クラウド・共同編集を活かした、一歩進んだ「ICT活用法」

「1人1台端末」時代でも、小学校教育がめざすのは「主体的・ 対話的で深い学び」。 子供の「資質・能力」の育成に資する「ICT活用法」について、 実践例と理論から考えます。

一歩進んだ「ICT活用法」
イラストAC

多様な学習状況の子供たちに、個別最適化された学びが提供できる

信州大学教育学部助教・佐藤和紀

学校の先生方は、ICTの導入によって授業がどう変わるかということに関心をもたれているかもしれません。しかしその前に、ICTの導入によって、学校生活が変わる、学習全体が変わるという大きな見方をする必要があります。

そもそもICTはコミュニケーションツールであり、多様なアプリケーションは多様な機能の拡張を行うものです。つまりICTを活用するということは、学校における多様なコミュニケーションを拡張するものだと捉えることが大切です。

ですから、教育アプリケーションを使って授業だけを考えるのではなく、インターネットのクラウドで、汎用的なアプリケーションを活用し、先生の働き方改革にも寄与するような便利な使い方をしていくことから始めてみましょう。

例えば、保護者にアンケートをとるようなことも多くありますが、紙ベースではなく、クラウドを活用すれば、短時間で実施・集計を行うことができます。

同様に校務分掌における、他の先生とのやりとりや委員会活動での子供とのやりとりもクラウドを活用することで便利に変わっていくでしょう。

先生方がまずそのようにクラウドを活用する感覚を培ったうえで、授業でも使うというほうがよいと思います。学校生活の中で便利に使う体験をし、日常的に活用することが先生にとって大切な研修になっていきます。

クラウドというと、何か特別なものだと思う先生もいるかもしれません。しかし電車に乗るときのICカード一つをとっても、クラウドによって支えられています。そのように、身近で便利なものとして活用していくことが必要です。

目の前の子供たちが、今後どのような時代を生きるのかを考えれば、まず先生が率先して便利に活用することから始めることが大切だ、ということが分かるはずです。

日常の授業や学級経営のコミュニケーション力が重要

さて、では授業場面ではどう活用していくかですが、ICT活用というと、何か特別なことをやるものだと思う先生がおられるかもしれません。

しかし実際に、活用がうまくいっている学校は、共同編集を行うなど、比較的地味な場面で日常的に活用しています。

例えば、物語文を読んだときの感想を共同編集ページに書いていくといったことがそれです。共同編集ページに書き込むのは、自分のノートに書くのとは異なり、今考えを書いている友達の感想を見ることもできます。それを見て、書き方に悩んでいる子は「ああ、こんなふうに書けばいいのか」とヒントを得られるし、自分と異なる感想をもった子には、「もっと詳しく聞いてみよう」と思ったりすることもあるでしょう。さらには、疑問が生じたことをインターネットで調べることも可能です。そのように一人ひとりが現状に応じた学びを進めることが可能になってきます。

これは地味な活動ですが、多様な教科の多様な場面で活用が可能ですし、持続的に活用できます。持続するからこそ使い方のコツもつかめてきます。

このように最初から効果的な活動を生むのではなく、効率的にかつ日常的に使うことで、効果的に活用することができるようになるのです。ですから、まず継続して使えるような地味な活動からの導入が大切です。

個別最適化された学びをめざして

このような学習に慣れてくると、子供たちは次第にコメントを送り合うようになります。「これがいいね」と評価したり、「ここはどういうこと?」と尋ねたり、「ここはこうしたらもっとよくなるかも」とアドバイスを送ったりしていくわけです。

それが自由にできるようになると、子供たちはやがてリアルタイムで、チャット空間で話を聞き、伝え合うようになっていきます。それは持続可能なことから始めていった結果、可能になることなのです。

多様性への対応もICT活用の特徴です。これまでは先生一人で対応できなかった多様な学習状況の子供たちも、クラウドで個別の学習をさせることで、個別最適化された学びが提供できます。

あるいは風邪で休んだ子にも対応ができます。休んでいて熱が下がることもありますが、「ちょっと調子がよくなったら見てみて」と伝えておけば、その日の学習で何が行われているかをクラウド上で見ることもできます。

これまでは教室という閉ざされた空間に行かなければ手に入らなかった情報が、自宅にいても、病院にいたとしても手に入るわけです。それによって、常に先生や友達とつながれるという安心感が生まれます。

また長野県のように、中山間地域の小規模校が多い地域ではICTを活用してつながることで、他校の子供たちとともに学習をすることで多様性を担保できます。このような持続可能性と多様性が大事なポイントと言えるでしょう。

ただし最初に説明した通り、ICTの活用は、コミュニケーションの拡張を行うものです。それだけに、元々もっている先生のコミュニケーション力を見直す必要があります。

先生が元々もっている授業でのコミュニケーションのあり方や学級経営上のコミュニケーションがしっかりしていることが重要で、それがないと、十分な効果を得ることはできないのです。

ICT活用で対話に時間がとれるし、より深いコミュニケーションが生まれる

栃木県公立小学校教諭・稲木健介

学習指導要領が求める「深い学び」は概念的な理解だと言われたりします。「概念は教えられない」と言われます。ですから獲得する子供自身が主体になり、他者と対話しつつ概念形成をしていくような学習過程が必要です。

そのように子供が主体になって学習するような単元を設計するために、総合的な学習の時間で示されているような、探究的な学習の流れを参考にして、各教科の学習過程を考えています。

一人1台の情報端末をもつことで、子供が主体になって課題を設定し、子供が情報を集め、子供が整理・分析して、子供がまとめたり表現したりするという学習が拡張されていくと感じています。

そこで端末を活用することで、それぞれの学習の過程で子供同士の対話やコミュニケーションがどのように拡張されていくか、実践を紹介していきたいと思います。

子供に任せる部分が増え、教師はサポート役になる

まず、どんな教科の単元・授業でも課題を設定し、その課題を解決するために何をがんばりたいか、めあてを書いたりすると思います(※)。

※課題とめあては、地域によって使い方が異なったりするが、ここでの課題は、追究し解決すべき問題(学習課題)、めあては解決に向けた自分の取り組みのポイントや見通しという意味。

そのとき、これまでは各自のめあてをノートに書いていたと思いますが、ノートだと他の子には見えません。そうすると友達のがんばりが見えなかったり、書ける子は書けるけれども、苦手な子は何を書いてよいかも分からなかったりします。ですから、これまではノートに書いて発表していたものを、共同編集ページに書いていきます。すると友達のがんばりも分かるし、困った子は友達の考えを参考にして書くことができるため、苦手な子の書く量が増えたりしていきます(資料1参照)。

資料1 友達とめあてを共有する|課題の設定
資料1

次に、解決に向けて情報を集めていくわけですが、インターネットを活用すると、そこで得られる情報に大きな差が生じたりします。

そこで、子供同士が得た情報を共有し合うようにしています。これまでなら、先生が集めて紙ベースで与えていたものを、子供がネットで検索し、必要なものはテキストや画像、URLなどで共有することで、全員の情報量が格段に増えます。

次はその増えた情報の整理・分析ですが、例えば班ごとに役割分担をして、思考ツールなどを使って整理をしていったりします(資料2参照)。

資料2 一緒に情報を集める(共同編集)|情報の収集
資料2

まず、集めた情報を共有したり、役割分担や整理・分析の方法を相談したりする中で、課題解決に向けた子供同士のコミュニケーション量が非常に増えていくと感じています。

こうした情報を整理した画面は共有していくのですが、それを見て具体的に知りたいことがあれば、直接その班に聞きに行く場合もあるし、チャット機能で情報共有したりもしています。こうした過程では、途中に挙手発表に時間を割く必要がない分、対話に時間がとれますし、共有した情報を前提に対話するため、より深いコミュニケーションが生まれてきています。

子供たちは思考ツールを含め、多様な方法を自由に使って整理をすることで、「学び方」も学んでいきます。ちなみに、国語の授業では、「ごんぎつね」の6場面にBGMをつけるため、叙述を深く読み取っていったのですが、それを説明するための整理の方法も一人ひとりが工夫をしています(資料3参照)。

資料3 友達の見方・考え方、整理・分析のしかた|整理・分析
資料3

特に資料3左上の整理方法については、他の子供たちも感心していました。

さらにまとめて発表する場面でも、全員が共有することで互いに評価し合い、フィードバックがなされていきます。

このように、端末を活用することで、それぞれの学習過程において、子供たちのコミュニケーションが拡張されていきます。

すると、形式的な発表ではなく、深い学びにつながるような本質的なコミュニケーションにつながっていくと感じています。

また、子供たちがコミュニケーションの主体になり、任せる部分が増えれば増えるほど、教師はサポート役になっていきます。

子供が主体で学習するようになり、学びのスピードも速くなりました。何より楽しそうに学ぶ姿を見ると、ますます子供が主体で学べるようにしてあげたいと思います。そしてよりよいサポートの仕方を考えるようになりました。

共同編集での情報共有により、考えが異なる子の考えや説明のしかたを即時に学べる

信州大学教育学部附属松本小学校教諭・織田裕二

本校では、今年度から本格的に情報端末の導入・活用に取り組み始めたところです。そのため導入当初は、端末の活用で困ることも多くありました。ちなみに私の学級では、私も含めた全員で対話しながら、学級の決まりを決めているのですが、今年度はそんなこともあって、端末の活用に関わるものが多くなっています(資料1参照)。

現在、端末の導入によって、私がメリットを強く感じているのは、共同編集ができることと即時的に情報にアクセスできることです。

それについて具体的に実践を紹介しながら、説明をしていきましょう。

学習のまとめで変わったのは、学習の発信

例えば、算数の授業で自分の考え方を図と式で説明することはよくあります。それを一人ひとり黒板で発表すると、非常に時間がかかります。しかし共同編集を行って共有することで、考えが異なる子の考えや説明のしかたを即時に学ぶことができます(資料2参照)。

共同編集を行って共有する
資料2

社会科の授業で地震について学習したときは、教頭先生にインタビューしたり、端末を持ち帰って自分自身の通学路をお家の方と一緒に写真を撮ったり、調べたりしました。

それを自助、共助、公助、その他の四つに整理をしていったのです。それを共有することで、「これもそうなんだね」と納得できたものは、すぐに自分のものに取り入れたりしていき、短時間の学習で非常に情報量が増えてきました。

加えて多様な情報が増えることで、その関係性に気付いて、線でつなぐ子も現れ、学びが深まったのです(資料3参照)。

線でつなぐ子も現れ、学びが深まった
資料3

学習のまとめで大きく変わったのは、学習成果の発信です。現在、先の地震の学習で学んだことを、グーグルサイトで発信していこうということに取り組んでいます。その過程ではYouTube上にあるサイトの作成方法を示し、二人ペアの一人が見て学習した作り方を説明し、もう一人が実際に作っていくということも行ったりしました。

その過程では、「個人情報(自分の家の住所など)につながる写真は、編集・加工したほうがいいね」といった話も出てきます。

そのように情報発信をする過程で発信する力だけでなく、情報モラルや情報リテラシーの学習も含め、学習していくことが可能になります。

また学習全般に関わることですが、先の地震の学習で、学校が避難場所になった場合の学校の動きや自分たちのできることを教頭先生に取材に行ったのです。そのとき、写真を撮る子もいれば、音声を録音する子、タイピングでメモをとる子など多様な方法で取材をしていました。それはその後の学習を進めるうえで、よりよいと思う方法をとっていたわけです。

それと同時に認知上の特性から、より学習しやすい方法を選んでいるということも言えるでしょう。つまり、多様な認知特性をもった子供が在籍する今の学級では、このようなツールを使って、多様な学び方を認めていくことがどの子にも学びやすい方法を提供するために大切だと感じています。

その他、先生方の中にもこうした端末の活用が苦手な人がいますから、出欠をグーグルフォームに変えて時短できるようにすることから始めるように伝えています。また学級通信で、ツール活用法など多様なスキルアップ方法を伝えることで、少しずつ使ってよさを感じてもらえるように考えています。

最後に、学校の先生には問題を起こさないようにしていこうと考える方もいます。しかし身近に生じた問題を、教師も含め子供自身が解決していくことで、情報活用能力をはじめ、多様な資質・能力が育まれるのだと思います。端末が入った場合も、多様な失敗や問題が起こると思います。しかし社会に出て大きな問題になる前に、失敗し、修正し、学習していくことが大切だと思います。

取材・文/矢ノ浦勝之

『教育技術 小三小四』2021年12/1月号より

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