「働き方改革」は進んでる?~わかる! 【わかる!教育ニュース#2】

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中澤記者の「わかる!教育ニュース」
教育ニュースNo.2タイトル

先生だったら知っておきたい、さまざまな教育ニュースについて解説します。連載第2回目のテーマは「働き方改革」です。

学習指導や保護者対応、会計業務など、ICT導入で削減できた時間数を添えて紹介

ブラック職場と呼ばれた学校でも、「働き方改革」という言葉が馴染んできました。でも、改革は現実に進んでいるのでしょうか。

文部科学省がこのほど、学校の働き方改革に関する事例集を改定し、同省サイトで公開しました(https://www.mext.go.jp/content/20220221-mxt_kouhou01-000020595_1.pdf)。3部構成で、まず3つの小中学校の取り組みを詳しく報告しています。

福岡県のある小学校は、特別教室の予約や行事予定、教員間の連絡、職員室に入った子どもの出欠といった情報を校内で共有する際、ホワイトボードへの手書きやメモ、口頭といったアナログな方法でした。そこにICTを導入。スケジュール管理やファイル共有など、組織内のコミュニケーションを円滑にするツール「グループウェア」を活用し、校務の効率化にどんな効果があったかを追いました。導入の経緯や教員たちの感想もドキュメンタリー映像にして、サイトに掲載しています。

次は、全国の学校や教育委員会が実際に行った業務改善例です。学習指導や保護者対応、会計業務など150余りの項目を、削減できた時間数を添えて紹介しています。指導要録の作成や送付を電子化して30時間減、業者への支払いを学校での現金渡しからインターネットバンキングに変えて37.5時間減など、改定で9例が追加されています。

最後はグループウェアの活用法。職員会議の議事録や保護者面談の日程調整フォームの作成、備品の使用予約などにどう使えばいいかを解説しました。

「学校以外が担うべき業務」を背負う学校が、まだ多い

働き方改革の機運は高まりました。しかし、文科省が1739の教委などに改革の進捗状況を尋ねた結果を見ると、根本からの解決にはまだ遠い気もします。

調査(https://www.mext.go.jp/content/20220304-mxt_zaimu-000019724_1.pdf)によると、2021年4~8月の教職員の時間外勤務(残業)を19年の各同月と比べたところ、調査項目の中で残業が最も少ない「月45時間以下」の割合が増えていました。とはいえ、80時間超や100時間超もまだあり、「改善した」とは言えません。

残業をなくすには、勤務時間をICカードやタイムカードなどで客観的に把握することも必要です。けれど、導入率は都道府県や政令市こそ100%に上りますが、市区町村は85.9%。使用していないところの50.8%は、導入する予定もないと答えました。

19年1月の中央教育審議会の答申では、学校が担ってきた業務を誰がやるべきかで3つに分類し、改善を促しました。その実施状況も、「学校以外が担うべき業務」「必ずしも教師が担わなくていい業務」を背負っている学校が、まだ多いと分かりました。

例えば、放課後や夜間の見回り、子どもの補導時の対応を自治体や保護者などが行うのは、24.1%。校内清掃で民間委託などをしているのは、15.5%にとどまります(https://www.mext.go.jp/content/20220304-mxt_zaimu-000019724_1.pdf)。

人手不足にあえぐ日本で、ブラック職場によい人材は集まりません。学校も例外ではなく、子どもの学びの質にも関わる問題です。改革の流れを止めてはいけません。

公立校で学ぶ「外国籍の子ども」学びの状況はどうなってる?【わかる!教育ニュース#3】はこちらです。

執筆/東京新聞記者・中澤佳子

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