担任が視点を変えると学級が落ち着く〈前編〉【伸びる教師 伸びない教師 第20回】
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今回は、「担任が視点を変えると学級が落ち着く」の前編です。視野が狭いと学級崩壊につながり、視野を広くもつことで、子供たちが授業に集中できるという話です。豊富な経験で培った視点で捉えた、伸びる教師と伸びない教師の違いを具体的な場面を通してお届けする人気連載です。
※本記事は、第20回の前編です。
執筆
平塚昭仁(ひらつか・あきひと)
栃木県上三川町立明治小学校校長。
2008年に体育科教科担任として宇都宮大学教育学部附属小学校に赴任。体育方法研究会会長。運動が苦手な子も体育が好きになる授業づくりに取り組む。2018年度から2年間、同校副校長を歴任。2020年度から現職。主著『新任教師のしごと 体育科授業の基礎基本』(小学館)。
伸びる教師は、全体を見ながら子供たちのよい点に目を向け、伸びない教師は狭い視野でできない点に目がいく。
目次
学級崩壊の要因のひとつは教師の視野が狭いこと
学級崩壊は、隣の人とのおしゃべり、ちょっとした出歩きなど、とても小さなことから始まり、それらが咎められないため「あと少し大丈夫」と少しずつエスカレートしていきます。そして、最後には机の上を歩き回るような崩壊状況になってしまいます。
こうした状況になるまでにはいろいろな要因が考えられますが、その中のひとつに教師の「子供を見る視野が狭い」ことが挙げられます。
例えば、授業中、子供が手を挙げていることに気付かず、「他に意見のある人はいませんか」と教師が問いかけている場面を見かけることがあります。また、おしゃべりしている子供がいるにもかかわらず、教師が話しはじめる場面もよく見かけます。
ある学級を参観したときのことでした。
子供が出歩いているのに教師が黒板の前で算数の答え合わせを始めました。出歩いている子供に気付いていないようでした。出歩いている子供も、いつものことのような感じで友達の机でおしゃべりを続けていました。
また違う学級を参観したときには、前から3~4列目の子供たちが隣や後ろの席の友達に1台の鉛筆削りを回している姿が目に入りました。鉛筆削りを受け取った子供の中には、音をたてないようにそっと鉛筆を削ってから隣へ回す子供もいました。回すタイミングは、友達が発言しているときです。
子供が発言しているとき、担任の先生は「うんうん」とうなずきながら、その子をじっと見つめていました。
他の子供たちは、「担任が見ていない」ことを知っていました。そのため、これらの行動が日常的になったものだと考えられます。
常に全体を見るように視野を広くする
体育の授業では危険が伴いますので、視野を広くし、子供たちの動きを見なければなりません。
私は、体育館で鬼ごっこなど走り回る活動をさせるときは、ぶつかったり転んだりしてけがをする子がいないかできるだけ全体を見るようにしていました。見つけたときはすぐに鬼ごっこをやめ、その子に駆け付けました。
跳び箱やマット運動も同じです。
できない子供の補助をしながら常に全体を見て「さっきより踏切がいいよ」「助走のスピードが速くなったね」と遠くから他の子供たちに声をかけていました。
そのせいか、私は学級で話をするときも全体の子供が視界に入るようにしてきました。あるいは視線を真ん中、左、右と順に動かしながら常に全体が見えるよう気を付けてきました。
また、子供が発言しているときは、立つ位置を変えたり視線を動かしたりし、その子に顔を向けながら全体が見えるようにしました。ただこれは、話を聞いていない子供やおしゃべりをしている子供を見つけるためではなく、発言している子供の意見を聞いて、うなずいたり首を傾げたりするなど、リアクションをしている子供を見つけるためです。
そうしたリアクションをした子供はたいてい意見をもっているので、「○○さん、うなずいていたけれどどう思う?」と声をかけると話し合いが自然につながります。
こうしたことを続けていくと、先生が注意をしなくても先生や友達の話を自然と聞くようになりました。「担任は見ている」という気持ちになったのだと思います。
構成/浅原孝子 イラスト/いさやまようこ
「担任が視点を変えると学級が落ち着く」〈後編〉へ続く
※第16回以前は、『教育技術小五小六』に掲載されていました。