グループ活動に無関心な児童への対応【現場教師を悩ますもの】

連載
諸富祥彦の「現場教師を悩ますもの」
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「教師を支える会」代表

諸富祥彦

「教師を支える会」を主宰する『現場教師の作戦参謀』こと諸富祥彦先生による連載です。教育現場の実状とともに、現場教師の悩みやつらさを解決するヒントを、実例に即しつつ語っていただきます。

【今回の悩み】グループワークに無関心で、参加しようとしない子どもにどう対応したらよいでしょうか。

高学年を担当しています。授業中立ち歩くわけではないのですが、グループワークや活動に関心を示さず、まったく参加しない子どもがクラスに数人います。どう対応したらいいでしょうか。厳しく叱ったほうがいいのでしょうか。意欲が低下して行動が起こせない子どもの理由や対応を教えてください。

(小学校教諭・30代男性、教職年数:15年)

強制はせず、見ていてもらう

結論から言うと、グループワークに参加しない子供への対応は「参加しない、その場にいてもらい、見ていてもらう」ことが基本になります。

例えば、私がカウンセリングで行っている手法の一つ「構成的グループエンカウンター」では、楽しくおしゃべりをしたり、「じゃんけん列車」や「なんでもバスケット」などのゲーム的要素の強いワークを取り入れたりしています。すると、やりたくない子どもが時々出てきます。学校で構成的グループエンカウンターを実践している先生方からも「こんな時、どうしたらいいのでしょうか!?」と、質問をよく受けます。

答えとしては「やりたくなかったらやらなくていいよ、見ていてね。やりたくなったらいつでも言ってね。ここで見ているんだよ」と伝えることです。なにも根本的な原因を探る必要はありません。大人だって飲み会に誘われても「今日はちょっと行く気がしないな~」と、断る時があるわけです。

「グループに参加したくない」ときに、「どうして参加したくないの?」とか、「参加したくないのには、どんな気持ちがあるの?」などと、先生が問い詰めすぎてしまうと「参加しない気持ち」が、その子どもの中で固定化されてしまいます。子ども自身が「私はグループに参加できない子なんだ」と感じてしまうのです。さらに無理やり参加させようとすると、ますます抵抗感が生まれてしまい、あまりいいことは起きません。教師がこだわりすぎると問題が「固定化」されてしまうことがあり、かえってややこしくなるだけです。

問題行動と決めつけず、子どもの今を受け止める

また「きちんと叱ろう」とか、「参加してくれないのは、自分の教員としての力量がないからだ」などと、あれこれ考えすぎないことです。悩む人は、問題を自分で作って自分で悩んでいることが多いのです。その子どもについて分かっているのは、「今、集団でのグループ活動に参加したくない」ただそれだけなのです。参加したくないと言うのであれば、「そう。だったら見ていてね」と認め、「参加したくなったら教えてね」と伝えるだけで十分です。楽しそうだな、いいな、と本人が思えば「先生、やる」と言ってくるはずです。

中には、楽しそうにしている友達を見て「うらやましいな」と思っていても、「今日はやらないって言ってしまったから……」と意地になって、入ってこない子もいるわけです。そういう場合でも、強引に誘うと余計に入れなくなりますから、そのままにしておきます。タイミングを考えている子どももいますから、次の時間に「今日はどうする?」と軽い感じで声をかけてあげれば、「やる」と言いやすいでしょう。あまり深刻な問題にせず、軽い関わりにしておけば、機嫌がいい時、調子のいい時に入ってきてくれます。

友達が楽しそうにしているかがポイント

子どもが「集団の中」で起こす問題については、「問題行動には着目しない」のが「原則」です。「問題の子ども」でなく、むしろ「頑張っている子ども」に着目して「今日は調子がいいね」などと声かけをするのが基本です。すると「いいな、先生とあんなふうに会話できたらいいな」と、学習活動に取り組み出す子どももいます。

しかし、グループワークなどはそもそも楽しい雰囲気のことが多いでしょう。みんなが楽しそうにしているはずです。すると「やっぱりやりたい」と言い出しやすいのです。

要は、周りの友達が楽しそうにしているかどうかがすべてなのです。みんなが楽しそうにしていたら、「やっぱり参加する」と言ってくれる可能性は高くなります。みんながつまらなさそうにしていたら、そのままになる可能性は高いでしょう。ここでの教員の力量とは、子どもたちが楽しめる活動ができているかどうかにかかっています。


諸富祥彦●もろとみよしひこ 1963年、福岡県生まれ。筑波大学人間学類、同大学院博士課程修了。千葉大学教育学部講師、助教授を経て、現在、明治大学文学部教授。教育学博士。臨床心理士、公認心理師、上級教育カウンセラーなどの資格を持つ。「教師を支える会」代表を務め、長らく教師の悩みを聞いてきた。主な著書に『いい教師の条件』(SB新書)、『教師の悩み』(ワニブックスPLUS新書)、『教師の資質』(朝日新書)、『図とイラストですぐわかる教師が使えるカウンセリングテクニック80』『教師の悩みとメンタルヘルス』教室に正義を!』(いずれも図書文化社)などがある。

諸富先生のワークショップや研修会情報については下記ホームページを参照してください。
https://morotomi.net/

取材・文/長尾康子

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