ページの本文です

道徳教育の目的と手法を再定義する【あたらしい学校を創造する #20】

連載
あたらしい学校を創造する〜元公立小学校教員・蓑手章吾の学校づくり

HILLOCK初等部スクールディレクター

蓑手章吾

先進的なICT実践と自由進度学習で注目を集めた元・小金井市立前原小学校教諭の蓑手章吾(みのて・しょうご)先生による連載です。公立学校の教員を辞して、理想の小学校を自らの手でつくるべく取り組んでいる蓑手先生に、現在進行形での学校づくりの事例を伝えていただきます。今回は、教科名に縛られない学び方についてのお話です。

育むべき「学力」について考える【あたらしい学校を創造する 第14回】

SEL(社会情動性学習)の重視

前回、ヒロックでは体育をどうするのかという話をしましたが、同様に、道徳の授業はどうするのかという質問を受けることがあります。ヒロックが道徳についての教育をどう捉えているかについてもお話しします。

ソーシャルエモーショナルラーニング(SEL)という教育分野があります。日本語としては、社会情動性の学習と訳されます。これは、海外の学校では広く実践されている教育の一つです。アンガーマネージメントなどのメンタル面やコミュニケーション能力の育成をしていくものが多いですが、内容は固定されたものではなく、道徳的なものをはじめ、何をソーシャルエモーショナルラーニングとするかは学校しだいというところがあるようです。

気持ちや心の健康を安定させるという意味では、前回お話しした、体育での体の動かし方というものもそうだし、コミュニケーション全般も社会性という面から見れば、ソーシャルエモーショナルラーニングのひとつになります。また、探究学習の中に「自分について知る」というテーマが出てくれば、それもまさにソーシャルエモーショナルラーニングの中心となるものです。

豊かな社会情動性を獲得していくことが、最終的に子供の自信につながっていきます。カリキュラムの全体像のところでお話しした通り、子供たちの「自信」(Confidence)につながるものとして、「創造」(Creativity)、「思慮」(Caring)、「貢献」(Contribution)の3つのCを挙げていますが、この3つのコンピテンシーには、ソーシャルエモーショナルラーニングが大きく寄与すると考えています。ソーシャルエモーショナルラーニングでの学びがこの3つの行動に結びついているところを僕らシェルパ(ヒマラヤ登山のガイドを意味する言葉。ヒロックでは教師をこう呼んでいる)が見取り、子供たちに価値づけして返していくことが重要になると思っています。

たとえば、人に親切にしなさい、やさしくしなさい、誰にでも分け隔てなく接しなさいなどということを、どこの学校でも家庭でも指導していると思いますが、これは本来誰かが子供に強いるものでしょうか。親切ややさしさや公平は、巡り巡って自分のためにもなるはずのものです。だから、大人に言われてやるものでも、誰かに褒められるためにやることでもないのです。

ヒロックでの様子

既存の教科を拡張して道徳に接続させる

学校の先生に役立つ情報を毎日配信中!

クリックして最新記事をチェック!
連載
あたらしい学校を創造する〜元公立小学校教員・蓑手章吾の学校づくり

人気記事ランキング

教師の学びの記事一覧

フッターです。