個人面談で信頼を得る教師がしている8つのポイント

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知っておきたい「保護者対応」関連記事まとめ

上級教育カウンセラー

八巻寛治

保護者であっても、相手のことを思いやり、何かをしてあげたいという強い思いがあると、援助的・指導的な聴き方になりがちなのではないでしょうか。逆に言うと、それは、しっかり聴いてもらっていないと思ってしまう要因の一つになる可能性もあります。個人面談などで相手の話を聴いてあげようという場合、まずは教師側からの自己開示をすることをおすすめします。

執筆/上級教育カウンセラー・八巻寛治

まずは自己開示から

自己開示とは、自分の状況や考え方、感情などを語ることです。教師がある程度のプライベートな部分を語ることになるので、相手との心理的な距離が縮みやすくなります。

さらに、教師が自己開示した言葉がモデルとなるので、子供や保護者も話しやすくなるという効果もあります。

根本的には、教える者と話を聴く者という関係ではなく、お互いに語り合おう、自己開示しようという関係を意識することです。

本音を聴くということは、相手を受け入れること、尊重することになります。必要に応じて教師という立場の殻を置いて、一人の人間として話を聴く(傾聴)ことをおすすめしたいものです。

保護者とのかかわりに生かすポイント

「傾聴」とは一般的に、五技法(受容・繰り返し・ 明確化・支持・質問)と言われるものが大切であると言われていますが、私なりに体験してきた保護者とのかかわりに生かす傾聴のポイントを、いくつか紹介したいと思います。

イラスト/たなかあさこ
イラスト/たなかあさこ

①契約

保護者とかかわるときは、面談や相談場面であることが多いです。話の内容にもよりますが、 世間話や本題にすぐに入ってしまう人が多いように思います。

私の場合は、まず、最初に時間を提示して、おおよその目安を互いに了解した上で開始することにしています。その上で、どのような内容なのか、相談したいのか、アドバイスなどがほしいのか、ただ聴いてほしいことなのかなどを確認した上で始めるとよいと思います。

②傾聴トレーニング

前述した五技法の中にも含まれますが、一般的に紹介されている「繰り返し」や「言い換え」 などの技法があります。

繰り返し技法は、話に出てきた言葉を、聴き手がそのまま言うことで、言い換え技法は、話されたことを、聴き手の言葉で表現し直すことです。確認をすることになるので、話をする側は、話をしっかり聴いてもらったような気持ちになりやすいです。

ただ、多用しすぎると、しつこい感じにとられることもあるので気を付ける必要があります。言い換え技法の時は、ところどころに肯定的な言葉をアクセントとして入れて聴くようにするとよいので、一人の人間として話を聴かせてもらうと意識しておくとよいです。

③心理的距離が近くなる返し方

心理的な距離が縮まることとしては、自己開示を紹介しましたが、受ける側としては、人格や考え方に焦点を当てて言い換えする形でプラスのメッセージを伝えると好感をもたれやすくなります。しっかり聴いてもらっているという気持ちになりやすくなるからです。

④最小限の肯定の姿勢

面接や面談に限らず、道ばたで会った時やすれ違ったときなどは、儀礼的な挨拶のみではなく、しっかり相手側を向くこと、短い会話であっても、あいづちをうったり、うなずいたりして聴くとよいです。

態度や表情だけで、受容されたり共感してもらっているという感覚をもちやすくなります。

⑤質問の仕方

答えが「はい」「いいえ」の閉じた質問(クローズド)と、自由な答え方ができる開かれた質問(オープン)がよく使われていますが、心理的な距離が遠いと感じる人には閉じた質問にし、ある程度親しくなってからは、開かれた質問にすると、抵抗が起こりにくいのでお勧めです。

中には、質問という名目で、追及しすぎたり、時には否定と受け取られてしまったりすることもあるので、気を付けましょう。

特に、普段の子供の様子を見て「気になること」「心配なこと」を思って話を聴こうとすると、つい深く聴いてしまいがちになるので、気を付けたいものです。

⑥感情を反映させる

話し手の話から、表面的な話題ばかりで本音にかかわる内容が出てこない時には、その時の感情を確認して意識的に話題にするようにします。

⑦要約

同じ話題が再度出るような状況になったら、それまでの話の要点をまとめながら、確認して聴きます。

⑧傾聴に役立つ気持ちの伝え方

カウンセリングの技法の一つに「ワンネス・ ウィネス・アイネス」があります。

ワンネスとは、人の内的世界を共有しようとする姿勢のこと。相手の気持ちに寄り添って推測したり、確認したりする言い方です。

ウィネスは、人の役に立つことをしようとする姿勢であり、われわれ意識ともいうべき感覚のことです。具体的な主な行動は「愛でる」「リフレーミング」「行動」の三つです。疑問形で尋ねて、本人の気持ちを引き出したり、選択肢を示して本人の決断を促したりする言い方です。

アイネスとは、人とは違う自分を打ち出そうとする姿勢のことで、具体的には自己開示、自己主張の二つがあり、「私メッセージ」で語ることでもあります。自分の気持ちを自己開示したり、自分の思いを自己主張として伝えたりする言い方です。

ポイントは、セッションする際には必ずワンネス→ウィネス→アイネスの順で行うことです。常にこの順で実施すると、いったん受容してもらい、共感し、今後どうするか促すという流れになり、自分の気持ちを分かってもらえたと感じやすくなります。

さらに、その後に自己開示や自己主張をすると、アドバイスをもらったことになり、教師側の意見や考えも素直に受け入れやすくなって、しっかり聴いてもらった感覚を持ちやすくなります。

気を付けたいのが、逆の流れで実施したときです。最初にアイネス(自己開示・自己主張)をしてしまうと、その段階で、話を聴いてもらえないという気持ちになりやすくなります。また、気持ちを修正しようと思ったときに、最後にワンネスをしてしまうと、せっかくやろうとした気持ちがしぼんでしまうことにもなりかねません。くれぐれも順序を意識して実施しましょう。


八巻 寛治 先生
ガイダンスを学級づくりに活用する会代表。上級教育カウンセラー・ガイダンスカウンセラー・小学校教員ほか。エンカウンターミニエクササイズ、心ほぐしミニゲーム、課題解決のカウンセリングなどを活用した実践を紹介している。

『小二教育技術』2018年9月号より

〔参考・引用文献〕『気になる子供・保護者との信頼関係が深まる「聴く」技術』杉山雅宏/編著・八巻寛治/分担執筆(学事出版)

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