手を挙げない高学年の子供たちへの語りネタ【土作先生ミニネタ】
【知っているか知っていないかで大違い! ツッチー先生のミニネタコーナー】第6回
ツッチー先生こと土作彰先生が、子供たちに発言を求めたものの誰も手を挙げずシーンとなったときに使える教師の語りネタを紹介します。小学校高学年の子供たちに響く言葉とは!? 「教師の言葉ひとつで子供たちは変わる」というツッチー先生の今回のネタは、日頃のおもしろネタなどで子供たちとの関係性を築いた上での上級テクニックです。
目次
発言しない子供たちを変えるのは「教師の言葉」
今回は、「教師の語りで子供たちを変える」ネタを紹介したいと思います。
教師は言葉で子供の人生を決める仕事だと言ってもいいでしょう。
子供たちが困ったときに、どんな言葉を子供たちに投げかけたらいいか、という実践を紹介します。
子供たちが本当は発言できるのにしないときがあります。そのようなときは、どうしたらいいでしょうか。
たとえば、高学年くらいになると、「はい、わかった人?」と言っても手を挙げない、「何か感想はありますか?」と言っても手を挙げない、ということはよくあります。
高学年だから仕方ないな、と諦めているかもしれませんが、それは大きな間違いです。
高学年の子供たちに響くのは「論破」
例えばゲストティーチャーが来たあと、友達が何か発表したあとなどです。
「では、今のお話(発表)を聞いて、何か感想はありませんか?」と聞いたときに、みなさんの学級では何人くらい手を挙げますか?
シーン…となっていた場合、ちょっと学級の状態、ヤバいんじゃないですか(笑)!?
私はこのように言います。
「感想ある人、手を挙げて!」
すると、だいたい数人の子が手を挙げます。活発な子、利発な子です。
そのときに、
「今、手を挙げなかった子、立ちなさい。」
と言います。
すると、子供たちは「あ、しまった! 手抜きしようと思ったのにまずい、立たなきゃいけない…!」と焦ります。
そこで、
全員、起立〜!
今、手を挙げていた〇〇さん、△△さん、君たちは座ってよし。
残りの君たちは、手を挙げていなかったね。
では聞きましょう。
なぜ、先生が感想はあるかと聞いたときに、手を挙げなかったんですか?
と、ツッコミます。
感想というのは、こう書く。「感じて」「想う」から感想っていうんだよ。
今立ってる君たちは、ゲストティーチャーや友達の発表を聞いたこの45分間、何も感じなくて、何も思わなかった、ってことなんだね? え〜、ありえないね!
次の3つのどれだい?
①実は言えるけれど言わなかった(なまけ)
②寝てた
③日本語が理解できなかった
さあ、どれだ!?
と、たたみかけます。
ほとんどの子は「①なまけてた」に手を挙げます。
「なるほどね〜」と言って一旦座らせます。
そして、聞きます。
なぜ君は感想を言えるのに言わなかったの?
そうすると、みなさんの学級の子供たちは何と言うでしょうか…?
日本全国あちこちリサーチしましたが、だいたい、特に高学年は「ある言葉」を言います。
「では、正直に、恥ずかしいから言わなかったという子、手を挙げてごらん?」
と言うと、多くの手が挙がります。
そこで、次のようにツッコミます。
君は、恥ずかしいんだね?
じゃあ、家に返ってご飯を食べるとき「あ〜ん」って食べさせてもらってるんだろ?
そうすると、「いやいや、そんなことはしてもらってない!」と否定します。
え〜、ウソだ〜!
服着るときは、「ばんざ〜い! 手をあげてごらん」って、着せ替え人形のように服を着せてもらってるんじゃないの?
と言うと、「そんなことしてない!」と言います。
「なんでしてもらわないんですか?」と聞くと、
「恥ずかしいから」と答えます。
「なんで恥ずかしいの?」と聞くと、
と言います。
そう、自分でできるから、それをしないのは恥ずかしいんだよね?
君たちは、感想は言えたんだよね?
じゃあ、
言えたのに言わなかったということは、お家で「あ〜ん」と言って食べさせてもらったり、「ばんざ〜い」と言って服を着せてもらうのと同じくらい恥ずかしい
そういうことなんだよ。
と言います。
ここでもう一回「感想が言える人?」と聞くと手が挙がります。
このように論破していくことで、子供たちに当たり前のことをきちんとやらせる、些細なことに全力を尽くしていく、という意気を伝えていくことがすごく大事です。
ちなみにこれは、私のメンターである群馬県の小学校教師、深澤久先生から教えていただいたお話にアレンジを加えたものです。
子供の行動が変わるのは「価値観・人生観に迫る問いかけ」
さらに、もう一つあります。
しばらくすると子供たちは忘れて、また手を挙げなくなるのですが、そのとき、
君たちが電車に乗っていて、お年寄りや体の不自由な人が乗ってきたときに席が埋まっていたら、自分が座っている席をゆずりますか?
と聞くと、子供たちは全員「ゆずりまーす!」と言うんですね。
そこで、このように切り返します。
「うそをつけ! それは絶対無理だと思う。」
なぜならば、友達や気心知れた人たちのグループで感想を言うこともめんどうくさい、恥ずかしい、って言っている子が、見ず知らずの人たちがいる電車の中で「おばあさん、どうぞ。席、ゆずりますよ。座ってください。」なんて、言えるはずがないよね?
だから、実は、『当たり前のことを言う』ということは『ある力』を試しているんだ。
どうだい? 電車の中で席をゆずるとき、恥ずかしいだろう?
先生だって恥ずかしいよ。
断られたらどうしよう、と思うし、「俺を年寄り扱いするな!」って言われるかもしれない。
でも、言うんだ。
ましてや見ず知らずの人に声をかけるって、ものすごい恥ずかしいんだよね。
でも、やらなきゃダメなんだ。
そのときに『あること』が必要なんだ。
何かわかるか?
そう、『勇気』だべ!!
つまり、こういうときに当たり前のことに全力を尽くすということは、勇気を付けるトレーニングになっている。
みなさんは将来、
世のため人のために勇気を持って動ける人間になりたいですか?
それとも、
困っている人を見て見ぬふりをする冷たい人間になりたいですか?
「はい、冷たい人間になりたい人? …いないよね。」
「世のため人のため、行動力のある人間になりたい人?」
と言うと、みんな手を挙げます。
ならば、この感想くらい日頃から言いなさい。
そのような勇気を身に付けるトレーニングだと思ってがんばるんだ。
いいかい? 先生はそのように言いたい。
感想が言えるようにならない人間は、将来、街で倒れている人がいても、見て見ぬふりをする冷たい人間になるんだろうな…って理解するよ。
「さあ、感想がある人?」と聞くと、必ず手が挙がるようになります。
その前に大事なコト!
教師は言葉によって、
「何が恥ずかしいのか、何が恥ずかしくないのか」という価値観・人生観
を教えていくのですが、言葉ひとつで子供たちの行動は変わっていきます。
ただし、このような話をする以前に、(手前みそですが)「ツッチー先生のミニネタコーナー(下記リンク参照)」などのネタで子供たちを惹き付けて、
「この先生の話はおもしろい! 聞かなきゃ損だ!」
というような、子供たちとの人間関係を築いてからにしてください。
そうじゃないと、この話は入っていきません。
…以上、使用上の注意でした(笑)。
過去の「ツッチー先生のミニネタコーナー」はこちらから!
第1回 子供たちの心と頭を楽しくほぐす「漢字一字あてクイズ」
第2回 社会科ネタ! チーム対抗「都道府県ランキングゲーム」
第3回 社会科ネタ! 日本の反対側は本当にブラジルなのか!?
第4回 社会科ネタ! 地図帳でグリーンランドに謎の山を発見!!
第5回 学級経営につながる教師の語りネタ「今日という日は…」
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語りの上級編、いかがでしたか? 思春期の子供たちの心に響く論破、機能する問いかけは関係性が築けていればこそ。人生を左右する教師の言葉がまっすぐ伝わるように、日頃から子供たちと心通うコミュニケーションを心がけたいですね。「ツッチー先生のミニネタコーナー」もぜひご活用ください!
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土作彰(つちさくあきら)●1965年生まれ。奈良県公立小学校教諭。「学級づくり」改革セミナー主宰。『マンガでわかる 学級崩壊予防の極意: 子どもたちが自ら学ぶ学級づくり』(小学館)、『知っているだけで大違い!授業を創る知的ミニネタ45」(黎明書房)他多数。