在校生へ思いをつなぐ卒業制作
校内の壁やプール外壁には、過去の卒業制作が多数飾られ、それらは卒業生の足跡として大切にされています。ただ、設置場所や改修工事に伴う廃棄問題が発生し、近年は「個人で持ち帰るもの」が主流になってきているようです。ここでは、設置上の問題がなく、教育的にも価値があることを前提にした卒業制作の例を紹介します。
執筆/福岡県公立小学校教諭・宮原佳太
目次
オリエンテーション
はじめに、卒業制作を行う目的意識を持たせましょう。学年で大切にしてきたことを引き継いでもらいたい、ともに小学校生活を過ごした在校生へ感謝の気持ちを表したい、といった思いを基本にすることが大切です。次のような流れでオリエンテーションを行うとよいでしょう。
- 学年目標や様々な行事で学んだこと等、学年で大切にしてきたことを確かめ、在校生に引き継いでもらいたいという思いを持たせる。
- 在校生とともに活動してきたことを振り返り、感謝や応援の気持ちを持たせる。
- 「在校生へ思いをつなぐ卒業制作をしよう」というめあてを立てる。
- 参考になる過去の卒業制作があれば、写真などの資料を添えて紹介する。
計画と準備
次に、何をつくるかを話し合いましょう。どのような制作ならば目的を果たすことができるか、その制作は実現可能か、といった視点で考えることが大切です。
以上のような流れで活動を設定してみてはどうでしょうか。教師は、視点をもとにアイデアを比べさせたり、子供のアイデアについて事前に関係職員に相談したりしましょう。
制作物の例
大切にしてきたことを引き継ぐもの
- たすき
毎年、6年生が学年目標やスローガンを書いて5年生に渡していくものです。
- 旗
学校のシンボルマークやキャラクターを描いたものです。
在校生への感謝
- 教室の名前札
- 本棚
- ベンチ
- 遊具のペンキ塗り
アイデアがまとまったら、具体的な計画を立てましょう。制作から贈呈までの日程を話し合い、役割分担を決めます。複数の制作物がある場合はグループに分かれ、それぞれで計画を立てるとよいでしょう。
制作
計画に沿って、制作を行います。教師は、子供たちだけでは用意ができない材料をそろえたり、支援してもらえる教職員との連絡、調整を行ったりします。また、制作の過程が子供たちの成長につながるよう、友達と協力することや、支援してもらえる教職員とのよりよい交流のあり方について価値づけを行いましょう。
教職員や地域の方々との貴重な交流の機会になることもあり、その感謝の気持ちが卒業式につながります。
贈呈
最後に、贈呈式を行います。集会委員会と連携し、「6年生を送る会」のプログラムの最後に組み込んでもらうなど、全校の子供たちがいる場で行うとよいでしょう。
贈呈式 式次第
- 始めの言葉
- 6年生代表の言葉
- 贈呈
- 在校生代表の言葉
- 終わりの言葉
6年生代表の言葉でしっかり思いのたけを述べさせたり、在校生代表からの言葉を聞かせたりすることで、「在校生に思いをつないだ」という達成感を味わわせることが大切です。
このような活動によって在校生の憧れとなることができれば、学校の伝統となっていくでしょう。
子供たちの手で思いをつないでいく場面となるように、贈呈式のあり方にも様々な工夫をしましょう。
大切にしたいこと
6年生には、「最高学年として頑張ってきた」「学校に貢献することができた」という誇りを持って卒業してほしいものです。
子供たちが胸を張って卒業できるよう、6年生で大切にしてきたことや、ともに過ごしてきた在校生への思いを生かして卒業制作を計画してみてください。
イラスト/菅原清貴
『教育技術 小五小六』2021年1月号より