案は後を絶たない。精神疾患等になって休職したり、退職したりすることを余儀なくされる方などもいる。
別の深刻な影響もある。実は、今回の小学生向けのメッセージで、一番自分としてこだわった箇所が「忙しい先生のなかには勉強時間がなかなか取れない人もいます。先生だからといって、勉強しないでいいわけではないのです」というところだ。

当たり前なのだが、先生だって、いや、先生だからこそ、日々の勉強は不可欠だ。しかもそれは、プリントづくりなどの教材研究をガリガリやるという狭い意味ではない。テレビを見ても、どこかに出かけても、それが授業のヒントになったり、何かの 糧になったりすることはあると思う。読書や人とじっくり話をするというのも、よいインプット(あるいはアウトプット)だ。

参考までに、横浜市立小・中学校への調査(N=521)によると、教師の1か月当たりの読書冊数は、0冊が32.4%、1冊が33.6%、2冊が16.1%とのこと(辻和洋、町支大祐編著『データから考える教師の働き方入門』毎日新聞出版)。私の独自調査でも、教師の1か月の読書量(小説、漫画などは除く)について、小学校教員の約3割、中学校、高校の教員の4割以上が「0冊」。多くの本を読んでいる人も一定割合いるが、大半が0冊または1冊という結果だった(拙著『教師崩壊』)。
毎日忙しいと、それほどじっくり本などを読むひまはないという教師も多いと思う。また、土日も部活指導や何かの残務で追われていると、疲れてしまって、じっくり何かから学ぼうという時間もエネルギーも減ってしまうだろう。

実際、愛知教育大等の調査によると、授業の準備をする時間がないという教員も非常に多いのだが、それと同じくらい心配なのは、「仕事に追われて生活のゆとりがない」人も小中高とも7割前後いる事実だ。

創造性・思考力を養うのは子どもたちの前に先生から

新しい学習指導要領は、インターネットやAI(人工知能)がさらに活用できるようになる中、コンピュータや機械では代替できない力を高めることを強く意識したものとなっている。創造性や深い思考力、問題解決力などだ。しかし、当の教師が日々長時間労働で疲れ果てて、自己研鑽がやせた状態では、先生たちの創造性や思考力は高まらないだろう。その先生から教えられる子どもも不幸である。

つまり、ここに逆説的な真実がある。日本の先生の多くは、子どもたちのために一生懸命、長時間労働までして頑張っている。しかし、それは結果的には、子どもたちのために ならない可能性も高いのだ。

本サイトは“教育技術”を謳っているし、働き方改革や業務改善について何をするか(What)、どのように進めるか(How)もしっかり紹介しないといけない。しかし、その前にみなさんとしっかり握っておきたいのは、Why働き方改革である。

『総合教育技術』2018年4月号に加筆

野村総合研究所を経て独立。教職員向け研修などを手がけ、中教審・働き方改革特別部会委員などを務めた。主な著書に『変わる学校、変わらない学校』『学校をおもしろくする思考法』(以上、学事出版)、『こうすれば、学校は変わる! 「忙しいのは当たり前」への挑戦』(教育開発研究所)、最新著書に『教師と学校の失敗学 なぜ変化に対応できないのか』(PHP研究所)がある。

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