学級担任の時短術⑧「今こそ保護者対応を見直そう」

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千葉県公立小学校校長

瀧澤 真

仕事を効率化しつつも、授業や学級経営の質が落ちないような時短術について、毎月22日公開、全12回で連載していきます。第8回のテーマは、「保護者対応」です。 保護者と信頼関係を築くための三つのポイントを解説します。

執筆/千葉県公立小学校校長・瀧澤真

保護者と信頼関係を築く3つのポイント

多忙感は、主観的な側面が強いものです。やるべきことが明確で、ゴールに向かって確実に前進しているときには、あまり多忙だとは感じないでしょう。一方で、先が見えない状況というのは多忙感、疲労感が増します。

学校で起こる先の見えない状況の多くは、生徒指導や保護者からの苦情対応ではないでしょうか。特に保護者とのトラブルが大きくなれば、解決の道筋が見えないまま、時間を大幅にロスすることになります。

極端な例ですが、保護者とのトラブルが裁判沙汰に発展してしまったケースもあります。そうなれば、時間とお金、さらに精神的ダメージは甚大です。

本来であれば、一学期に保護者との関係を固めておきたいところです。しかし、学級開きに始まり、学校によっては運動会などの行事もあり、忙しい日々を過ごしてきたと思います。そこで、後半をスムーズに過ごすために、ここで自分の保護者対応をふり返ってみましょう。そして、もしできていないことがあれば、今からでも遅くはありません。すぐに改善しましょう。

①学級通信や連絡帳でつながる

何かことが起きてから保護者と関わろうとしてもうまくいきません。平時に積極的に関わりをもち、この先生ならば安心だと思ってもらえるようにしておきましょう。とはいえ、昨今はコロナ対策などの観点から保護者と接触する機会は激減していると思います。そこで、直接会わなくても、関わることができる手立てを工夫しましょう。

私の場合は、保護者との関わりを意識した学級通信を定期的に出すようにしていました。学級の様子だけでなく、教育に関する自分の考えや、自身の子供のころの話なども書いていましたので、保護者からは親しみをもってもらえたように思います。

パソコンで学級通信を作成する教師。

実際に面談などでお会いした際には、「先生とはしょっちゅう会っている気がする」と、多くの保護者に言っていただきました。学級通信を通じて、日々私に語りかけられている気持ちになっていたようです。

学級通信を作成する時間がとれないという方は、連絡帳を活用してはいかがでしょうか。1日に一人、二人程度でいいので、その子のがんばっていたことなどを連絡帳で伝えるのです。電話で伝えるよりも、相手の時間を奪わないので、おすすめです。

また、保護者から連絡帳で、子供の欠席連絡、体育の見学の連絡などをもらうこともあるかと思います。その際、「分かりました」としか書かない先生がいますが、これはもったいないことです。子供の様子や気遣う言葉を添えることで信頼が高まりますし、双方向のコミュニケーションの機会となります。

ただし、苦情の場合には細心の注意が必要です。文章での返事は誤解を招くことも多いものです。特に苦情に対して感情的になって返事を書くと、それが大きなトラブルに発展していきます。

どうしても文章で返事をする必要がある場合は、別紙に書いて、それを学年主任や管理職にチェックしてもらってから、その別紙を連絡帳に貼るようにします。

②トラブルは先手必勝で

子供同士のけんかなどのトラブルが起きたときに、どうしていますか。かつては、「子供から親に報告させる」という方が多かったのですが、現在では、これは最もトラブルに発展しやすい対応と言われています。

「連絡帳で知らせる」という方は、今でも多いかもしれません。しかし、文章というのはやはり誤解を与えやすいものです。相手の反応に応じた対応やフォローもできません。そこで、電話で伝えることを基本としましょう。

ただし、ここで一つ気を付けたいポイントがあります。

それは、子供が保護者に報告するよりも前に、教師から情報を伝えることです。

なぜなら、子供は自分の都合のいいように、事実を加工して話すことが多いからです。また、人は最初に聞いた話の内容に影響されやすいということもあります。つまり、子供が自分に都合のよい話を保護者に先に伝えると、その後の教師の話を素直に聞き入れてもらえなくなる可能性が高くなるのです。

ですから、先手必勝、子供が保護者に話をするよりも先に、けんかがあったことや、どのように対応したかを伝えるようにしましょう。

なお、かすり傷程度であっても、どちらかが怪我をした場合などには、家庭訪問をして直接話をすることが大切です。

③苦情への対応を決めておく

突然来校し、何時間も帰ってくれない保護者や、いつも勤務時間外に長電話をしてくる保護者などがいます。こういう保護者には、どう対処するかをあらかじめ決めておきましょう。

例えば、来校した場合、「校外での会議があるので○時」までしか対応できない、終わらなければ後日にお願いしたいなどと伝えます。同僚に、長くなるようなら「会議です」と声をかけてくれるように依頼しておくのも効果的です。

電話が長くなった場合も同様です。特に話が一方的になってきたら、生徒指導などの理由で一旦電話を切らせてもらいましょう。

いずれにせよ、もめそうになったらすぐに、学年主任や管理職に相談し、一人で対応しないようにしましょう。

電話で苦情を入れてきた保護者に、毅然な対応をとる教師。

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イラスト/バーヴ岩下

『教育技術 小一小二』2020年11月号より

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