【通信簿】所見作成は子どもの意欲を高めるために!

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埼玉県東松山市教育委員会教育長職務代理者

稲垣孝章

「通知票」「通知表」「通信簿」と表記のしかたがいくつかありますが、その違いを考えたことはありますか? ここでは、通信簿の考え方や所見を作成する際のポイント、手順などについて、前・埼玉県東松山市立公立小学校校長の稲垣孝章先生に教えていただきました。

文/東松山市立総合教育センター副所長 城西国際大学兼任講師 (前・埼玉県公立小学校長) 稲垣 孝章

通信簿をもらって喜ぶ子どもたち
イラスト/斉木のりこ

「通信簿」としての名称の意義

「通知票・通知表・通信簿」の語句の違いは何でしょうか 。

「通知票」の「票」は、かつて個々の成績を順番に提示していた時に記す短冊を示す意味をもち、学校から保護者に一方的に成績を通知するものととらえられます。また、「通知表」の「表」も同様に、成績を一覧表として保護者に通知するものとして考えられます。

一方、「通信簿」は、学校と保護者が通信する準公簿としての意味合いをもち、相互交流を図ることを前提としています。現在では古めかしい印象を与える面もあることから、「あゆみ」や「のびる子」などの平易な名称にするケースが多く見られます。

本来、通信簿は必ず作成しなければならないものではありません。書式についても学校ごとに定めることから、手書きで作成したり、パソコンで作成したり体裁等も様々です。

ただし、通信簿の本来の意味からすると、学校と保護者の通信であることから、教師の所見欄だけでなく、保護者からの返信欄を設けることが求められます。学校と家庭で、連携を図って子供たちを育てるという考え方が基盤となります。

「所見」を作成する際の七つのポイント

所見を作成する際には、どのようなポイントがありますか。

  1. 所見の文章表記は、子供向けではなく、保護者を対象とした文章表現にします。
  2. 専門的な教育用語は避け、理解しやすい平易な文章表現にします。
  3. 他の子供との比較ではなく、その子なりのよさを中心に取り上げます。
  4. 課題となる内容の記載には十分配慮し、次への意欲につながる文章表現にします。
  5. 課題は、教師の指導不足ととらえ、子供や保護者の責任にしないことが大切です。
  6. 担任だけの主観による独断や偏見とならないように、他の教師の意見も取り入れます。
  7. 誤字や脱字、文章の主述の歪みなどがないように多くの目で見てもらいます。

多くの子供の所見を作成していると、誰でもミスが出ることがあるものです。そのために必ず管理職を含めた多くの教師の目で検閲することが大切です。

「よさ」と表記する時は、比較ではないのでひらがな表記か。

「よい所見」を作成するための手順

よい所見を作成するためには、どのような手順が必要ですか。

●係活動によく取り組んでいた子の例

①事実としての「よさ」を取り上げる

「係活動によく取り組んでいました。」

↓ よい所見にするために

②具体的な「行動の事実」を取り上げる

「生き物係として、責任をもって生き物の世話をする姿が見られました。」

↓ さらによい所見にするために

③事実をもとに、教師の「所見」を盛り込む

「生き物係として、責任をもって生き物の世話をする姿は、多くの友達から称賛され、感心しました。」

「課題のある子」の 所見作成上の留意点

「課題のある子」の所見作成上の留意点、課題のある子の所見を書く時に、留意することは何ですか。

「集団に適応しにくく孤立しがちな子」「友達への言動が乱暴な子」「基本的な生活習慣が、身に付いていない子」「集中力に欠け、学習意欲に乏しい子」等、現実には、様々な課題のある子が学級には存在しています。

また、現在は通常学級に在籍する「発達障害のある子」についても、所見の書き方を十分に配慮しなければなりせん。

特に、このような課題のある子については次のような点に留意して所見を作成することが求められます。

  1. 課題となる項目の記載は最小限とし、その子なりのよさから取り上げる。
  2. 課題は、その子の以前の状況から進歩している様子を伝えることを中心とする。
  3. 課題は、子供のよさを伸ばしながら保護者と子供と共に手立てを講じることを伝える。
  4. 課題の克服に向けた努力により、その子に内在する力を発揮できるような表現にする。
  5. 課題の克服に向けた挑戦が、前向きで二学期に向けて希望がもてるような表記にする。

通信簿の仕上げは、「言葉かけ」

通信簿を子供たちに渡すときに、配慮することは何ですか。

「通信簿の仕上げは言葉かけ」という認識をもつことが大切です。様々な評価資料を累積し、子供のよさを取り上げた通信簿であっても、その渡し方や言葉かけによって、子供の印象も大きく異なります。

まずは、教師のそばに一人ひとりの子供を呼び、脇に座らせて、次のように具体的な言葉をかけることが求められます。

先生と子ども

Mさんは、理科で星座の観察がとてもよくできました。水泳でも自分のめあてが達成できました。二学期も毎日の自主学習ノートを続けると、漢字の力ももっと伸びると思います。期待しています。

その際、各教科の評定については、根拠を明確にし、二学期に向けて学習意欲が高まるような言葉かけをすることが大切です。

また、子供自身が感じている評価と教師の評価にズレがあるように感じた場合には、子供が納得できるように、励ましの言葉を補足するなどの配慮が求められます。

☆ちょっと気を付けたい文章表記☆

●「〜が素晴らしいです。」という文章表記について

現在、形容詞の後に丁寧語の助動詞として「です」は幅広く使われていますが、本来、「です」は「〜素晴らしい作文です。」等、体言やそれに準ずるものに接続します。文頭の表記は断定の助動詞「だ」の丁寧語となり、このような表現に違和感を覚える人も多いようです。

イラスト/斉木のりこ・横井智美

『教育技術 小五小六』2019年7/8月号より

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