これから求められる新たな教師力【現場教師を悩ますもの】

連載
諸富祥彦の「現場教師を悩ますもの」【毎週木曜更新】

「教師を支える会」代表

諸富祥彦

「教師を支える会」を主宰する『現場教師の作戦参謀』こと諸富祥彦先生による連載です。教育現場の実状とともに、現場教師の悩みやつらさを解決するヒントを、実例に即しつつ語っていただきます。

【今回の悩み】諸富先生の考える「教師力」って何ですか?

教員免許更新制の見直しなど、研修に関してニュースで話題になっていますが、そもそも教師に最低限必要な力とは何でしょうか。それは研修で身に付くものなのでしょうか。

(小学校教諭・20代男性、教職年数:6年)

自分と対話、他者と対話する力を伸ばすのが教師

とても大きな問いですね。「これからの教師力」として言うなら、ティーチャーからファシリテーターへと役割が変わっていくと言えます。知識を教えるのが教師だというのは、もう古いですね。では何をファシリテートしていくのかというと、「考える力」と「対話する力」がキーワードになります。

考える力とは「自分自身と対話する力」です。うんうんとうなって考えている時は自分と対話している感じがあるでしょう。思考とは自分自身との対話なのです。自分と対話し、そして他者と対話しながら答えなき問いに対して自分なりの答えを練りだしていく力、これが「考える力」なのです。自己との対話、他者との対話のプロセスをファシリテーションしていくのが教師の役割です。

この力を研修で身に付けるには、よい授業モデルを見ることです。私の教員研修ではその場ですぐできるような演習をします。話をじーっと聞くのではなく、エクササイズのようなことをします。

研修の中には、「自己との対話、他者との対話をファシリテーションする能力が必要だ」という内容であるにも関わらず、スライドを見せながら、自己とは、他者とは、対話とは、と説明するだけ、見るほうも映画のように受け身に見ているだけ。そんな研修もあります。受けても身につくはずがありません。その場で対話を促すような研修を受けなければ身に付かないのです。

タブレットがあれば教師は不要!?

研修をする側にファシリテーターの力があるかどうかが、これからは問われます。教員免許更新制度や教員研修、教員養成での課題は、対話力や思考力といったこれからの教師力を育てる研修をするだけの、力のある講師が少ないことです。多くの講師が先生や学生にスライドを見せるだけに終わっています。

研修は実際にやってほしいことと似ていることをすべきです。小学校で子どもたちにスライドをずっと見せていますか? いませんよね。いいスライドを作ればいい授業になるとは限りません。自己との対話、他者との対話をファシリテートしていくのが担任の力です。そんなふうに授業観を変えることです。すると、小学校教員は職を失わずにすむでしょう。

よいスライドを作って知識を提供するだけならば、教師は小学校に低・中・高学年に1人で済んでしまいます。1人1台のタブレットも配られましたから、それで見ればよいということになってしまいます。「対話力を伸ばす授業」を身に付けていかないと、これから生き残ることはできません。「そもそも教師の数はそんなに必要ではない」ということにもなりかねません。

あえて空気を破り少数者の味方になれるか

もう一つ、教師の一番の資質・能力は「徹底的に少数者の味方になる」ことです。例えば、数年前に神戸で発覚した教員間のいじめ問題。加害者側だった先生は、その地域では「できる先生」と思われていました。その先生が問題を起こす先生でもあったわけです。

今、若手の教師間でのいじめや、人間関係の問題が大きくなってきています。そんな先生が子どもにいじめの指導をしていても「空気を読んで多数派になびいたほうが勝つ」という多数派ゲームに支配されるクラスになってしまいます。

日本社会全体に「空気を読んで長いものに巻かれる」雰囲気があります。それを先取りするような学級経営は、言葉を変えればいじめを助長し温存させるような指導をしているのと同じなのです。

「あえて空気を破ることをよしとする」――そんな授業や学級経営ができる先生が、本当の意味での「できる教師」です。小学校の先生自身が空気を破ってでも弱者を守ることができる人間になれるかが問われているのです。

これは研修では簡単には身に付かない、教師の資質・能力の根底部分と言えるのです。


諸富祥彦●もろとみよしひこ 1963年、福岡県生まれ。筑波大学人間学類、同大学院博士課程修了。千葉大学教育学部講師、助教授を経て、現在、明治大学文学部教授。教育学博士。臨床心理士、公認心理師、上級教育カウンセラーなどの資格を持つ。「教師を支える会」代表を務め、長らく教師の悩みを聞いてきた。主な著書に『いい教師の条件』(SB新書)、『教師の悩み』(ワニブックスPLUS新書)、『教師の資質』(朝日新書)、『図とイラストですぐわかる教師が使えるカウンセリングテクニック80』『教師の悩みとメンタルヘルス』教室に正義を!』(いずれも図書文化社)などがある。

諸富先生のワークショップや研修会情報については下記ホームページを参照してください。
https://morotomi.net/

取材・文/長尾康子

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