「学級の荒れ」レベル別 対策法

特集
学級崩壊・学級の荒れ:立て直しからリアルな緊急避難まで

6月と並び、「学級の荒れ」が気になる11月。今年は、長引くコロナ禍により、例年以上に、中だるみが心配な先生方も多いのではないでしょうか。「物の荒れ」「時の荒れ」「人の荒れ」の三つをレベル別に分け、その対策を具体例とともに紹介します。

執筆/富山県公立小学校教諭・北森 恵

1977年富山県生まれ。宮城教育大学大学院修了。手話通訳者。宮城県公立小学校教諭、聾学校教諭を経て、現職。教員歴20年目。学級経営を軸に、「子供たちが動きたくなる」授業づくりを実践中。共著に『学級経営365日困った時の突破術低学年編』(明治図書出版)等多数。

学級の荒れ

「魔の11月」に備え、「小さな歪み」を見逃さない

2020年度の全国一斉休校以降、子供たちの世界は一変しました。黙食の給食、パーティションで隔てられた机、ソーシャルディスタンスを保って行われる学習、マスク越しの会話。身体的な触れ合いやノンバーバルな会話で関係をつくっていく低学年において、これほど学級づくりが難しい状況はないでしょう。子供たちがイライラしている、教室にとどまれない子が一定数いる、クラスが落ち着かない、登校渋りが増えている。そんな声が、あちこちで聞かれます。今年度迎える「魔の11月」は「魔王級」かもしれません。


しかし、「魔の11月」は、ある日突然やってくるのではありません。真綿で首をしめるように、じわじわとクラスを蝕み、気付いたときには修復がとても難しくなっているのです。なるべく早い時期に「小さな歪み」に気付けていたら、「魔の11 月」が来ることはありません。自分と子供たちとの「小さな歪み」を見過ごさないよう、まずは自分の関心が子供たちにあるか確認してみましょう。

【子供たちへの関心チェック】
□子供たちの名前を全員思い出せる
□子供たちの好きな物・キャラクターなどを知っている
□子供たちの仲のよい子を知っている
□休み時間にどう過ごしているか分かる

【今日の自分チェック】
□子供たちからの誘いを「他にやることがある」という言葉で断らなかったか
□授業中、休み時間、当番活動などに、子供たちにまんべんなく話しかけていたか
□子供たちに「大好きだよ」と言葉や態度で伝えたか
□子供たちに「ありがとう」を伝えたか

低学年の子供たちは、担任の視線や表情にとても敏感です。しかし、大きな行事、日々の授業準備、校務などに追われていると、担任の目は子供たちから逸れがちで、それは子供たちにも伝わります。

一年生を担任していたときのことです。登校を渋った子と話をした際、「困ったときは、先生に相談してね」と言うと、その子は絞り出すようにこう言いました。「でも、先生、いつも忙しそうだから」。私は、その言葉で我に返りました。異動先で久しぶりの一年生を担任した時期で、子供たちのことを見渡す余裕もなく、バタバタしていたのでしょう。それを、一年生は見抜いていたのでした。

その日以来、私は、子供たちと個別の関わりをつくるように努めました。お手紙を書いたり、休み時間にいろんな遊びグループに顔を出したり、一人ひとりとおしゃべりタイムを設けたり。自分の目を子供たちに向けました。

「子供たちに関心を向けること」は、初任研でも言われるような当たり前のことですが、当たり前のことほど抜け落ちてしまいがちです。それを防ぐためには、ふり返る時間をルーティンに組み込むのが効果的です。

例えば、子供たちの下校を見送った後、子供たちの机を整えながら、「あ、今日、○○さんとあまり話してないな。明日は○○さんの好きなゲームの話を聞こう」「今日、□□さんは仲よしの子と離れたところにいたな。明日はどうか見ておこう」など、心で思うだけで次の日の自分の行動は変わります。今は放課後に机の消毒作業をする学校もあるでしょう。その時間を、次の日の自分を変える時間にしてみませんか。

学級の荒れ2

「物・時・人」の「荒れ」をレベルごとにチェック

では、「小さな歪み」を修復できないまま、「荒れ」という形で顕在化してきたら、私たちはどうすればいいでしょうか。ここからは、「物・時・人」の「荒れ」をレベル1、レベル2に分け、それぞれ考えられる原因ごとに対策を考えていきたいと思います。

物の荒れ

「荒れ」の兆候は、まずは「物の荒れ」に表れます。ぐちゃぐちゃの雑巾がけ、床に落ちている鍵盤ハーモニカ、ぎゅうぎゅうの落とし物入れ、ほこりまみれの掃除道具。教室環境は学級を映す鏡です。

レベル1【自分の身の回りを片付けられない】

❶ 片付け方が分からない
掃除道具や雑巾、鍵盤ハーモニカなどは、ラベリングや写真で「これは、こう片付ける」と分かるようにしましょう。片付け方がはっきりすると、片付けやすくなります。

❷ 自分で片付けられる容量を超えている
道具箱に物があふれている子は、一緒に必要な物を選んで、あとは持ち帰らせましょう。週に一度、クラスで道具箱点検をして、整頓を習慣にするといいですね。

学級の荒れ3

❸ 片付けるという意味が分からない
担任も一緒に清掃や片付け作業をしながら、「きれいになると気持ちいいね」と、きれいになる過程ごと一緒に楽しみましょう。

レベル2【学校の物を壊したり、大事に扱おうとしなかったりする】

❶ 物に当たることで、イライラや不安を表現している
言葉でうまく自分の思いを伝えられない低学年です。椅子を投げたり、壁を蹴ったりすることで「気付いて!」とSOSを出していることも考えられます。行動を咎めるより先に、「いつもはこんなことしないよね。何かお話ししたいことがあるのかな」と柔らかく聞くことで、「コロナになるとダメだから、おばあちゃんに会えなくなった」など、子供が心のモヤモヤを表現できることもあります。「おばあちゃんにお手紙書いてみようか。椅子は投げると危ないからね。もうしないでね」と、物に当たる以外の方法を提案したり、一緒に考えたりしましょう。その対話を通して、とげとげした心が丸くなります。

❷ 乱暴な自分を周りにアピールしている
新しい環境に入った一年生や、担任が代わった二年生など、自分を大きく見せようとわざと乱暴に振る舞う子もいます。叱るときは、「○○さん、友達にぶつかるとけがをします。物を投げません」と尾をひかないように、短くはっきりと。また、乱暴にしている子も、きっと好きな教科などでは生き生きと活動しているはずです。その場面を見逃さず、 「○○さんは、ドッジボールが上手だね。同じチームなら心強いな」「このひらがな、いつもよりきれいに書けているね」と、ちゃんとあなたを見ているよ、というメッセージを送り続けましょう。言葉は湯たんぽのように、じんわりと効いていきます。

時の荒れ

次に注意したいのが、「時の荒れ」です。「時間を守らない行動」が見られる場合は、要注意です。

レベル1【時間通りに席につかない】

❶ 教室に居場所がなく、入りにくい
アイスブレイクをしたり、「○○さんは、あのアニメが好きなんだね。△△さんと同じだよ」と、まずは担任からその子とつながり、その後に他の子につなぐことで、子供同士の心をつなげていきましょう。

学級の荒れ4

❷ 先生の注目を独り占めしたい
「早く帰ってきて」と呼びに行ったり、その都度叱ったりすることは逆効果です。「授業時間に間に合うには」と、クラスで話し合ってみましょう。「時計の針が5になったら教室に帰る」「上級生について戻る」など、低学年なりの工夫を出し合います。「今日遅れた人たちも、次は工夫してみない? きっと時間通り帰ってこられるよ」と、提案しましょう。提案を実践してもらい、成功することで、「正の注目」を経験できるように導くことが大切です。

レベル2【その時間にやるべきことをしない】

❶ やる意味が分からない
学習にも当番活動にも、意味があります。二学期は中だるみの時期なので、もう一度学級開きをするような気持ちで、当番活動の意味をポジティブに、ていねいに伝えましょう。また、授業でも今日のゴールと単元のゴールをしっかり伝えましょう。先の見えない授業は、低学年の子供たちの意欲を奪います。「今日は、たし算のくり上がりができるようになるよ」など、できることを明確に伝えることで、意欲も増します。

❷ うまくできない自分を見せたくない
当番活動も学習も、得意不得意があります。できないことを知られたくない子は、失敗するくらいなら、やらないほうがいいという選択をしている可能性があります。「あ、計算間違っちゃった」と担任がわざと失敗してみせたり、「スープってどうしたら上手にすくえる?」と友達同士で教え合う活動をしたりして、失敗は怖いものではない、困ったときは助け合えるということを経験させましょう。

人の荒れ

最後は「人の荒れ」です。他の教員が教科担任のように配置されたり、常に見守りの教員がいたりする状態になることもあります。

レベル1【暴言や暴力が目立つ】

気に入らないことがあると暴れたり、ふとしたことで取っ組み合いのけんかを始めたりする子は、入学前から叱られ続けて育っている可能性があります。自分は叱られても直せないダメな子だと思っている子にこそ、対話の機会をつくりましょう。「なぜしたのか」に注目しすぎず、「どうしたら回避できたか」を繰り返し指導しましょう。

学級の荒れ5

レベル2【暴言や暴力が目立つ】

一見落ち着いているように見えますが、机に突っ伏したり、外をぼんやり見ていたりする子が増えてしまったら……。子供たちは、そうすることで「先生、ぼくはここにいるよ」と、伝えているのかもしれません。心の充電が貯まらなくなり、大きな行動を起こすことも、正しい行動をすることもできないのです。であるとしたら、担任としてできることは、「温かく接し続け、心を満たすこと」ではないでしょうか。

以前、二年生で担任したNさんは、一年生の途中で転校してきました。しばらくすると、机を投げたり、友達を蹴ったりする問題行動が見られるようになりました。二年生では、一転して、一日の大半をフードをかぶって机に突っ伏して過ごすようになりました。起きていてもなんの反応も示さずにぼんやりしています。私は「Nさん、教科書はここね」「Nさん、計算プリントを配ったよ」と声をかけ続けました。私自身、声をかけていることに意味があるのか分かりませんでした。しかし、ある日、Nさんは私にプリントをちぎった紙をくれました。そこには、「寝ていても、耳で聞いているよ」と書かれていました。言葉に反応しなくても、ちゃんと私の心はNさんに届いていたのでした。その後、ふとしたことでNさんは歌が好きだと分かりました。国語で好きな歌手について発表したり、全校集会で歌ったりする経験を経て、生き生きと活動するようになりました。二年生が終わるころには、フードを目の下までかぶっていた彼女は、もういませんでした。

担任として、やるべきことを明確に

さまざまな段階を述べてきましたが、どの段階にいる子供たちも、目的はただ一つ「どんな形でも教室に居場所をつくる」ということです。低学年の子供たちが、居場所をつくるためなら嫌われてもいいとなりふり構わず行動しているとしたら、胸が痛みませんか。担任として、やるべきことは、叱責よりも、
①正しい居場所のつくり方を教えてあげること。
②担任が荒れを進めるような行動をしないこと。
③正しい行動をしているときを見逃さず、小さな信頼の石を積むように温かい声をかけ続けること。

この三つです。

「魔の11月」ではなく、小春日和のように暖かな11月を一緒に迎えましょう。

イラスト/斉木のりこ

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