SNSトラブル発生! どう指導・解決する?【6年3組学級経営物語19】

連載
学級経営のポイント満載の学級小説「4年3組~6年3組 学級経営物語」

通称「トライだ先生」こと、3年目教師・渡来勉先生の学級経営ストーリー。今回は、「心を繋ぐコミュニケーション」にトライします。

小学生も、スマホやパソコンは普段使いする時代。けれど、便利さの反面、様々な課題が山積しています。また、技術がどんなに発達しても、コミュニケーションの基盤は人と人との繋がりです。それは、これからも変わるものではありません。時代の移り変わりに惑わされず、心を繋ぐ力を身に付けさせたいものです。さあ、「心を繋ぐコミュニケーション」にレッツ トライだ!

文/大和大学教育学部准教授・濱川昌人
絵/伊原シゲカツ

学級経営物語タイトル

1月① 「心を繋ぐコミュニケーション」にレッツトライだ!

<登場人物>

渡来先生

トライだ先生(渡来勉/わたらいつとむ)
教職3年目の6年3組担任。 真面目で子ども好きの一直線なタイプ。どんなことでも「トライだ!」のかけ声で乗り越えようとするところから、「トライだ先生」とあだ名が付く。今年度は、新採のメンターも務める。特技は「トライだ弁当」づくり。


高杉先生

しずか先生(高杉静/たかすぎしずか)
6年1組担任で、学年主任2年目、教職11年目の中堅女性教諭。ベテラン教諭に引けを取らないリーダーシップぶりは、剣道五段の腕前に依るところも。一児の母、子育てと仕事の両立に日々奮戦中。


鬼塚先生

オニセン(鬼塚学/おにづかまなぶ)
教職生活5年目の6年2組担任。祖父と父が有名校長で母も教師という教育一家出身。イケメンでなおかつ優秀な成績で教育大学を卒業したという、典型的な〝オレ様〞タイプの教師。学級内のトラブルに十分対応できず、再び5年担任を任じられた昨年度、しずか先生率いるチームに育てられ、渡来先生とぶつかりながらも今や切磋琢磨しあう良き仲間に。


神崎先生

神崎先生(神崎のぞみ/かんざきのぞみ)
高学年の音楽・家庭科の専科講師。インクルーシブ教育にも携わる。大学4年生のときに交通事故で片足をなくし、入退院で休学、留年(渡来先生と同じ年齢)。一度諦めかけた教師の夢へと一歩を踏み出し、西華小の常勤講師に就く。大学時代は陸上選手として活躍し、体力には自信あり。


心が繋がる話合い

「聞いていただいて、スッキリしました。独りで採用試験の勉強をしていると、煮詰まってきて…」

正月休み明けの職員室。心に溜まった鬱憤うっぷんを吐き出して、笑顔を取り戻した神崎のぞみ先生。

その努力を労い、優しく対応する高杉静先生。

「心が繋がれば人は元気になれる。不安や悩みの解消には、やはり対面のコミュニケーションが一番だ」

傍らの鬼塚学先生が、豆知識を披露します。

「対面の場合には、SNSでは得難い『非言語コミュニケーション』という強みがあるからな」

「非言語コミュニケーションって……何ですか?」・・・ポイント1

首を傾げる渡来勉先生に、得意顔で語る鬼塚先生。

「顔の表情や身振り手振り、視線等の非言語の情報だ。人が他者から得る情報は、視覚からは55%、聴覚から38%、そして言語は7%と言われている。・・・ポイント2

非言語コミュニケーションの要素が乏しいSNSでは、心を繋ぐことが難しいんだ」

「私もSNSじゃなく、…対面がいいです」

遠慮がちに言う神崎先生。ニッコリ微笑んだ高杉先生は、今年初のげきをみんなに飛ばします。

「さあ6年もあと3か月。正月早々ご苦労だが、しっかり心を繋げて最高の卒業を目指すぞ!」

全員で誓いあった時、冬季休業中の閑散とした職員室に電話の呼び出し音が響きました。それは西華中学校の生徒指導主事、大隅達也先生からでした。

ポイント1 【非言語コミュニケーション】
顔の表情、顔色、視線、身振り、手振り、体の姿勢、相手との物理的距離の置き方等の言葉以外の手段によるコミュニケーション。言葉より顔の表情・視線・身振り等が、より重要な役割を担っていることがあります。言葉を介したメッセージは全体の25パーセント、残りの65パーセントは言葉以外の手段で伝えられている、との分析結果があります。

ポイント2【メラビアンの法則】
好意・反感等の態度や感情のコミュニケーションを扱う実験。感情や態度について矛盾したメッセージが発せられた場合の受けとめ方やその人の行動が他者にどんな影響を及ぼすかを調べると、言語情報(話の内容等)が7%、聴覚情報(口調や話の早さ等)が38%、視覚情報(見た目等)が55%の割合だと判明しています。

勃発、SNS紛争!

「この休み中、SNSを介した中学生同士の喧嘩があった。指導の過程で、本校の6年が関わっている疑いが出てきた。速やかに対処するぞ」

受話器を置き、内容を伝える高杉先生。眉間に皺を寄せ、鬼塚先生が矢継ぎ早に質問します。

「一体誰だ…。それにSNSのトラブルって…」

「落ち着け…。体調不良で女子テニス部の練習を休んだ筈の生徒が、夕方街をウロウロしていた。目撃した部員が、SNSを使い情報を拡散。…そこから、SNSでの諍いいさかが始まったそうだ」

「ズル休みが許せなかったのか。気持ちは分かるけど、SNSに書き込むなんて間違っていますよね」

大きな溜息をつき、渡来先生が吐き捨てます。

「短絡的な行動だな。それにズル休みではなく、目撃した部員の誤解、濡れ衣と判明したそうだ」

高杉先生の次の発言に、関心が集まります。

「体調不良は、生徒ではなく母親。ズル休みと誤解された行動は、夕食の買い出しだったんだ」

「可哀そうに…。でも誤解は解けたんですよね」

神崎先生の問いに、首を横に振る高杉先生。

「解けた…、新たな書き込みで誤解はな。だがそこには勘違いした部員を非難するコメントが付いており、それが大炎上。書き込んだ6年の名前は…」

渡来先生をじっと見て、指示を出す高杉先生。

「3組のマリだ。渡来先生、直ちに事実確認を頼む!」

問題の背景とは…

独りで過ごす自宅から渡来先生に伴われ、学校に向かうマリ。正月飾りが残る街を、寂しそうに眺めます。気遣いながら質問する渡来先生。

「その中学生とマリは、どんな関係があるんだ」

「私の従姉、…マキ姉ちゃんよ。私のママより何十倍も優しく、面倒見がいいの。最近、体調の良くない叔母さんを看病しながら、家事も頑張っていたわ。そんなマキちゃんが、あの時泣いていたのよ。その理由を聞いて、思わずカッとなった。それでマキちゃんのSNSに、私が書き込みを…」

冬枯れの街路樹に視線を逸らし、応えるマリ。

「な、成りすまし!? 気持ちは分かるが流石に…」

ギョッとする渡来先生に、顔をしかめるマリ。

「違うよ。従妹のマリと堂々と名乗ったわ。マキちゃんの代わりに誤解を解くと宣言して、SNSで説明した。でも猛烈に腹が立って、勘違いした子を責めるコメントも書いちゃった。…今考えると、大失敗だったわ」

手渡されたスマホを確かめ、応える渡来先生。

「本当だ、マリらしいな。でも早く解決しないと…。6年の先生が、学校で待ってくれているぞ」

「怒られるけど、無関心なママより注意してくれる先生たちが好き。…今も覚えているよ。遠足の弁当が無かった私を、本気で心配してくれたこと」

スマホをマリに返し、優しく応える渡来先生。

「懐かしいなぁ……。先生の大切な思い出の1ページだ」

マリが遠足に弁当を持ってこられずにトラブルに発展したお話はこちら⇒
規律を乱す子にどう対応する?【4年3組学級経営物語4】

個別対応と全体指導

「…状況は把握した。まず、さらなる炎上を止める。SNSの問題箇所の削除、よろしく頼む」・・・ポイント3

鬼塚先生に指示すると、優しくマリを諭す高杉先生。

「書き込み内容は、誹謗中傷や人権侵害には該当しないだろう。だが、怒りに任せての行動はダメだ。それに短い文章で思いを正確に伝えるのは、大人でも難しいことだ」

「マキちゃんに迷惑かけちゃったし…。あんなトゲトゲ言葉、読み返すとホントに恥ずかしいです」

俯いて反省するマリに、声をかける渡来先生。

「話を直接聞いて、マリの思いは先生にも伝わった。だけどな…」

ニコリと笑い、マリを見て語り出す高杉先生。

「腹が立てば少し待つ…。SNSの活用では、一度立ち止まって考えること。使い方を誤ったり、暴走したりすると、SNSは本当に恐ろしい。炎上やデジタルタトゥ等に陥ることもある。それはマリだけでなく、6年全体に指導すべき内容だな」

神崎先生が、自分の思いを語り始めました。

「入院中、コミュニケーションの方法はSNSしかなかった。だからいろいろ考えました。思いや願いは、文字では伝え難いこと。匿名や非対面が、相手への配慮や自制の気持ちを低下させること。そんな理由で、私は直接の話合いの方がよいと考えるようになったんです。この指導、私も是非参加したいです」

みんなを見回し、高杉先生が指示を出します。

「明日話し合おう。各自で案を考えてきてくれ」

ポイント3【SNSの削除】
誹謗中傷の投稿の削除には、多くの場合「削除依頼」を提出する必要があります。 基本的には、 利用規約に反している投稿ならば削除してくれる可能性が高いと言えます。教育委員会や関係機関等に連絡する必要があります。またSNSを停止する場合は、アカウント削除方法を参照して実行することができます。

(次回へ続く)

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