大人たちをつなぐ場所をつくる【あたらしい学校を創造する #23】

連載
あたらしい学校を創造する〜元公立小学校教員・蓑手章吾の学校づくり
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HILLOCK初等部スクールディレクター

蓑手章吾

先進的なICT実践と自由進度学習で注目を集めた元・小金井市立前原小学校教諭の蓑手章吾(みのて・しょうご)先生による連載です。公立学校の教員を辞して、理想の小学校を自らの手でつくるべく取り組んでいる蓑手先生に、現在進行形での学校づくりの事例を伝えていただきます。今回は、大人たちのつながりを強化するための枠組みについてのお話しです。

連載【あたらしい学校を創造する ~元公立小学校教員の挑戦~】
蓑手章吾(HILLOCK諸島部スクールディレクター)

「バディ・クラブ」と「学びの研究所」

僕らヒロック初等部では、子供たちとは別に、大人たちのつながりも強化したいと考えています。そのための枠組みが、すでに発足させた「バディ・クラブ」と、まもなく発足させる「学びの研究所」です。

以前、ヒロックでクラウドファンディングを行ったことをお話ししました。それは、お金集めとともに仲間集めを目的にしていました。ファンドに参加した人には、開校までは「バディ・クラブ」に所属して学校づくりにかかわっていただくという仕組みにしたところ、学校の教員だけでなく、企業人などバラエティに富んだ方々に集まっていただきました。来年度入学する子供の保護者の方にも一部参加していただいています。

前回お話しした「入学予定者の集い」を行うのと併行して、「バディ・クラブ」の方も月1回くらいで月例会を開いています。集会は自己紹介が中心で、横のつながりを意識して行っているところは「入学予定者の集い」と変わりがありません。

「バディ・クラブ」で何を相談しているかというと、例えば、スクールバスの導入についてです。バスというほどではないですが、ハイエースのような車を買おうと検討中なんです。そこで「バディの中でディーラーに詳しい人がいたらアドバイスをください」という感じで相談しています。

クラウドファンディングのリターンとして自費出版の本をつくっているのですが、校正や発送業務を手伝ってくれる人を募集したところ、結構乗ってくれる方々がいらしたので、何でも呼びかけるようにしているんです。すると、やはりコアにかかわってくれる人同士が仲良くなるという現象が起きています。

僕がゲストとして呼ばれたイベントにバディが参加してくれたり、つい最近は、たまたま僕がリアル参加したイベントにバディも来ていて、会えた記念に一緒に写真を撮ったりするという出来事もありました。

フェイスブックの非公開グループもつくっていて、まだ形になる前の思いつきというか、生煮えのアイデアを語り合っています。こんなことをしようと思っているとか、こんな悩みがあると投げかけると、すぐにそれに対するコメントやアドバイスが返ってきて助かる、という場として機能しています。

今、バディ・クラブで話題に上っているのは、学校のクラブ活動や部活動のように、バディの中でさらにグループをつくっていこうという話です。公教育関係のグループ、アート関係のグループ、特別支援関係のグループなどの案がすでに出ています。必要によっては、そこで講座や読書会をしてもいい。もちろんどのグループに所属してもらっても構いません。ざっくばらんに相談できるような、緩い感じのオンラインサロンになればいいかなと思っています。

ヒロックでの様子

教育に関心がある大人たちの学びの場

そうした中で、「学びの研究所」を立ち上げます。「学びの研究所」は、ヒロックでの学びを定期的に話し合い、学びとは何かを研究する仲間が集う場になります。「学校づくり」に保護者や支援者を巻き込むのとはまた別に、「学び」について研究しあえる場をつくるということです。

「バディ・クラブ」の方々はそのまま「学びの研究所」の研究員に移行いただく予定ですが、新たに外部の方からも参加を募ろうと考えているところです。こちらは年会費をいただくことにはなりますが、現役の教員に限らず、教育に関心のある人ならばどなたでも参加していただくことができます。(この記事をお読みいただいている先生で興味ある方がいたら、ぜひご連絡ください!)

位置づけとしては、ヒロックの中心にいるのが子供たちで、その周りに保護者やシェルパ(ヒマラヤ登山のガイドを意味する言葉からとった、ヒロックでの教師の呼び名)がいて、さらにその周りにバディや「学びの研究所」の研究員がいるという図式になります。子供の学びの場がヒロックだとしたら、「学びの研究所」は大人バージョンの学びの場です。互いに連関しながら学校づくりをしていくというイメージを描いています。

次回も、「学びの研究所」でやっていきたいことについて、さらに話を続けます。

〈続く〉

蓑手章吾

蓑手章吾●みのて・しょうご 2022年4月に世田谷に開校するオルタナティブスクール「HILLOCK初等部」のスクール・ディレクター(校長)。元公立小学校教員で、教員歴は14年。専門教科は国語で、教師道場修了。特別活動や生活科・総合的な学習の時間についても専門的に学ぶ。特別支援学校でのインクルーシブ教育や、発達の系統性、乳幼児心理学に関心をもち、教鞭を持つ傍ら大学院にも通い、人間発達プログラムで修士修了。特別支援2種免許を所有。プログラミング教育で全国的に有名な東京都小金井市立前原小学校では、研究主任やICT主任を歴任。著書に『子どもが自ら学び出す! 自由進度学習のはじめかた』(学陽書房)、共著に『知的障害特別支援学校のICTを活用した授業づくり』(ジアース教育新社)、『before&afterでわかる! 研究主任の仕事アップデート』(明治図書出版)など。

連載「あたらしい学校を創造する〜元公立小学校教員の挑戦」のほかの回もチェック

第1回「あたらしい学校を創造する」
第2回「ちょうどいい3人の幸運な出会い」
第3回「なぜオルタナティブスクールなのか」
第4回「多数決に代わる『どうしても制度』とは」
第5回「自分たちのスクール憲法をつくる!」
第6回「スクール憲法の条文づくり」
第7回「教師と子供をどう呼ぶべきか」
第8回「模擬クラスで一日の流れを試す」
第9回「学年の区切りを取り払う」
第10回「学習のロードマップをつくる」
第11回「教科の壁を取り払う」
第12回「技能の免許制を導入する」
第13回「カリキュラムの全体像を設計する」
第14回「育むべき『学力』について考える」
第15回「自由進度学習をフル活用する」
第16回「保護者の意識と学校の理念を一致させる」
第17回「クラウドファンディングでお金と仲間を集める」
第18回「クラウドファンディングでモノと人を募る」
第19回「体育の授業目的と方法を再定義する」
第20回「道徳教育の目的と手法を再定義する」
第21回「入学希望者の選考を行う」
第22回「入学予定者の顔合わせを行う」

※蓑手章吾先生へのメッセージを募集しております。 学校づくりについて蓑手先生に聞いてみたいこと、テーマとして取り上げてほしいこと等ありましたら下記フォームよりお寄せください。
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取材・構成/高瀬康志 写真提供/HILLOCK

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