授業中のトイレ問題など小一担任の悩みを解決!【授業編】

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「丁寧に」とはどの程度を目指すべきなのか? 授業中のトイレ問題への対応に正解はあるのか? 小一担任からベテラン教師へよく寄せられる質問への回答を9連発でお届け。かゆいところに手が届くこと請け合いです!

執筆/授業力&学級づくり研究会

授業風景
撮影/浅原孝子

Q1 45分間、座学が難しい子にはどう指導すればいいですか?

【解決策】15分×3の授業構成で!

一年生の子どもたちは、小学校に入学するまで、45分間椅子に座って、勉強をするという経験がありません。また、一年生の子どもの集中力は15分間とも言われています。だから、45分間集中して座って勉強することができないのは、仕方がないことではないでしょうか。

しかし、そうは言っていられません。これを解決するヒントが、日曜日の朝に放映されているヒーロー番組に隠されているのです。小さい子どもはヒーロー番組が大好きです。実はヒーロー番組には、

・途中でCMが2回入り、内容が3パートに分かれている。
・後半に盛り上がる場面がある。

という2つの要素があります。そのため、子どもは飽きることなく30分間の番組を集中して見ることができるのです。

これを参考に授業を15分で区切り、3つの活動を取り入れることをおすすめします。
例えば国語だと

・最初の15分・・・音読
・間の15分・・・ひらがなの学習
・最後の15分・・・学習ゲーム

というように構成します。できれば、最後の15分は子どもが楽しいと思うような活動を取り入れましょう。例として学習ゲームを出しましたが、学習ゲームを思いつかないときは、最初と同じ活動を取り入れるのでも構いません。ただ活動内容は変えましょう。

例えば、最初の音読では、一人で読みます。後半の音読は全員で声をそろえて読んだり、グループ全員で読んだり、動作を入れながら読んだりといったように変化をもたせます。動作を入れることで、常に椅子に座っている状態ではなくなります。立って動いていますが、勉強をしていることになります。子どもたちが慣れてきたところで、座学の時間を増やしましょう。

Q2 どこまで丁寧に教えたらいいのでしょうか。

【解決策】 丁寧に取り組もうという気持ちをつくってあげましょう!

「一人ひとり丁寧に教えてあげたい!」その気持ちはよくわかります。しかし、全部を丁寧に教えることは無理です。そして、子どもによって理解するタイミングや技能を身につけるタイミングは違います。丁寧に教えることで、できるようになる子もいれば、丁寧に丁寧に教えても、なかなかできない子もいます。

実は、丁寧に教える内容や方法というのは、全員が同じというわけではありません。クラスに35人いれば、35通りの丁寧に教える内容や方法やタイミングがあります。

では、どうすればいいか。それは、丁寧に取り組もうという気持ちを子どもたちの中につくりだすのです。「丁寧に取り組みましょう」という先生からの言葉だけで取り組める子もいますが、全員というわけではありません。なかなか丁寧に取り組めない子には、まずは一つだけ丁寧に頑張ろうという約束から初めてみるのはどうでしょうか。

・靴を丁寧にそろえる。
・名前だけは丁寧に書く。
・計算問題の①~⑤だけは、丁寧に解く。

一つのことを丁寧にできた子は、多くのことを丁寧にすることができるようになります。一つのことを丁寧にできない子は、ほかのことでも丁寧にはできません。生活場面に限らず、学習においても同様です。

このとき教師は、子どもたちのサポート役に回りましょう。困っている子、もう少しで丁寧にできる子に、一人ひとりの実態に応じた具体的なアドバイスや声かけを丁寧にするのです。もちろん丁寧に頑張ることができる子は、ほめてあげましょう。そうすることで、基礎基本を子どもたちは身につけることができます。

Q3 いつまでも指を使って計算することはいけないことなのでしょうか。

【解決策】指を使っていいんです!

「まんたろうくんは、もう指を使わず、暗算で答えを出すことができるのに、うちの子は・・・」と、他の子とわが子を比べ、心配している保護者の気持ちはよくわかります。ただ、無理に指で計算することをやめさせる必要はありません。なぜなら、指を使って計算している子は、指という「方法」を使って、計算をしているからです。そして、指を使って計算しているとき、頭の中では、「具体と抽象の橋渡し」をしているからです。

確かに、計算をするときの理想は指を使わずに暗算できるようになることでしょう。しかし、算数は学年が上がるにつれて、大きな数や分数や小数が問題文に登場し、問題の抽象度が上がります。そのため問題に出合ったとき、問題をイメージすることができず、どのような「方法」で考えたらいいのか思いつかない子が増えてきます。そうならないために、自分が今できる「方法」を選択し、その方法を使って、計算をするという経験を一年生のうちに、多く積ませておきたいものです。

また指を使うということは、式という抽象から指という具体に置き換えて、計算をしているということになります。指を使っている子は、まだまだ頭の中に問題をイメージできない、計算をイメージできなかったりするのでしょう。抽象にも対応ができるようになるためには、具体の経験がたくさん必要となります。

指を使うことを禁止してしまうのではなく、指を使っている子をほめてあげましょう。そして少しずつ卒業できるように、暗算の力をのばしたり、声かけをしていきましょう。

Q4 授業中に子どもたちが頻繁にトイレに行かないようになる方法は?

【解決策】「あと何分我慢できる?」と聞いて考える習慣をつけさせましょう

「先生! トイレに行っていいですか?」この言葉により授業が中断。一度だけならまだしも、くり返しの口撃? に「イラッ!」としたことはないでしょうか。

トイレは休み時間のうちに済ませておき、授業中には行かなくていいようにすることが基本です。私は、スポーツ選手やオーケストラの指揮者が本番中にトイレに行かないことなどを例にあげ、授業前、行事の前などトイレに行っておくという基本をまずはしっかり説明します。くり返し伝えることで見通しをもって、学校生活を送れるようにしたいものです。

しかし、体調の悪い場合もあります。無理して我慢させることはいけません。教師の目で見て判断できれば一番いいですが、現実的にはなかなか難しいことです。個人個人の判断をしっかり高めてもらうしかありません。そんなときこんな言葉をかけてはどうでしょうか。

「あと何分我慢できる?」

すると子どもたちは考えます。自分の身体と相談して、「あと5分ぐらい」「10分はいけそう!」「もう我慢できない!」こんな答えが返ってきます。我慢できないと言った子には、「よく我慢したね」とほめましょう。何分か我慢できると言った子には、「我慢できてえらいね」とほめてあげましょう。この考える習慣をつけてもらうことが大切です。

同時に、緊張によりトイレが近くなってしまう子もいます。そういった子には、「いつでもトイレに行っていいからね。心配しなくていいよ」とあらかじめ個別に伝えることも必要です。できれば、保護者にも同様のことを伝えておきましょう。

Q5 一年生にとって効果的なグループワークの方法を教えてください。

【解決策】「話しっぱなし」を「話し合う」に変えていきましょう

朝、「先生、聞いて聞いて・・・」と子どもたちがひっきりなしに話しかけてきます。友達の話を遮ってでも自分の話をしようとしてきます。これは特別な光景ではなく、朝の一年生教室の「あるある」場面ではないでしょうか。

子どもは話をすることが大好きです。一方で、人の話を聞くことは苦手です。自分の話をするだけして、満足気にその場を立ち去る「話しっぱなし」の子どもがたくさんいます。この「話しっぱなし」を「話し合う」に変えていきましょう。そのためには話す力ではなく、聞く力を段階を経て育てていくことが大切です。

聞く第1段階 「うんうん」段階

まずは相手の話が終わったら「うんうん」と相槌を打たせることから始めましょう。こうすることで、相槌を打たれながら聞かれるとうれしいという思いを抱かせます。

聞く第2段階 「なんで?」段階

次は相槌を打った後に「なんで?」という言葉をつけ加え、理由を求めさせましょう。こうすることで話し手は情報をつけ加えて話してくれるので、聞き手は内容がよりわかり「聞いてよかった」ということを実感します。慣れてくれば「『なんで?』以外の言葉を使って質問してみよう」とすることで、より話合いらしくなります。

聞く第3段階 選択段階

自分と似ている考えには「うんうん」、違っている場合やもう少し聞きたいときには「なんで?」と聞き手に選択させましょう。こうすることで話し手の内容を理解しなければという意識を高めることができます。

話すことが大好きな一年生。聞く力を育てることで、「話しっぱなし」から「話し合う」へと変えていきましょう。

Q6 「ぼくは」を「ぼくわ」などと書き間違える子がいます。

【解決策】小道具で楽しく練習!

「は・を・へ」は、練習を重ねても、作文など実際に長文を書くときになると書き間違えてしまう子が多くいます。書き間違えの要因としては、「間違いを正答と思いこんでいること」、「音が同じこと」、「練習不足」などが考えられます。これを解決するために、音と文字を耳と目で確認する方法があります。学校でも家でも楽しく反復練習できるように、まずは道具を作ります。

[準備物]
・「は」「を」「へ」が書いてある画用紙
・わりばし
・はさみ
・セロハンテープ

[作り方]
① 画用紙から「は」「を」「へ」を切り抜く。
②「は」と「を」を背中合わせにし、中に割りばしの端を挟むようにしてセロハンテープで留める
③ わりばしのもう一方の端に「へ」をセロハンテープで留めてでき上がり。

[練習の仕方]
子どもたちが練習を楽しめるように、道具に名前(例「はをへステッキ」)をつけ、教室の中のいろいろな物にくっつけて文を作ります。文を作って話すことに慣れると、次はノートに文を書かせるようにします。これをペアで「はをへステッキ」を使って見せ合いながら発表します。

すると、音と文字の両方で学習するため、学習を深めることができるとともに、相手の文や言葉から間違いに気づくこともできます。宿題に出すときにはステッキを持ち帰らせ、家で保護者といっしょに文づくりをして慣れていくようにしましょう。

Q7 ノートに、何をどこまで書かせていいのかわかりません。

【解決策】初めて書いたノートが基準です

書けない子はどうして書けないのでしょうか。書くことにまだ慣れていない子はたくさんいます。入学までに文字を書いたことがない子もいるのですから当然のことです。

しかし、そればかりでなく、書き方がわからない、書く時間がない、という子もいます。そのような子どもたちが書けるようになるために、全体指導では、まず書けない子に焦点を当てた板書を意識します。

・どこに何を書けばよいか
・どれくらい書けばよいか

これらを明確にするために、子どものノートと黒板が同じになるようにします。「黒板は、先生のノートだよ。まねっこしてね」と伝え、文字を丁寧に書き、一行に何文字書けばよいかも見てわかるようにします。

問いに対して、自分の考えを書かせたいときには、個別指導をします。全体指導とは対照的に、一人ひとり書ける量は異なり、次のステップへの進み方も変わってきます。

基準となるのは、初めて書いたノートです。文を書くことが苦手な子が、一言だけでも書けた、となれば先生はそれをしっかり評価します。次のときには、その一言に主語がついただけでも成長であり、その成長を子どもも実感できるよう、波線を引いてハナマルやコメントを書きます。一人ひとりの力を把握し、自信と意欲につながるように、書けたことをほめて次につなげましょう。

書く力を積み上げていくために、毎時間のふり返りは欠かせません。ふり返りには学習の感想だけでなく、書く内容を指定して書かせることも効果的です。この積み上げにより、長文を書ける力だけでなく、思考力・表現力も身につけることができます。

Q8 電子黒板と板書の使い分けを教えてください。

【解決策】それぞれの利点をいいとこどりしましょう!

ICT活用の利点

ICTを活用したときの一番の利点は、即時に視覚化できることではないでしょうか。子どものノートはタブレットのカメラ機能を使って電子黒板に写したり、思考過程をペンソフトなどで書きこみ学級全体で共有したり比較したりできます。教科書の問題や挿絵などはあらかじめスキャンして簡単に提示することもできます。即時に視覚化することは、子どもの興味をひき、思考を活性化します。

板書の利点 ~ノートの役割から~

ICTを使って活性化した子どもの脳が思考を始めると、それをノートに表現させていきます。ノートは、子どもの思考やその変容から学んだことを蓄積する大事なツールです。ICTでは個人の学びは蓄積されず、上書きしていくようなイメージですが、ノートは違います。学びが詰まった自分だけのノートをつくるために、黒板が必要なのです。

黒板は、子どものノートの手本で、ノートに自分の考えを表現しやすいように、「何を」「どのように」書けばよいかを板書します。そして、出た意見を板書するときは、よい意見には波線を引き、色チョークを使うなどで学習の深まりを視覚化します。そうすれば、子どもたちは「友達のよい意見」や「深まった考え」をノートに書くようになります。

このように、考えを深めたり、広げたりする過程が重要なものには、板書をしっかりと行ってノートに考えを書かせ、即時的な視覚化が有効なものにはICTを活用します。それぞれの利点をいいとこどりして、授業を組み立てましょう。

Q9 説明文で、子どもの興味を引く課題設定のコツを教えてください。

【解決策】ちょっと背伸びしたゴールを設定してください

説明文は、物語文と違い、教材への魅力が十分に感じられない子がいます。説明文は知識を得たり、筆者の考えを知ったりするものですから当然です。説明文学習を楽しくするための方法として、一つは魅力あるゴールにすることが大切です。

魅力的にする方法として、私がいつも心がけていることは、少し背伸びしたゴールを設定することです。説明文のゴールは、いつも「書くこと」に終着します。この「書くこと」のゴールに段階を設けます。

〔例〕
・1つ目の教材のゴール
「先生といっしょに1つの事例で説明文を書く(模倣)」
・2つ目の教材のゴール
「自分が選んだ事例で説明文を書く(オリジナル)」
・3つ目の教材
「自分が選んだ事例で図鑑をつくる(作品づくり)」

このように、同じ「説明文を書く」というゴールでも、少しずつレベルアップさせて、成長を実感させます。一年生の子どもたちはちょっと背伸びをするのが大好き。「レベルアップしたね!」「すごいよ」とほめながら、次はどんなことをするのかな、と説明文の学習が楽しみになるようにゴールを考えましょう。

書いたものは必ず共有させます。互いの作品や文章を読み合うことで、次はもっとよいものをつくろうとする意欲を高めることができます。この共有のしかたもいつもいっしょではなく、少しずつ変化を加えることで楽しく読み合えるようにしましょう。

〔例〕
・グループで発表  → 付箋に一言コメント
・掲示板に貼る  → お気に入り(素晴らしい作品)を選びシールを貼る
 など

イラスト/横井智美

『小一教育技術』2017年1月号より

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