【教師の働き方改革】いつも笑顔でいるために、仕分けて任せる
毎日笑顔で、子どもたちの前に立つことができていますか? 日々の業務に忙殺されて自分の時間がほとんどもてないような状態では、自然な笑顔で子どもと接することはできませんよね。そんなゆとりのない先生にならないために、一人で抱えこまずに、周りを信頼して任せることも大切なのです。
文/千葉県公立小学校教諭 浅野英樹
目次
ゆとりを生み出すのが働き方改革
働き方改革が叫ばれています。2019年1月に中教審から答申が提出され、4月には「働き方改革関連法」が施行されました。学校現場でも、今後ますます国や自治体を挙げての働き方改革に腰を据えて取り組んでいくことになります。
国や自治体というマクロな視点はここでは置いておき、担任レベルというミクロな視点で働き方改革を捉えた時に、働き方改革によって、担任の先生がどのような状態になれば成功と言えるのでしょうか。私は、「担任の先生が、日々笑顔で子どもたちの前に立つ」ことができるようになれば、働き方改革は一定の成功を得たと言えるのではないかと考えています。
「教師が最大の教室環境である」という言葉の通り、特に低学年においては、担任の先生が日々笑顔で子どもたちの前に立つことは、子どもたちに安心感と安らぎを与え、上質の教育効果を発揮します。堀裕嗣先生は、「教師に必要な資質」の一つに、「いつも笑顔でいること」を挙げています。
しかし、日々、笑顔で子どもたちの前に立ち続けるのは、担任の先生にゆとりがないと、なかなか難しいことです。そのゆとりを生み出すのが、働き方改革なのです。担任の先生が時間的にも精神的にもゆとりを持てるようにするために、担任レベルでできる働き方改革を推進していくことが大切です。
「教師だけが頑張っている」状況を変える
無我夢中だった若手の頃、私は朝早くから夜遅くまで、日々教材研究や学級事務に没頭していました。やりがいがあり、精神的な辛さはさほど感じませんでしたが、寝不足が続き、体の疲れを感じていました。
そんな時、ある本に書かれていた言葉が目に飛び込んできました。
「なんで子どもたちが生活する教室なのに、僕だけが頑張っているんだろう」
それは、岩瀬直樹先生の『「最高のチーム」になる! クラスづくりの極意』という本でした。一人でできることには限りがある。子どもたちをはじめ、周りを信頼し、任せる。自分一人であれもこれもと抱え込んでいた当時の私にとって、この考え方はまさにパラダイムシフトでした。
この考え方を知ってからは、ずいぶん気持ちにゆとりが持てるようになりました。まさに、私にとっての働き方改革のきっかけとなりました。
子どもたちを信頼し、任せる
いきなりですが、問題です。みなさんの学級を思い浮かべ、次の①~③を、「子どもたちに任せていること」「担任がしていること」に分けてみてください。
- 掲示物をつける。外す。
- ノートやプリントなどを配る。集める。
- 全員出したかを確認する。テストの丸付けをする。
私は、③のみ自分で行い、①・②は子どもたちに任せています。
この三つに限らず、こうしたこと全てを担任の先生が行うとしたら、いくら時間があっても足りません。子どもたちだけでもできると思われることは、信頼して任せることがポイントです。
低学年の子どもたちは、お手伝いが大好きです。「先生、何か手伝うことない?」と聞いてきてくれます。お手伝いの経験を積むことで、周りを見て、他の人のことを考えて行動できるようになっていきます。担任の先生がにっこり笑って、「とっても助かるよ。いつもどうもありがとう」と伝えることで、子どもたちとの関係性も良くなっていきます。
保護者を信頼し、任せる
続いて問題です。計算ドリルを宿題に出しました。みなさんの学級では、丸付けと直しをどのようにしていますか。
- 丸付けと直しは学校で行う。
- 丸付けは家庭、直しは学校で行う。
- 丸付けも直しも家庭で行う。
私は、③です。丸付けも直しも家庭で行ってきてもらい、私は「見ました」ハンコを押すだけにしています。これなら、30人の子どもたちがいても、数分で終わります。私の学級では、登校してすぐに宿題を提出してもらうので、朝の会が始まるまでに宿題チェックが終わります。
保護者には最初の保護者会の際に、「宿題は、家庭学習の習慣を付けるために、毎日出していきます。保護者の皆様にお子様の学習状況をご理解いただくために、宿題は丸付け・直しまでご家庭で行い、学校に持たせてください」と、お願いをします。
もちろん、折に触れて「宿題の丸付け・直しへのご協力、いつもありがとうございます」とお礼の言葉を伝えるようにしています。決して「してくれるのが当たり前」ではありません。
周りの人を信頼して任せられるところは任せる
いかがでしょうか。教師は真面目で責任感のある方が多いので、どうしてもあれもこれもと一人で抱え込んでしまいがちですが、このように一つ一つの物事を見直していけば、周りの人に任せられることが実は多くあることが分かり、気持ちにゆとりが出てきませんか。
今回紹介したのは子どもたちと保護者に対する事例ですが、この他にも、いつも支えてくれる学年の先生方もチームの仲間です。ぜひ、周りの人を信頼し、お互いに任せられるところは任せ、自分一人で抱え込むことのないようにしてください。
担任レベルの働き方改革が推進され、担任の先生にゆとりができ、日々、笑顔で子どもたちの前に立てますように……。
浅野英樹( あさの・ひでき) 香川県出身。千葉県公立小学校教諭。米国在外教育施設での勤務や千葉大学教育学部委託研究生としての勤務を経験。著書は『小1担任パーフェクトガイド』『授業をアクティブにする! 365日の工夫 小学2年』(ともに明治図書)等。
イラスト/コダシマアコ
『教育技術 小一小二』2019年7/8月号より