新学期の学級づくりは、まず何をすればよい?<前編> 【教師の悩みにピンポイント・アドバイス 田村学教授の「快答乱麻!」#26】

連載
教師の悩みにピンポイント・アドバイス 田村学教授の「快答乱麻!」

文部科学省初等中等教育局主任視学官

田村学

先生方のご相談について、國學院大學の田村学教授にお答えいただくこの企画。今回は、1学期に落ち着かなかった学級を、新学期に立て直すにはどうしたらよいかというご質問に対し、具体的な方法を説明していただきます。

 私は新任の教員でやっと1学期を終えたところですが、正直言ってあまり学級経営がうまくいかず、何となく落ち着かない雰囲気のまま1学期を終えることになってしまいました。先輩からは、年度当初や新学期当初の最初の3日間は「黄金の3日間」と言われ、学級づくりをする上でとても大事だと教えられました。新学期を始めるときに何をすれば、うまく学級づくりをすることができるでしょうか。また「黄金の3日間」の意味についても教えてください。(20代、小学校)

まずは子供たちが友達と関わることのできる活動を行っていく

 夏休み明けのような大きな節目は、それまでうまくいっていなかった学級経営とか、先生と子供たちとの人間関係をつくり直し、新しいスタートを切るには格好のタイミングだと思います。ですから、これまでに悩みを抱えてきていて、「学級経営をもっと充実させたいな」とか、「子供たちとの関係を良くしていきたいな」と思っている先生にとっては、夏休み明けは絶好のチャンスと捉えてよいでしょう。

考えてみると、大人も日々の生活や仕事の中で、常にどこかに節目をつくって仕切り直しをしようとする気持ちがあるはずです。そう考えれば、1学期が終わって学級を離れて家庭に帰り、思い思いに過ごしてきた子供たちも、おそらくまた新たな気持ちで「友達に会いたいな」「クラスで何かをやってみたいな」と思いながら、学校に来るはずです。大人でも子供でも、こうした節目に新しいことにチャレンジしようとか、これまでとは違う関係性をつくって、リスタートをしようという思いは常にあるのではないかと思います。

ですから、夏休みが終わって新学期が始まる(2期制、2学期制ならば新たに授業が始まる)このタイミングで、それぞれの先生方が、自分の学級をより質の高いものに変え、豊かな学級生活を送れるようにしていくには良いチャンスだと思います。

もちろん、1学期間に学級が落ち着かなくなったのには、それぞれの問題の状況が様々あると思います。ですから、本来は細かな処方箋が必要なところです。ただし多くの場合、学級の問題の根幹には子供と先生、子供同士の間の信頼関係が築かれていないということがあります。もし子供と先生や子供同士の間でお互いを認め合い、「この先生と一緒に勉強をしていったら、充実するな」とか、「自分のクラスの仲間はとってもいい仲間で、このクラスで一緒に勉強していくととても楽しいし、よく分かるようになるぞ」といった感覚があれば、そこには信頼関係が生まれます。当然、様々な学習活動も学級活動も充実していくことになりますから、学級が落ち着かないということにはならないでしょう。

1学期の間、子供と先生の信頼関係に若干の揺るぎが生じていたり、子供同士の間に互いを認め合うような関係が生まれていなかったりするために、ギクシャクするようになっているのではないかと思います。ですから、子供と先生の関係で言えば、子供たちが「この先生と一緒に過ごしていると楽しいな」とか、「この先生からはこんなことを教えてもらえるな」とか、「この先生と勉強するとこんなことができるようになるぞ」とか、と思えるような関係が生まれてくることが大事だと思います。新学期を、そのような信頼関係を改めて構築し直すリスタートのチャンスと捉えるわけです。

子供たちが、例えば「この先生と勉強するとこんなことができるようになるぞ」と思えるような、子供と先生の信頼関係を築き直すチャンスが新学期のスタート時。

クラスの人間関係をつくるようなゲームなどをする

ただし、子供と先生の信頼関係を再構築するために、「先生は何でもできるスーパーマンにならなければならない」などと窮屈に考える必要はありません。まず子供たちからすれば、「この先生は、私たち一人一人のことを大事にしてくれている」「私たちが成長するためのことを考えてくれている人だ」と感じ取れるかどうかが、最も大事なのだと思います。そして何よりも、「学校は楽しいな」「また明日も行きたいな」と思えることが大事です。

ですから、子供たちが楽しいと思い、安心感や信頼感をもって学校に通えるような新学期の最初の1週間をどのように過ごすのか、新年度のときに考えるのと同じように改めて考えてみてください。

例えば、9月1日が初日だとすると、特にその日は事務的な連絡や提出物の回収などの作業で、多くの時間を過ごす場合もあると思います。それも一定程度は必要ですが、そういうことの必要性や実施時期の見通しをもち、絶対に初日にやるべきことだけを確認して実施し、それ以外の時間で子供たちが、「久しぶりに学校に来たら、楽しかった!」と思って、家に帰れるようなことができるとよいでしょう。それができれば、「ああ、このクラスで良かった」と思えるでしょうし、次の日も「学校へ行くのが楽しみ」と思えるはずです。

そうではなく、久しぶりに学校に来たら、「あれを片付け」「これを集め」「こんな連絡事項と通知を持ち帰り」などとやっているうちに、1日が終わって「さようなら」となったら、「ああ、前思ってた通り学校はおもしろくない」と思ってしまうかもしれません。ですから、どうしてもやるべき仕事は何で、何はいつまでにやるべきか、などを整理して、「この確認は2日目でいいぞ」とか、「これは週末までにやればいい」と整理をしておくことで、子供たちが友達と関わることのできる活動を行っていくのです。

子供たちは夏休み中、個々に多様な体験をしてきていますが、何よりもクラスの友達と会うことを楽しみにしています。ですから例えば、学級集団で活動する時間を確保し、クラスの人間関係をつくるようなゲームなどをする場面を一定程度つくっておくとよいでしょう。そこで、「このクラスの仲間といて楽しいな」と思えるような学習活動やアイスブレイク、集団でのゲームのようなことを行うわけです。

子供たちにとっては、自分の学校・学級の中に安心できる自分の居場所ができてくるかどうかが大事です。集団での活動を通して、そうした居場所づくりや友達との関係づくりをしてあげることができ、その居場所は「担任の先生がつくってくれているんだな」と感じられれば、先生に対する信頼もできてくるでしょう。友達同士の関係ができてくれば、本人も落ち着いて学習に向かうこともできるでしょう。ですから、あまり「学期はじめの事務作業を早く終えなければ」とか、「隣のクラスに遅れないように授業を進めなければ」と慌てるのではなく、クラスの仲間と楽しみながら関係づくり、集団づくりをしていくことが大事だと思います。

自分の学級の居心地が良かったり、自分の居場所がはっきりしていたり、友達同士の関係性が安定してくると、結果的には先生との関係も非常に安定したものになっていくものです。学級内での孤立があったり、友達との関係がギクシャクしていたりすると、そのストレスは先生にも向かっていくでしょうから、先生と子供の関係は、学級集団全体の関係がどうなっているかも大きく影響を与えていると思います。

学級集団の関係づくりは、各教科等の中にも位置付けられる

そうした学級集団の関係づくりは、学級活動の時間などだけでなく、各教科等の中にも位置付けることができます。国語の時間ならば話し合う場面でやりやすいと思いますが、社会科でも音楽でも体育でも、もちろん他の教科等でもグループワークや小集団での学習活動を取り入れることができるはずです。そのような場面で、多様な子供たち同士の組み合わせで活動を用意すれば、学級活動での集団づくりゲームなどだけでなく、授業の中でもいろんな子供たちと会話をし、活動することができるでしょう。いつも同じ友達とばかり話をするのではなく、多くの子供たちと出会って話すことは、どういうペアをつくるか、どういう集団をつくるか、事前に少し考えておいてあげるだけで、各教科等の中でも子供たちの関係づくりを進めることができるだろうと思います。

そうした経験を通して、クラスの中にも「これまで思っていた以上に友達がいるんだ」と子供たちは実感するはずです。そのときに先生は、子供たちの多様性や違いの良さを際立てて紹介したり、ほめたりしてあげることを通して、少しずつ互いの違いや考え方の多様さを互いに受け入れられたり、認め合えたりするようになっていけばよいと思います。

どんな学年、どんな教科でも、小集団で話し合い、学び合って互いの良さを実感し合える場面をつくることは必ずできるはず。

やはり居心地が悪かったり、居場所がなかったりすると、阻害が生まれたり、仲間はずれが生まれたりしますし、それを心配して不安になる子供たちもいます。しかし、互いの違いを認め合えて、「自分の言いたいことが自由に言える」「何を言っても受け入れてもらえる」と思える関係性をつくりながら、そこに常に先生が関わり、クラスの良さを表現し、認めてあげられれば、居心地が良くなりますし、「ああ、このクラスで良かったな」と安心できるはずです。

ですから、最初の1週間に「どんな計画でいこうかな」と考えるときに、授業でも子供同士の関係づくりのボリュームを入れてあげるとよいと思います。もちろん、教科の内容で早く進めたいこともあるとは思います。しかし、最初の1週間はそこに目をつぶって、関係づくりにウェイトをかけることに特化してみてもよいでしょう。もし、そこに時間を割かずに慌てて進め、集団づくりがうまくいかずに学級が落ち着かなくなれば、子供たちの学習進度も遅れてきます。逆に、そこに多少の時間をかけても、スタートがうまくいって学級集団として良いほうに進み始めれば、前向きな好循環が生まれますから、次第にみんなが集中して学べるようになりますし、後から取り戻すことも可能です。ですから、最初はそうした集団づくりの優先順位を少し上げるのがよいだろうと思います。

今回は、最初の1週間に何を行えばよいかを紹介していきました。次回は、学習集団づくりと主体性の関係や質問にもあった「黄金の3日間」の解釈などについても「快答」していただきます。

田村学教授の「快答乱麻!」】次回は、9月7日公開予定です。

執筆/教育ジャーナリスト・矢ノ浦勝之


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