4月の先生のお話|学級開きはシンプルがベスト
新たな1年をスタートさせる学級開き。これからの学級経営を左右する大切な場面だけに、何を話せばいいんだろうと心配になってしまいます。しかし、他の先生方の学級開きを見に行くことは難しく、どんな話をしているのか事細かに聞く機会もあまりありません。
そこで今回は、学級開きで子供たちに話す言葉の一例を、ポイントとともに紹介しようと思います。
目次
Point1 空気感の演出と、協力への感謝
ありがとう。こちらを向いてくれている人がたくさんいるので、話がしやすいです。とても安心しました。
学級が始まる大切な瞬間です。話す内容はもちろん、その時の空気感も大事にしたい。そのため、誰かが少しでも話していたり、後ろを向いていたりする間は話を始めないようにしています。威圧的な印象を与えないように、穏やかな表情を意識しながら教室全体を見渡します。子供たちも緊張の初日ですから、すぐに気が付いてこちらを向いてくれることが多いです。
場が整ったところで、感謝の言葉から話を始めます。思いを汲んで聞く姿勢を取ってくれたことで、話がしやすくなったということをシンプルに伝えます。やや策略的なところがありますが「1年間でたくさん感謝の気持ちを伝えたい」という願掛けも兼ねて、このようなスタートにしています。
Point2 大事な話の前に一度緊張感を緩める
まず自己紹介をしようと思います。先生の名前は佐橋慶彦と言います(名前を黒板に書く)。〇年△組で1年間みなさんと一緒に過ごします。よろしくお願いします。
次に自己紹介です。真剣な話の前に少しだけ、緊張感を緩めておきます。私は、黒板に名前を書く際に、佐橋慶彦の「慶」の字だけを大きく書いて「難しい漢字なので、1年経っても覚えてもらえないんです。みなさん頑張って覚えてください。…テストには出ません。」と話すのがお決まりのパターンです。初日なので、気を遣って笑ってくれます。好きなものや趣味の話をするのもよいと思います。
Point3 伝えたいことを絞っておく
先生がこのクラスで一番大事にしたいなと思っていることを話します。それは「本当に一人一人のことを大切にすること」です。大切にする、にもいろいろありますよね。みんなは大切にする、と聞いてどんなことをイメージしましたか?
そして、教師の願いを語ります。一番大切な部分なので、間をおいてゆったりと。子供たちの目を見ながら話します。特に私は「一人一人のことを大切にすること」を願いとして伝えているので、全員を見るつもりで話していきます。
伝えたいことはたくさんあるのですが、初日に語る願いは1つに絞るようにしています。数多く語ると、どうしても子供の心に残らない部分が出てきてしまうからです。学級開きの時期は1時間に1つの内容のつもりで丁寧に伝えていきます。
ただ、1つに絞るとこの「一人一人を大切にする」のように、言葉の抽象度が上がり、ぼんやりとしたイメージしか伝わらない恐れがあります。そこで、子供たちに具体的な行動を問いかけ、出てきた意見を生かしながらイメージを明確にしていきます。
Point4 上手く話すことよりも、本気度を示すこと
初日から真剣に考えてくれて嬉しかったです。言ってくれたことを実現することができたら、素敵なクラスになりそうですね。先生はこれを「本当に」したいし、してほしいと思います。そうすればみんなが嫌だなぁ、心配だなぁと思わずに、安心して前向きな気持ちで教室に来ることができます。毎日がきっと楽しいです。みんなでみんなのことを大切にしていきましょう。
「本当に」という子供がイメージしやすい言葉を強調して、こちらの本気度を示します。大切なのは「みんなのことを真剣に考えている」という気持ちを伝えることです。たとえうまく話ができなかったとしても、こちらの気持ちが伝われば、きっと信頼関係が築けていくと思います。
大切なメッセージが伝わるように
クラス替えや始業式、下駄箱の移動やたくさんの配付物など、何かと忙しいことが多い初日。さらにやりたいことを詰め込むと、慌ただしい一日になってしまいます。時間がない中でもメッセージが確実に伝わるように「空気感を大切にすること」と「数を絞ってシンプルに話すこと」を意識して話すようにしています。
また、教師の姿勢や行動からもメッセージは伝わります。今回の例でも、口に出してはいませんが「聞く雰囲気を大切にすること」や「みんなの意見を取り入れていこうとする姿勢」が伝わるのではないかと思います。
逆にどれだけ内容を考えていても、ずっと暗い表情をしていたら、子供たちにネガティブな印象を与えてしまうでしょう。どんな話をするかだけでなく、どんなふうに話すかも重要です。笑顔で子供たちの前に立つことを心がけたいです。
学級開きで話す言葉を、ポイントとともに提案させて頂きました。先生方が大切にされていることを伝える際に、少しでもお役に立てれば幸いです。学級開き初日がよい一日となることを願っています。
佐橋慶彦(さはしよしひこ)●1989年、愛知県生まれ。『第57回 実践!わたしの教育記録』特別賞受賞。教育実践研究サークル「群青」主宰。日本学級経営学会所属。子どもがつながる学級を目指して日々実践に取り組んでいる。
【関連記事】佐橋先生のこちらの記事もあわせてご覧ください!
⇒学級開き:温かく安心できる学級をつくるアクティビティ